マガジンのカバー画像

伊岡瞬「追跡」(*小説)

8
火災現場で発見された“父親とその息子夫婦”の遺体。しかしその後、この三人は赤の他人であることが判明する――。彼らが家族を装った目的とは? 世界の不穏な真実を暴くノンストップサスペ…
運営しているクリエイター

記事一覧

固定された記事

火災現場に残された"三人家族"の遺体。しかし三人は赤の他人だった――伊岡瞬、衝撃の…

《目の前を、親子三人が仲良く手を繫ぎ、楽しそうに歩いてゆく》  こんな表現に、わたしは以…

伊岡瞬「追跡」#007(最終回)

24 火災二日目 アオイ(承前)『中央自動車道』小淵沢IC出口まで五百メートルの標識を過ぎ…

5

伊岡瞬「追跡」#006

15 火災二日目 アオイ 油断がなかったといえば噓になる。  あの『B倉庫』で初めて樋口と…

6

伊岡瞬「追跡」#005

13 火災二日目 樋口(承前)「その話は長くなるからやめましょう。知り合い、とだけ答えてお…

8

伊岡瞬「追跡」#004

10 火災二日目 樋口(承前) アオイに指示されるがまま、樋口透吾の運転するレクサスは、中…

3

伊岡瞬「追跡」#003

6 火災二日目 葵(承前)〈先生、何をなさってるんです——〉  電話の向こうで、新発田信…

5

伊岡瞬「追跡」#002

3 火災一年前 因幡将明が書斎で朝食前の読書をしていると、スマートフォンに着信があった。  午前六時五分前だ。将明は読みかけの本を机に伏せ、スピーカーモードで繫いだ。 「何か」  昨夜から宿直当番だった、筆頭秘書の井出が報告する。 〈お忙しいところ申し訳ありません。福村様からお電話が入っております〉  福村といえば、三人いる内閣官房副長官のひとりだ。官房長官の田代でないということは、その程度の案件ということだろう。しかしその一方で、どうでもいい話でかけてくるにはまだ少し時刻が

伊岡瞬「追跡」#001 

1 当日*  うだるような暑さとは、こういう日のことをいうのだろう。  二日前に梅雨明け…