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《読んで楽しむ、つながる》小説好きのためのコミュニティ! 月額800円で、人気作家の作品&インタビューや対談、エッセイが読み放題。作家の素顔や創作秘話に触れられるオンラインイベントのほか、お題企画や投稿イベントなど参加型企画も盛りだくさんでお届けしていきます。

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  • 寺地はるな「リボンちゃん」(*小説)

    女性の下着はキュートでセクシー? そんな固定観念を解きほぐす寺地はるなの連載小説

  • ピアニスト・藤田真央「指先から旅をする」

    24歳の若き天才ピアニスト・藤田真央氏によるエッセイ

  • #ミステリー小説が好き

    #ミステリー小説が好き

  • 稲田俊輔「食いしん坊のルーペ」(*食エッセイ)

    南インド料理店「エリックサウス」総料理長にして、ジャンルを問わず何にでも喰いつく変態料理人。あふれ出る食いしん坊パワーで、世界を味わい尽くすエッセイをお届けします。月イチ連載

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背筋|オシャレ大好き【ホラー短篇】

オシャレ大好き  コンクリートのふちに足をかける。下から吹き上げる風が心地好い。この気持ちはアドレナリンのせいなのか。怖いと感じない私はおかしいのだろうか。下を見つめる。サラリーマン風の男が足早に歩いている。私はやっと解放される。こんな世界から。 「さようなら」  そう話したあと、宙に身を躍らせた。風の音が耳に響く。歩道の地面が猛スピードで迫る。身体の奥から木の枝をまとめて折ったようなバキッという音が響いた気がした。 ※※※※※ 「これ、素材はなにを使ってるの?」  磨

¥300

寺地はるな「リボンちゃん」#004

第四話 「乾杯!」の掛け声とともに、隣に立っていた知らない男性のコップがありえない角度に傾き、あ、と思うまもなくわたしのシャツの肩は濡れていた。こぼれたビールはじわじわと染みて胸元まで到達しようとしている。 「わ、こりゃ大変だ。ごめんね、だいじょうぶ?」 「気にしないでください、洗えば落ちますから」  わたしはハンカチでシャツを押さえながら立ち上がった。数メートル先のバーベキューコンロで焼いている肉の匂いが鼻孔をくすぐり、お腹がぐうと鳴る。  よかった。バーベキューをやる、と

鈴木忠平『ビハインド・ゲーム』 はじまりのことば

 なぜ、この人物を書こうと思ったのですか?  新刊を書くと、インタビュアーの人からこう質問していただく。その度、的確な表現の見つからない私は「翳があるから」だとか、「逆風を浴びているから」だとか口にしながら、なにか言い足りてないな……と感じてきた。先だってはついに、「言葉で表現できない人だからです」などと答えてしまった。書き手としてアリなのか? 帰り道に落ち込んだが、本当にそうとしか言えなかったのだから仕方がない。  言葉ではうまく説明できないが、感覚としては分かっている。例

鈴木忠平・新連載スタート!「ビハインド・ゲーム」#001

プロローグ 開場の日は朝から雲ひとつなかった。生えそろったばかりの天然芝と真っさらなアンツーカーが北の大地の柔らかな陽の光を浴びている。球場のコンコースでひとり、その静謐な光景を飽くことなく眺め続けている男は球団のフロントマンである。濃紺のスーツにチームのシンボルカラーであるスカイブルーのネクタイを締めた彼の胸の裡にはひとつの感慨が宿っている。その感慨がいつまでも彼をその場に立たせていたのだった。  やがてそんな想いを知るよしもないファンたちが、フロントマンの脇を抜け、我先に

寺地はるな「リボンちゃん」(*小説)

女性の下着はキュートでセクシー? そんな固定観念を解きほぐす寺地はるなの連載小説

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  • 6本

寺地はるな「リボンちゃん」#004

第四話 「乾杯!」の掛け声とともに、隣に立っていた知らない男性のコップがありえない角度に傾き、あ、と思うまもなくわたしのシャツの肩は濡れていた。こぼれたビールはじわじわと染みて胸元まで到達しようとしている。 「わ、こりゃ大変だ。ごめんね、だいじょうぶ?」 「気にしないでください、洗えば落ちますから」  わたしはハンカチでシャツを押さえながら立ち上がった。数メートル先のバーベキューコンロで焼いている肉の匂いが鼻孔をくすぐり、お腹がぐうと鳴る。  よかった。バーベキューをやる、と

一穂ミチ「アフター・ユー」#006

『もしもし』  多実の声だった。すこし掠れているが、間違いない。青吾は、自分でも意外なほど平静だった。 『あ、スガワラさんですか? 調査報告書ありがとうございます。きょう受け取りました。すみません、無理言って郵送していただきまして……』 「多実」  ざ、さ、と砂を踏みしめるようなノイズが混じる。呼びかけに対する応えはなかった。 『はい、だいぶよくなりました。残りのお金はあした振り込みますので、よろしくお願いいたします』  通話が切られ、テレカが吐き出される。「42」に減った度

寺地はるな「リボンちゃん」#003

第三話 左手の爪すべてを玉虫色に塗り終えた時、スマートフォンが鳴り出した。わたしは一年三百六十五日、爪のケアを欠かしたことがない。爪という身体のパーツが愛しくてたまらない。いろんな色を塗りたくれるし、いざという時には武器にもなる。  小さな刷毛をつかって色を乗せる作業も好きだ。神経が研ぎ澄まされ、刷毛を持つ指は震える。息を殺し、目を凝らす。ムラなく塗り終えた時の、なんとも言えぬ高揚感と解放感。  木曜日の午前十時に電話をかけてきて、「いっしょに昼飯でもどうだ」と誘う父は、いち

寺地はるな「リボンちゃん」#002

第二話 ななめ前を歩いていた社長が「なあ」と言ったので、思わず身構えた。社長の声が甲高くなるのは、なにかめんどうな話題を持ち出す前兆だ。  銀行からの帰り道だった。思えば今朝、「きみも来てよ、経理担当なんだから」と声をかけられた時からなんとなく予感はしていたのだ。借り換えの手続ぐらい、いつもなら社長ひとりで済ませているから。 「はい。なんでしょう」  無意識に、髪に手をやった。今日は幅の細い、葡萄色のリボンを髪に編みこんでいる。社長が甲高い声を出すのと同様、わたしにも癖がある

ピアニスト・藤田真央「指先から旅をする」

24歳の若き天才ピアニスト・藤田真央氏によるエッセイ

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  • 65本

ピアニスト・藤田真央エッセイ #64〈夏の終わり――デュトワとの共演〉

『指先から旅をする』が書籍化しました! 世界中で撮影された公演&オフショット満載でお届けします。 8月3日 「ミルクバー」でブランチ。  今年のスケジュールは自由時間が限りなく少なかったが、それでもお気に入りのこのお店に2回も訪れることができた。ヴェルビエ滞在のラストに好物のオレオミルクシェイクを飲むことができて嬉しい。  17時からはサン=サーンス《ピアノ協奏曲第2番》のリハーサルがあった。あまり弾かれる機会の少ない作品のため、私もオーケストラの団員も感触を掴むのに苦

ピアニスト・藤田真央エッセイ #63〈エベーヌ四重奏団との共演、テントでのリサイタル〉

『指先から旅をする』が書籍化しました! 世界中で撮影された公演&オフショット満載でお届けします。 7月29日  昨日のアドヴェンチャーから一夜明け、朝の10時からエベーヌ四重奏団とのリハーサルが始まった。いつの日か共演してみたいと願っていた、世界屈指の四重奏団と演奏する機会に恵まれたのだ。もっとも我々日本人にとっては、この名門カルテットにチェリストの岡本侑也君が2024年1月に加入したニュースは喜ばしい。彼とは以前から親交があって何度か共演したこともあり、今回エベーヌメン

ピアニスト・藤田真央エッセイ #62〈幻となったカヴァコスとの共演〉

『指先から旅をする』が書籍化しました! 世界中で撮影された公演&オフショット満載でお届けします。 7月28日  今年のヴェルビエは特別、日差しが眩しい。8時過ぎに目を覚ますと、カヴァコスとのリハーサルの録音を再び聴いた。今夜の公演のために、これほど入念に準備を行うのには理由がある。実のところ、カヴァコスとは2023年5月に初共演を果たす予定だったのだが、彼の体調不良により叶わなかった。共演の機会をその後1年以上も待ち遠しく思いながら過ごし、やっと今晩、念願のその時を迎える

ピアニスト・藤田真央エッセイ #61〈我がホーム! ヴェルビエ音楽祭〉

『指先から旅をする』が書籍化しました! 世界中で撮影された公演&オフショット満載でお届けします。  2024年6月の中旬から7月の下旬まで、1ヶ月の休暇を貰った私は、次に待ち構えているレパートリーをじっくり練習したり、新しいレシピを考案したり、はたまた読書に耽ったりしていた。不朽の名作、ダニエル・キイス作『アルジャーノンに花束を』には大いに胸を打たれた。ロングセラー作品のため多くの方がご存じだと思うが、際立って魅力的なのは作品全体を通しての構成や文体の巧妙な変化だろう。主人

#ミステリー小説が好き

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  • 244本

文藝春秋からのお届け物を開いたら、少年ジャンプを思い出した話

下記の記事で書いたとおり、文藝春秋さまから「特別賞」をいただきました。 私の記事を「別冊文藝春秋」に掲載していただけることになったのです。 そして! ついにその「見本誌」が届きました。 突然ですが、『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』ってご存知ですか? 小学校の頃、アニメがやっていたので夢中になっていました。 特に、【剣心】対【四乃森蒼紫】の戦いが好きです。

文藝春秋さんから『特別賞』をイタダキマシタ

note×「WEB別冊文藝春秋」のコラボレーション企画「#ミステリー小説が好き」において『特別賞』をいただきました! 受賞した記事はこちら👇👇 『芥川賞』や『直木賞』で有名な文藝春秋の編集部の方に、このような賞をいただき、マウスを持つ手が震えるほど喜びました。 1.なぜ、『特別賞』なのか? 私はベストレビュアー(今回の企画における受賞のこと)ではなく、特別賞でした。 なぜか? お題が『ミステリー小説が好き』なのに、選んだ本が小説ではないからです。

辮髪のシャーロック・ホームズ-ベトナム語通訳-のアレやこれ

「ギリシャ語通訳」を読んだことがないので あとで読みます

辮髪のシャーロック・ホームズ-新王府の醜聞-のアレやこれ

黄色い顔のねじれた男は ねじれがそっちかよ!ってなりましたね (え、私だけですか!?) 新王府の醜聞は シャーロックのオシャレが気になって それから調べ始めました

稲田俊輔「食いしん坊のルーペ」(*食エッセイ)

南インド料理店「エリックサウス」総料理長にして、ジャンルを問わず何にでも喰いつく変態料理人。あふれ出る食いしん坊パワーで、世界を味わい尽くすエッセイをお届けします。月イチ連載

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  • 32本

イナダシュンスケ|サクラダ君のアメリカンドッグ

第29回 サクラダ君のアメリカンドッグ  今となっては分かります。小学生時代の親友サクラダ君は「早熟」でした。  小学四年生に進級して、毎日一緒に帰る僕たち5人組は、クラスがバラバラになりました。かろうじて僕とサクラダ君は引き続き同じクラスでした。しかし僕たち2人はその頃から微妙に別々の道を歩み始めたのです。  その小学校では、四年になると希望すれば部活動に参加できました。サクラダ君は真っ先にサッカー部に入りました。僕はなんとなくバドミントン部に入るつもりだったのですが

イナダシュンスケ|サクラダ君と道草コロッケ

第28回 サクラダ君と道草コロッケ  小学三年生の時、親友ができました。  サクラダ君というその同級生は、足が速くてスポーツ万能、色白で茶色がかった髪にぱっちりとした大きな目と長い睫毛、明るくて成績もほどほどに良く、つまりは女子にモテまくる少年でした。僕がなぜそんな彼と仲良くなったかと言うと、単に家が近所で帰宅する方向が同じだったからです。学校帰りはだいたい、僕とサクラダ君の他に同じ方向の友人たち総勢5人で、やたらと道草を食いながら帰ったものでした。  ある時そのメンバ

イナダシュンスケ|ファーストコンタクト晩餐会

第27回 ファーストコンタクト晩餐会 「料理は味が全て。うまけりゃいいんだよ」ということが世間ではよく言われますが、僕は主に料理を作る側の立場として、これは一見正論めいてはいるけれど、実際は暴論だと考えています。「うまけりゃいい」はその通りだとしても、じゃあそれはいったい誰にとってうまいのか。どういう時にどういう気分で食べたらうまいのか。  誰にとっても、いついかなる場面でもおいしいものなんて、世の中にそうそうはありません。単純な嗜好の違いもありますが、それ以上に、おいし

イナダシュンスケ|ラーメン不満足化待望論

第26回 ラーメン不満足化待望論 いきなり大きな話から始めますが、人はいったい何を求めて小説やエッセイを読むのでしょう? そんなの十人いたら十通りの答えが返ってきそうですが、そこにおいて「共感」は、誰にとっても大事な要素であるということは言えるはずです。読者は著者や登場人物、なかんずく主人公に共感しつつ、物語を擬似体験する。それが読書の醍醐味であることは間違いありません。  食エッセイという分野においても、この「共感」は、極めて重要なのではないかと思います。大抵の場合、著者