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伊岡瞬「追跡」(*小説)

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火災現場で発見された“父親とその息子夫婦”の遺体。しかしその後、この三人は赤の他人であることが判明する――。彼らが家族を装った目的とは? 世界の不穏な真実を暴くノンストップサスペ…
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火災現場に残された"三人家族"の遺体。しかし三人は赤の他人だった――伊岡瞬、衝撃の…

《目の前を、親子三人が仲良く手を繫ぎ、楽しそうに歩いてゆく》  こんな表現に、わたしは以…

伊岡瞬「追跡」#006

15 火災二日目 アオイ 油断がなかったといえば噓になる。  あの『B倉庫』で初めて樋口と…

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伊岡瞬「追跡」#005

13 火災二日目 樋口(承前)「その話は長くなるからやめましょう。知り合い、とだけ答えてお…

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伊岡瞬「追跡」#004

10 火災二日目 樋口(承前) アオイに指示されるがまま、樋口透吾の運転するレクサスは、中…

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伊岡瞬「追跡」#003

6 火災二日目 葵(承前)〈先生、何をなさってるんです——〉  電話の向こうで、新発田信…

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伊岡瞬「追跡」#002

3 火災一年前 因幡将明が書斎で朝食前の読書をしていると、スマートフォンに着信があった。…

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伊岡瞬「追跡」#001 

1 当日*  うだるような暑さとは、こういう日のことをいうのだろう。  二日前に梅雨明け宣言が発表された。  死んだ父親が口癖のように言っていたのを思い出す。  ——梅雨明け十日といって、この時期はきれいに晴れて容赦ない猛暑になる。  外を回ることが多いので、毎年この時期になると身をもって痛感する。  築島紀明巡査部長が、タオルハンカチで汗を拭いながら現場についたとき、すでに現場検証の山場は過ぎていた。  近所の住人から一一九番通報があったのは午前三時過ぎ、鎮火が約三時間後