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  • 稲田俊輔「食いしん坊のルーペ」(*食エッセイ)

    南インド料理店「エリックサウス」総料理長にして、ジャンルを問わず何にでも喰いつく変態料理人。あふれ出る食いしん坊パワーで、世界を味わい尽くすエッセイをお届けします。月イチ連載

  • #ミステリー小説が好き

    #ミステリー小説が好き

  • ピアニスト・藤田真央「指先から旅をする」

    24歳の若き天才ピアニスト・藤田真央氏によるエッセイ

  • 寺地はるな「リボンちゃん」(*小説)

    女性の下着はキュートでセクシー? そんな固定観念を解きほぐす寺地はるなの連載小説

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【直木賞ノミネート!】麻布競馬場『令和元年の人生ゲーム』第1話無料公開 ~意識の高い慶應ビジコンサークル篇~

〈タワマン文学〉の旗手・麻布競馬場待望の第2作『令和元年の人生ゲーム』。発売直後から「他人ごととは思えない!」と悲鳴のような反響が続々と…… 4月、やる気に満ちた新入生の皆さまの応援企画として、第1話〈意識の高い慶應ビジコンサークル篇〉を期間限定で全文無料公開いたします! これを読めば5月病も怖くない……はずです。 『令和元年の人生ゲーム』 第1話 平成28年  2016年の春。徳島の公立高校を卒業し、上京して慶応義塾大学商学部に通い始めた僕は、ビジコン運営サークル「イ

    • イナダシュンスケ|サクラダ君のアメリカンドッグ

      第29回 サクラダ君のアメリカンドッグ  今となっては分かります。小学生時代の親友サクラダ君は「早熟」でした。  小学四年生に進級して、毎日一緒に帰る僕たち5人組は、クラスがバラバラになりました。かろうじて僕とサクラダ君は引き続き同じクラスでした。しかし僕たち2人はその頃から微妙に別々の道を歩み始めたのです。  その小学校では、四年になると希望すれば部活動に参加できました。サクラダ君は真っ先にサッカー部に入りました。僕はなんとなくバドミントン部に入るつもりだったのですが

      • イナダシュンスケ|サクラダ君と道草コロッケ

        第28回 サクラダ君と道草コロッケ  小学三年生の時、親友ができました。  サクラダ君というその同級生は、足が速くてスポーツ万能、色白で茶色がかった髪にぱっちりとした大きな目と長い睫毛、明るくて成績もほどほどに良く、つまりは女子にモテまくる少年でした。僕がなぜそんな彼と仲良くなったかと言うと、単に家が近所で帰宅する方向が同じだったからです。学校帰りはだいたい、僕とサクラダ君の他に同じ方向の友人たち総勢5人で、やたらと道草を食いながら帰ったものでした。  ある時そのメンバ

        • 【アーカイブ動画公開】五十嵐律人×浅倉秋成×白井智之ライブトーク!「ダークミステリーが好き」

          ※記事の下部「購読者限定エリア」にて アーカイブ動画がご覧頂けます。  リーガルミステリーで人気の五十嵐律人さんの新作『魔女の原罪』が2023年4月24日に発売になりました! これを記念して、5月1日(月) 20:00から人気作家3人によるライブトークが開催されました。 『魔女の原罪』にまつわるお話はもちろん、過激な設定やビターな味わいが堪能できる「ダークミステリー」についての楽しみ方、さらに三者三様の創作流儀や代表作にまつわる創作秘話までたっぷり90分! 当日ご覧になれな

          • 第13回 今井真実|灼熱の台湾でほおばる、肉汁たっぷり水煎包

             ああ、これがこの国の夏なのか。これは、暑いわ、評判通り。昨日までは、「東京の方が暑いくらい。台湾、意外と涼しいね」などと軽口を叩いていたくらいだったのに。台湾が本気を出してきた。  街中の道をただ歩いているだけなのに、日光が肌に刺さるように痛い。太陽に焼かれた砂浜に立っているみたいに足の裏からも熱が伝わってくる。日傘をさして、さらになるべく日陰を探すも、もちろん歩道はぎらぎらと明るいまま。汗は当たり前のようにとめどなく流れて、もうそれに意識を向けることもない。  仕方がない

            • 「アップデートとは、自分が間違っていたと理解すること」|桜庭一樹『名探偵の有害性』ロングインタビュー

              作家の書き出し Vol.32 〈取材・構成:瀧井朝世〉 ◆中年を主人公にしたミステリを書きたかった——『名探偵の有害性』は、約三十年前に活躍した名探偵と助手が、ネットでの炎上を機に当時の事件を振り返る旅に出る物語です。東京創元社の文芸誌「紙魚の手帖」に連載されていましたよね。 桜庭 連載を立ち上げる際に、東京創元社さんから「ミステリじゃなくてもいいです」と言われていたんです。でもせっかくミステリの老舗で書くなら、直球のテーマをやりたいなと思って。ミステリってなんだろうとか

              • ピアニスト・藤田真央エッセイ #60〈矢代秋雄のカデンツァーー山田マエストロとの日本ツアー〉

                『指先から旅をする』が書籍化しました! 世界中で撮影された公演&オフショット満載でお届けします。 ”  5月下旬、私たちは日本に帰ってきた。飛行機を降りるとふわりと香る醤油や出汁の匂いで故郷を実感する。沢山の大谷翔平選手の広告に迎えられて入国したが、その数が帰国の度に増えている感じがするのは気のせいだろうか。  実家の猫と戯れるも束の間、7公演の怒涛のツアーが始まった。兵庫、館山(千葉)、東京、名古屋、京都、そして横浜。オーケストラの楽器を運搬する大きなトラックに私の衣

                • ピアニスト・藤田真央エッセイ #59〈地中海の青空の下――モンテカルロ・フィル〉

                  『指先から旅をする』が書籍化しました! 世界中で撮影された公演&オフショット満載でお届けします。  絵に描いたような雲ひとつない晴天。水底まで透き通る海。指先から溢れ落ちるサラサラの砂。肌にまとわりつく熱気。  人々は水着を身につけ各々の時間を楽しんでいる。砂浜に寝そべり肌を焼く女性。サーフボードを手に海に入り込むシックスパックの男性。寄せては返す波にはしゃぐ子供達。その隣のおとなしい犬。様々だ。  私もただただ無心に水面を眺めたり、靴下を脱いで砂の感触を確かめたりしてい

                  • イナダシュンスケ|ファーストコンタクト晩餐会

                    第27回 ファーストコンタクト晩餐会 「料理は味が全て。うまけりゃいいんだよ」ということが世間ではよく言われますが、僕は主に料理を作る側の立場として、これは一見正論めいてはいるけれど、実際は暴論だと考えています。「うまけりゃいい」はその通りだとしても、じゃあそれはいったい誰にとってうまいのか。どういう時にどういう気分で食べたらうまいのか。  誰にとっても、いついかなる場面でもおいしいものなんて、世の中にそうそうはありません。単純な嗜好の違いもありますが、それ以上に、おいし

                    • 一穂ミチ「アフター・ユー」#006

                      『もしもし』  多実の声だった。すこし掠れているが、間違いない。青吾は、自分でも意外なほど平静だった。 『あ、スガワラさんですか? 調査報告書ありがとうございます。きょう受け取りました。すみません、無理言って郵送していただきまして……』 「多実」  ざ、さ、と砂を踏みしめるようなノイズが混じる。呼びかけに対する応えはなかった。 『はい、だいぶよくなりました。残りのお金はあした振り込みますので、よろしくお願いいたします』  通話が切られ、テレカが吐き出される。「42」に減った度

                      • 一穂ミチ「アフター・ユー」#005

                         涙の筋で、頰の一部分だけ突っ張る感じがした。先に口を開いたのは沙都子だった。 「とりあえず、上がってください。お茶でも淹れます」 「はい」  子どものように答え、洗面所で手を洗うついでに顔も洗った。鏡を見ると涙は止まっていたが、充血した眼球がまだ全体的に潤んでいる。頭全体が妙に腫れぼったい感じで鈍く痛み、明瞭な思考ができそうにない。ダイニングでは、沙都子が何事もなかったような顔で湯を沸かしていた。 「ハーブティでいいですか?」 「はい」  何を考えているのかわからなくて怖い

                        • 大木亜希子「マイ・ディア・キッチン」最終話 料理監修:今井真実

                          最終話 いつものように布団を畳み、身なりを整え自室の扉を開けると、リビングにパンツ一丁の天堂さんが立っていた。部屋の中央に姿見を置き、何やら鏡の中をまじまじと覗いている。  那津さんが半裸の状態で室内を彷徨くのは日常茶飯事だ。しかし、天堂さんがここまで無防備な姿でいるのは珍しい。と言うか、私がこの家に来てから初めての出来事である。 「……おはようございます」  おそるおそる声をかけると、彼はこちらを振り向いて言った。 「ひゃっ! 白石さん! こんな格好でごめんなさい!」  彼

                          • 寺地はるな「リボンちゃん」#003

                            第三話 左手の爪すべてを玉虫色に塗り終えた時、スマートフォンが鳴り出した。わたしは一年三百六十五日、爪のケアを欠かしたことがない。爪という身体のパーツが愛しくてたまらない。いろんな色を塗りたくれるし、いざという時には武器にもなる。  小さな刷毛をつかって色を乗せる作業も好きだ。神経が研ぎ澄まされ、刷毛を持つ指は震える。息を殺し、目を凝らす。ムラなく塗り終えた時の、なんとも言えぬ高揚感と解放感。  木曜日の午前十時に電話をかけてきて、「いっしょに昼飯でもどうだ」と誘う父は、いち

                            • 地底から忍び寄る怪異を〝超心理学〟で解決できるか⁉〈オモコロ〉出身作家・上條一輝さんの極上エンタメホラー『深淵のテレパス』インタビュー

                               大学のオカルトサークルで行われた怪談会。そこで不気味な怪談を聞いた夜から、ある参加者の日常に怪異が忍び寄る——。 「一回きりの開催」「東雅夫・澤村伊智という豪華な二名が選考」と告知された創元ホラー長編賞。その受賞作となったのが、上條一輝さんの『深淵のテレパス』だ。著者の上條さんはなんとWebメディア〈オモコロ〉のライター(名義は加味條)。まずはどうして長編ホラー小説を書くに至ったのか、来歴を聞いてみた。 「小学校中学年ぐらいから誰に言われるともなく、ノートに小説を書いて

                              • 予測不可能! 衝撃のラストに悶える新しい本格ミステリが誕生|新名智『雷龍楼の殺人』インタビュー

                                 こんなミステリ、読んだことない! 読後にそう叫びたくなるような、前代未聞の小説が誕生した。  著者の新名智さんは、2021年、「虚魚」で第41回横溝正史ミステリ&ホラー大賞〈大賞〉を受賞し、デビュー。最新作『雷龍楼の殺人』は4作目で、自身初の本格ミステリだ。 「デビュー時に選考委員をしてくださった綾辻行人先生と対談をした際に、『本格を書きなさい』と仰っていただきました。当時は『いずれ必ず書きます』とお答えしたのですが、その〝いずれ〟がこの作品ということになりますね」  舞台

                              • 固定された記事

                              【直木賞ノミネート!】麻布競馬場『令和元年の人生ゲーム』第1話無料公開 ~意識の高い慶應ビジコンサークル篇~

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                              • 稲田俊輔「食いしん坊のルーペ」(*食エッセイ)
                                32本
                              • #ミステリー小説が好き
                                243本
                              • ピアニスト・藤田真央「指先から旅をする」
                                61本
                              • 寺地はるな「リボンちゃん」(*小説)
                                5本
                              • 一穂ミチ「アフター・ユー」(*小説)
                                6本

                              記事

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                                〈タワマン文学〉の旗手・麻布競馬場待望の第2作『令和元年の人生ゲーム』。発売直後から「他人ごととは思えない!」と悲鳴のような反響が続々と…… 4月、やる気に満ちた新入生の皆さまの応援企画として、第1話〈意識の高い慶應ビジコンサークル篇〉を期間限定で全文無料公開いたします! これを読めば5月病も怖くない……はずです。 『令和元年の人生ゲーム』 第1話 平成28年  2016年の春。徳島の公立高校を卒業し、上京して慶応義塾大学商学部に通い始めた僕は、ビジコン運営サークル「イ

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                                イナダシュンスケ|サクラダ君のアメリカンドッグ

                                第29回 サクラダ君のアメリカンドッグ  今となっては分かります。小学生時代の親友サクラダ君は「早熟」でした。  小学四年生に進級して、毎日一緒に帰る僕たち5人組は、クラスがバラバラになりました。かろうじて僕とサクラダ君は引き続き同じクラスでした。しかし僕たち2人はその頃から微妙に別々の道を歩み始めたのです。  その小学校では、四年になると希望すれば部活動に参加できました。サクラダ君は真っ先にサッカー部に入りました。僕はなんとなくバドミントン部に入るつもりだったのですが

                                イナダシュンスケ|サクラダ君のアメリカンドッグ

                                伊岡瞬「追跡」#007

                                19 火災二日目 新発田信(承前) わが子ながら、どうひいき目に見ても軽薄にしか映らない淳也が出ていった執務室のドアを、新発田信は短いあいだ睨んでいた。 「どうしたらあれほど出来の悪いのが生まれるんだ」  普段は腹に納めている愚痴が、つい口からこぼれた。いや、考えないようにしている現実を、ふいに見せつけられたことへの嘆きだ。  過去には、妻が浮気してできた子ではないかとさえ疑ったこともある。しかし中学に進んだあたりから、顔つき体つきが自分によく似てきたことは認めざるを得ない。

                                伊岡瞬「追跡」#007

                                イナダシュンスケ|サクラダ君と道草コロッケ

                                第28回 サクラダ君と道草コロッケ  小学三年生の時、親友ができました。  サクラダ君というその同級生は、足が速くてスポーツ万能、色白で茶色がかった髪にぱっちりとした大きな目と長い睫毛、明るくて成績もほどほどに良く、つまりは女子にモテまくる少年でした。僕がなぜそんな彼と仲良くなったかと言うと、単に家が近所で帰宅する方向が同じだったからです。学校帰りはだいたい、僕とサクラダ君の他に同じ方向の友人たち総勢5人で、やたらと道草を食いながら帰ったものでした。  ある時そのメンバ

                                イナダシュンスケ|サクラダ君と道草コロッケ

                                第13回 今井真実|灼熱の台湾でほおばる、肉汁たっぷり水煎包

                                 ああ、これがこの国の夏なのか。これは、暑いわ、評判通り。昨日までは、「東京の方が暑いくらい。台湾、意外と涼しいね」などと軽口を叩いていたくらいだったのに。台湾が本気を出してきた。  街中の道をただ歩いているだけなのに、日光が肌に刺さるように痛い。太陽に焼かれた砂浜に立っているみたいに足の裏からも熱が伝わってくる。日傘をさして、さらになるべく日陰を探すも、もちろん歩道はぎらぎらと明るいまま。汗は当たり前のようにとめどなく流れて、もうそれに意識を向けることもない。  仕方がない

                                第13回 今井真実|灼熱の台湾でほおばる、肉汁たっぷり水煎包

                                「アップデートとは、自分が間違っていたと理解すること」|桜庭一樹『名探偵の有害性』ロングインタビュー

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                                ピアニスト・藤田真央エッセイ #60〈矢代秋雄のカデンツァーー山田マエストロとの日本ツアー〉

                                『指先から旅をする』が書籍化しました! 世界中で撮影された公演&オフショット満載でお届けします。 ”  5月下旬、私たちは日本に帰ってきた。飛行機を降りるとふわりと香る醤油や出汁の匂いで故郷を実感する。沢山の大谷翔平選手の広告に迎えられて入国したが、その数が帰国の度に増えている感じがするのは気のせいだろうか。  実家の猫と戯れるも束の間、7公演の怒涛のツアーが始まった。兵庫、館山(千葉)、東京、名古屋、京都、そして横浜。オーケストラの楽器を運搬する大きなトラックに私の衣

                                ピアニスト・藤田真央エッセイ #60〈矢代秋雄のカデンツァーー山田マエストロとの日本ツアー〉

                                ピアニスト・藤田真央エッセイ #59〈地中海の青空の下――モンテカルロ・フィル〉

                                『指先から旅をする』が書籍化しました! 世界中で撮影された公演&オフショット満載でお届けします。  絵に描いたような雲ひとつない晴天。水底まで透き通る海。指先から溢れ落ちるサラサラの砂。肌にまとわりつく熱気。  人々は水着を身につけ各々の時間を楽しんでいる。砂浜に寝そべり肌を焼く女性。サーフボードを手に海に入り込むシックスパックの男性。寄せては返す波にはしゃぐ子供達。その隣のおとなしい犬。様々だ。  私もただただ無心に水面を眺めたり、靴下を脱いで砂の感触を確かめたりしてい

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                                イナダシュンスケ|ファーストコンタクト晩餐会

                                第27回 ファーストコンタクト晩餐会 「料理は味が全て。うまけりゃいいんだよ」ということが世間ではよく言われますが、僕は主に料理を作る側の立場として、これは一見正論めいてはいるけれど、実際は暴論だと考えています。「うまけりゃいい」はその通りだとしても、じゃあそれはいったい誰にとってうまいのか。どういう時にどういう気分で食べたらうまいのか。  誰にとっても、いついかなる場面でもおいしいものなんて、世の中にそうそうはありません。単純な嗜好の違いもありますが、それ以上に、おいし

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                                一穂ミチ「アフター・ユー」#006

                                『もしもし』  多実の声だった。すこし掠れているが、間違いない。青吾は、自分でも意外なほど平静だった。 『あ、スガワラさんですか? 調査報告書ありがとうございます。きょう受け取りました。すみません、無理言って郵送していただきまして……』 「多実」  ざ、さ、と砂を踏みしめるようなノイズが混じる。呼びかけに対する応えはなかった。 『はい、だいぶよくなりました。残りのお金はあした振り込みますので、よろしくお願いいたします』  通話が切られ、テレカが吐き出される。「42」に減った度

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                                一穂ミチ「アフター・ユー」#005

                                大木亜希子「マイ・ディア・キッチン」最終話 料理監修:今井真実

                                最終話 いつものように布団を畳み、身なりを整え自室の扉を開けると、リビングにパンツ一丁の天堂さんが立っていた。部屋の中央に姿見を置き、何やら鏡の中をまじまじと覗いている。  那津さんが半裸の状態で室内を彷徨くのは日常茶飯事だ。しかし、天堂さんがここまで無防備な姿でいるのは珍しい。と言うか、私がこの家に来てから初めての出来事である。 「……おはようございます」  おそるおそる声をかけると、彼はこちらを振り向いて言った。 「ひゃっ! 白石さん! こんな格好でごめんなさい!」  彼

                                大木亜希子「マイ・ディア・キッチン」最終話 料理監修:今井真実

                                寺地はるな「リボンちゃん」#003

                                第三話 左手の爪すべてを玉虫色に塗り終えた時、スマートフォンが鳴り出した。わたしは一年三百六十五日、爪のケアを欠かしたことがない。爪という身体のパーツが愛しくてたまらない。いろんな色を塗りたくれるし、いざという時には武器にもなる。  小さな刷毛をつかって色を乗せる作業も好きだ。神経が研ぎ澄まされ、刷毛を持つ指は震える。息を殺し、目を凝らす。ムラなく塗り終えた時の、なんとも言えぬ高揚感と解放感。  木曜日の午前十時に電話をかけてきて、「いっしょに昼飯でもどうだ」と誘う父は、いち

                                寺地はるな「リボンちゃん」#003

                                地底から忍び寄る怪異を〝超心理学〟で解決できるか⁉〈オモコロ〉出身作家・上條一輝さんの極上エンタメホラー『深淵のテレパス』インタビュー

                                 大学のオカルトサークルで行われた怪談会。そこで不気味な怪談を聞いた夜から、ある参加者の日常に怪異が忍び寄る——。 「一回きりの開催」「東雅夫・澤村伊智という豪華な二名が選考」と告知された創元ホラー長編賞。その受賞作となったのが、上條一輝さんの『深淵のテレパス』だ。著者の上條さんはなんとWebメディア〈オモコロ〉のライター(名義は加味條)。まずはどうして長編ホラー小説を書くに至ったのか、来歴を聞いてみた。 「小学校中学年ぐらいから誰に言われるともなく、ノートに小説を書いて

                                地底から忍び寄る怪異を〝超心理学〟で解決できるか⁉〈オモコロ〉出身作家・上條一輝さんの極上エンタメホラー『深淵のテレパス』インタビュー

                                予測不可能! 衝撃のラストに悶える新しい本格ミステリが誕生|新名智『雷龍楼の殺人』インタビュー

                                 こんなミステリ、読んだことない! 読後にそう叫びたくなるような、前代未聞の小説が誕生した。  著者の新名智さんは、2021年、「虚魚」で第41回横溝正史ミステリ&ホラー大賞〈大賞〉を受賞し、デビュー。最新作『雷龍楼の殺人』は4作目で、自身初の本格ミステリだ。 「デビュー時に選考委員をしてくださった綾辻行人先生と対談をした際に、『本格を書きなさい』と仰っていただきました。当時は『いずれ必ず書きます』とお答えしたのですが、その〝いずれ〟がこの作品ということになりますね」  舞台

                                予測不可能! 衝撃のラストに悶える新しい本格ミステリが誕生|新名智『雷龍楼の殺人』インタビュー

                                伊岡瞬「追跡」#006

                                15 火災二日目 アオイ 油断がなかったといえば噓になる。  あの『B倉庫』で初めて樋口と手合わせしたとき、アオイがあっさりと一本取った。  樋口が手加減しているようには見えなかった。あの男にも華やかな時はあったのかもしれないが、この仕事の〝現場〟に出るにはそろそろピークを過ぎているし、順当な実力の差だと理解した。だから、再び対峙することがあったとしても、そして向こうに多少の〝得物〟のアドバンテージがあったとしても、充分制圧できるだろうと踏んでいた。  その油断がこんな結果を

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