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  • 透明ランナーのアート&シネマレビュー

  • 稲田俊輔「食いしん坊のルーペ」(*食エッセイ)

    南インド料理店「エリックサウス」総料理長にして、ジャンルを問わず何にでも喰いつく変態料理人。あふれ出る食いしん坊パワーで、世界を味わい尽くすエッセイをお届けします。月イチ連載

  • 今村翔吾「海を破る者」

    日本を揺るがした文明の衝突がかつてあった――その時人々は何を目撃したのか? 人間に絶望した二人の男たちの魂の彷徨を、新直木賞作家が壮大なスケールで描く歴史巨篇

  • 令和元年の人生ゲーム

    第一志望だった慶應に合格し、晴れて上京。 新生活への希望に胸を膨らませる僕を迎えたのは、 「元」高校生社長と、暗い目をした不気味な男だった――

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記事一覧

渡辺優さん、最新ミステリーが登場! 「死に至らぬ病」〈前編〉

死に至らぬ病 〈前編〉  星野さんのめまいがすべての始まりだった。  もちろん、そのときは誰もそんなことに気づいてはいなかった。ただ、そこに集まった全員の頭に一瞬…

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『アレックス・ダ・コルテ 新鮮な地獄』展――映像の“厚さ”とポップな地獄|透明ランナー

 来たぞ金沢!  今回のお目当ては金沢21世紀美術館で開催されている『アレックス・ダ・コルテ 新鮮な地獄』展(2023年9月18日(月・祝)まで)。ダ・コルテは1980年生ま…

今井真実|願掛けは、辛くて痺れる明太子スパゲッティ

第3回 願掛けは、辛くて痺れる明太子スパゲッティ  窓から陽が差し込んでいる。強い光のせいで、ほこりが薄く舞っているのが見えてしまった。  ソファに寝そべり、部…

【最終回】大前粟生「チワワ・シンドローム」#006

笑うキズさんの正体を知った琴美の心に、 ある疑念が兆していく。 そしてついに新太との再会の時が……! 〈チワワテロ〉からはじまった事件と 新太失踪の真相がついに明…

大前粟生「チワワ・シンドローム」#005

MAIZUと笑うキズさんの突然の和解から数日後、 リリ部屋へ向かった琴美はリリと観月さんの口論を耳にする。 そしてその日MAIZUが公開した動画に映っていたのは—— 29 琴…

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イナダシュンスケ|牧歌的うどん店

第16回 牧歌的うどん店「牧歌的」という言葉があります。自然の中で牧人が歌う歌のような、飾り気がなくのんびりした様子を言います。  飲食店というのはおおむね、この「…

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登録者数72万人のYouTuber・コウイチの〈ショートノベル〉。第1回「マサルの冷たい部屋」をお届けします!

今月の収入はここ数ヶ月で一番低い数字だった―― かつて人気YouTuberだったマサルは、その座から転落しようとしていた。 追い詰められたマサルが縋ったものとは? 初小説…

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『オッペンハイマー』最速レビュー|クリストファー・ノーランは何に挑み、何を達成したのか【ネタバレなし】|透明ランナー

 観ました、観ましたよ、『オッペンハイマー』を!!  この興奮と衝撃を一刻も早くお伝えしたいのですが、しかし日本公開日も決まっていない段階では何を書いてもネタバ…

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鬼才・小田雅久仁が産み落とした7つの悪夢|『禍』インタビュー

 2009年に『増大派に告ぐ』で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、作家デビューを果たした小田雅久仁さんは、21年、実に9年ぶりとなる新刊『残月記』を刊行。…

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今村翔吾「海を破る者」#023

「我が軍が抜かれれば、日ノ本は終わりだ」 夥しい数の江南軍の来襲に、六郎は最前線で戦うと意を決した。  江南軍が来た。繁と令那が旅立ってから四日後のことである。…

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ブックガイドーー宇宙を知る~ビッグバンから太陽系まで|白石直人

 子供の頃、宇宙にロマンを感じ心躍らせた人は少なくないだろう。宇宙の実像は科学によって明らかにされてきている一方、謎もまだまだ残されている。この記事では、宇宙の…

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ピアニスト・藤田真央エッセイ #32〈帰国コンサート――先生の形見の燕尾服〉

 次の公演は東京芸術劇場だ。初めてこのホールで演奏したのは高校生のときのことだ。私が在籍していた東京音楽大学附属高等学校は年に一度、チャリティーコンサートをこの…

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朝倉かすみ「よむよむかたる」#007

 安田は、今、市立小樽文学館に向かって歩いている。ちょうど図書館の前を通り過ぎたところだった。図書館でもどこかの部屋を借りられるかもしれないな、と思いつつスマホ…

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ピアニスト・藤田真央エッセイ #31〈久しぶりの帰国――ラハフとの連弾〉

 コンツェルトハウス管との共演後、久方ぶりに(といっても3ヶ月しか経っていないのだが)日本へ帰った。今はまだ“日本へ帰る”という感覚だが、いつか“ドイツへ帰る”…

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頭の中に響く声——『ゴリラ裁判の日』に続いて『無限の月』が生まれた理由:須藤古都離

デビュー作が大きな話題を呼んだ頃、須藤さんの心を占めていたのは美しき「西湖」のことだった。そして、聴こえてきたのは――。 まだ存在しない人たちの声   小説を書…

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火災現場に残された"三人家族"の遺体。しかし三人は赤の他人だった――伊岡瞬、衝撃の新連載「追跡」に寄せる〈はじまりのことば…

《目の前を、親子三人が仲良く手を繫ぎ、楽しそうに歩いてゆく》  こんな表現に、わたしは以前から疑問を抱いていた。  もう少しきつい言葉で言えば、それは小説として「…

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渡辺優さん、最新ミステリーが登場! 「死に至らぬ病」〈前編〉

渡辺優さん、最新ミステリーが登場! 「死に至らぬ病」〈前編〉

死に至らぬ病
〈前編〉

 星野さんのめまいがすべての始まりだった。
 もちろん、そのときは誰もそんなことに気づいてはいなかった。ただ、そこに集まった全員の頭に一瞬は過ったのではないかと思う。あの噂について。
「なんでもないよ」
 星野さんは言った。
「ちょっとくらっと来ただけ。なんだろ、疲れたのかな。ほら……うん、もう平気。そんな心配しないで」
 たっぷり五分は床にしゃがみこんでいた星野さんがよ

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『アレックス・ダ・コルテ 新鮮な地獄』展――映像の“厚さ”とポップな地獄|透明ランナー

『アレックス・ダ・コルテ 新鮮な地獄』展――映像の“厚さ”とポップな地獄|透明ランナー

 来たぞ金沢!

 今回のお目当ては金沢21世紀美術館で開催されている『アレックス・ダ・コルテ 新鮮な地獄』展(2023年9月18日(月・祝)まで)。ダ・コルテは1980年生まれ、フィラデルフィアを拠点とするアーティストです。2019年のヴェネツィア・ビエンナーレで脚光を浴び[1]、2021年にはコロナ禍のメトロポリタン美術館の屋上に巨大な作品を出現させて話題になりました。本展がアジアで初めての個

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今井真実|願掛けは、辛くて痺れる明太子スパゲッティ

今井真実|願掛けは、辛くて痺れる明太子スパゲッティ

第3回 願掛けは、辛くて痺れる明太子スパゲッティ

 窓から陽が差し込んでいる。強い光のせいで、ほこりが薄く舞っているのが見えてしまった。
 ソファに寝そべり、部屋をぼんやり眺める。いいかげん掃除機をかけて、洗い終わっている洗濯ものを干さなくては。でも、もう少しだけ。あと10分、このままぼんやりと静けさを味わいたい。
 ああ、やっと家にひとりきり。この日が来るまで本当に長かった。
 今朝、久しぶり

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【最終回】大前粟生「チワワ・シンドローム」#006

【最終回】大前粟生「チワワ・シンドローム」#006

笑うキズさんの正体を知った琴美の心に、
ある疑念が兆していく。
そしてついに新太との再会の時が……!

〈チワワテロ〉からはじまった事件と
新太失踪の真相がついに明かされる。
そのとき、琴美とリリは——

32 次の一斗くんの月命日である十一月七日は、金曜日だった。
 琴美は陽が出る前に起床し、始発で横須賀線のとある駅へと向かった。
 事件現場は、駅から歩いて数分の十字路だった。まだ花は供えられて

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大前粟生「チワワ・シンドローム」#005

大前粟生「チワワ・シンドローム」#005

MAIZUと笑うキズさんの突然の和解から数日後、
リリ部屋へ向かった琴美はリリと観月さんの口論を耳にする。
そしてその日MAIZUが公開した動画に映っていたのは——

29 琴美は急いでYouTubeアプリを開き、MAIZUのチャンネルを表示した。数分前にアップロードされた最新の動画のサムネイルには、MAIZUとリリと、琴美が映っていた。「MAIZU新章第一弾!」というタイトルが付けられ、概要欄に

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イナダシュンスケ|牧歌的うどん店

イナダシュンスケ|牧歌的うどん店

第16回
牧歌的うどん店「牧歌的」という言葉があります。自然の中で牧人が歌う歌のような、飾り気がなくのんびりした様子を言います。
 飲食店というのはおおむね、この「牧歌的」の対極にあります。常にせわしなく、そして時に世知辛い。一見優雅に見える店もありますが、それは水鳥と同じです。水面下ではいつでも必死に足搔いている。しかし僕は過去に一度だけ、本当に牧歌的な店に出会ったことがあります。学生時代の話で

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登録者数72万人のYouTuber・コウイチの〈ショートノベル〉。第1回「マサルの冷たい部屋」をお届けします!

登録者数72万人のYouTuber・コウイチの〈ショートノベル〉。第1回「マサルの冷たい部屋」をお届けします!

今月の収入はここ数ヶ月で一番低い数字だった――
かつて人気YouTuberだったマサルは、その座から転落しようとしていた。
追い詰められたマサルが縋ったものとは?
初小説『計画書』も話題のコウイチ氏の新作短篇をお届けします!

マサルの冷たい部屋

 冷房が強く効いた部屋で、マサルは空のペットボトルにまみれた机に突っ伏していた。エアコンはオンオフを頻繁にするよりも、点けっぱなしにしていた方が電気代

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『オッペンハイマー』最速レビュー|クリストファー・ノーランは何に挑み、何を達成したのか【ネタバレなし】|透明ランナー

『オッペンハイマー』最速レビュー|クリストファー・ノーランは何に挑み、何を達成したのか【ネタバレなし】|透明ランナー

 観ました、観ましたよ、『オッペンハイマー』を!!

 この興奮と衝撃を一刻も早くお伝えしたいのですが、しかし日本公開日も決まっていない段階では何を書いてもネタバレになってしまいそうです。うーん難しい。でもネタバレなしでも書けることはあるはず!

 『オッペンハイマー』は初見ではすべてを理解することが難しい複雑な映画なので(まあノーランですし)、前提としていくつかのことを知っておくとより深く映画を

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鬼才・小田雅久仁が産み落とした7つの悪夢|『禍』インタビュー

鬼才・小田雅久仁が産み落とした7つの悪夢|『禍』インタビュー

 2009年に『増大派に告ぐ』で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、作家デビューを果たした小田雅久仁さんは、21年、実に9年ぶりとなる新刊『残月記』を刊行。同作は、第43回吉川英治文学新人賞と第43回日本SF大賞を射止めたのみならず、2022年本屋大賞で第7位となり、大きな話題を呼んだ。
 それから二年弱。最新作『禍』は、緊張感のある文体で読者を〝心地よい不快感〟に誘い込む怪奇小説だ。11

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今村翔吾「海を破る者」#023

今村翔吾「海を破る者」#023

「我が軍が抜かれれば、日ノ本は終わりだ」
夥しい数の江南軍の来襲に、六郎は最前線で戦うと意を決した。

 江南軍が来た。繁と令那が旅立ってから四日後のことである。じわり、じわりと海を黒く染め上げつつ近付いて来る。島と海の見分けが付かぬほど、夥しい軍船の数であった。一艘、一艘が発する音はさほど大きくないだろうに、これほどの数となればやはり違う。海鳴りを彷彿とさせる不気味な音が陸にまで届いていた。その

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ブックガイドーー宇宙を知る~ビッグバンから太陽系まで|白石直人

ブックガイドーー宇宙を知る~ビッグバンから太陽系まで|白石直人

 子供の頃、宇宙にロマンを感じ心躍らせた人は少なくないだろう。宇宙の実像は科学によって明らかにされてきている一方、謎もまだまだ残されている。この記事では、宇宙の始まりであるビッグバンから、我々の住む太陽系まで、宇宙について人類が明らかにしてきたことと残された謎を解説した本を見ていきたい。

◆ビッグバン~宇宙の誕生 我々の住むこの宇宙は、138億年前のビッグバンによって誕生した。サイモン・シン・著

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ピアニスト・藤田真央エッセイ #32〈帰国コンサート――先生の形見の燕尾服〉

ピアニスト・藤田真央エッセイ #32〈帰国コンサート――先生の形見の燕尾服〉

 次の公演は東京芸術劇場だ。初めてこのホールで演奏したのは高校生のときのことだ。私が在籍していた東京音楽大学附属高等学校は年に一度、チャリティーコンサートをこの東京芸術劇場で行っている。オーケストラはもちろん、吹奏楽や室内楽、そして合唱などの演目があった。私はソロで《リスト:ハンガリー狂詩曲第2番》を弾いたり、《ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲》をオーケストラと一緒に演奏したりした。合唱

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朝倉かすみ「よむよむかたる」#007

朝倉かすみ「よむよむかたる」#007

 安田は、今、市立小樽文学館に向かって歩いている。ちょうど図書館の前を通り過ぎたところだった。図書館でもどこかの部屋を借りられるかもしれないな、と思いつつスマホの地図アプリを見て、富岡一丁目の交差点を右折、と確認する。あとは真っ直ぐ行けばいいはずだ。
 午後三時を過ぎていたので、隣家のサッちゃんにLINEした。店番をお願いしていたのだ。
 隣家のサッちゃんは喫茶シトロンのスーパーサブだ。こうして安

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ピアニスト・藤田真央エッセイ #31〈久しぶりの帰国――ラハフとの連弾〉

ピアニスト・藤田真央エッセイ #31〈久しぶりの帰国――ラハフとの連弾〉

 コンツェルトハウス管との共演後、久方ぶりに(といっても3ヶ月しか経っていないのだが)日本へ帰った。今はまだ“日本へ帰る”という感覚だが、いつか“ドイツへ帰る”と表現するようになるのだろうか。今回は若き天才指揮者、ラハフ・シャニがタクトを振るう舞台で《ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番》を弾く。オーケストラはロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団だ。ラハフと共演するのは今回が初めてだ。初めて彼と話し

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頭の中に響く声——『ゴリラ裁判の日』に続いて『無限の月』が生まれた理由:須藤古都離

頭の中に響く声——『ゴリラ裁判の日』に続いて『無限の月』が生まれた理由:須藤古都離

デビュー作が大きな話題を呼んだ頃、須藤さんの心を占めていたのは美しき「西湖」のことだった。そして、聴こえてきたのは――。

まだ存在しない人たちの声 

 小説を書くにあたって、有名な小説家の創作論を参考にしようと思ったことがある。そうして出会った英語圏の小説家たちの言葉の中に多く出て来る単語がvoiceだった。小説を書く上でvoiceが非常に重要だという。しかしそれを登場人物の声だと言う作家もい

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火災現場に残された"三人家族"の遺体。しかし三人は赤の他人だった――伊岡瞬、衝撃の新連載「追跡」に寄せる〈はじまりのことば〉

火災現場に残された"三人家族"の遺体。しかし三人は赤の他人だった――伊岡瞬、衝撃の新連載「追跡」に寄せる〈はじまりのことば〉

《目の前を、親子三人が仲良く手を繫ぎ、楽しそうに歩いてゆく》
 こんな表現に、わたしは以前から疑問を抱いていた。
 もう少しきつい言葉で言えば、それは小説として「手抜き」ではないかとすら思っていた(もちろん、自分自身が書いたものも含めて)。
 たとえば、どうして「親子」だとわかるのか。手を繫いで歩いていれば親子なのか。血の繫がらない赤の他人かもしれないではないか。
 たとえば、一見「楽しそう」かも

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