今村翔吾「海を破る者」 #009
拿捕した赤船は釣島に曳航し、海賊たちのうち無傷の者は牢へ、怪我を負った者には手当を、死んだ者は弔った。六郎は生き残った海賊に何故、瀬戸内に姿を見せたか尋問した。すると返って来た答えは意外なものであった。
「向こうにいては元に殺される」
彼らは生まれながらの海賊という訳ではない。元は南宋に拠点を置いた商人であった。だが南宋が屈服すると、元に協力的であった商人だけが今後も商いをすることを許され、彼らは船を持つことも禁じられた。故に海に逃げだしたのだが、元は執拗に取り締まり、行