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朝倉かすみ「よむよむかたる」(*小説)

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小樽の古民家カフェで開かれる〈坂の途中で本を読む会〉。本を読み、人生を語る、みんなの大切な時間。最年長九十一歳、最年少七十七歳、今日もにぎやかに全員集合!
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#よむよむかたる

朝倉かすみ「よむよむかたる」 はじまりのことば

 わたしが物心ついたときには、母はもう「ちいさな集まり」の参加者だった。  近所の主婦た…

【4夜連続公開】朝倉かすみ「よむよむかたる」#011

ついに完成した記念冊子に胸をときめかせる一同。そんな中、読書会を急遽欠席したマンマの息子…

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【4夜連続公開】朝倉かすみ「よむよむかたる」#010

まちゃえさん夫妻の息子・明典に、かつて何が起きたのか。美智留は彼と過ごした青春時代につい…

【4夜連続公開】朝倉かすみ「よむよむかたる」#009

▼第1話を無料公開中! 5 冷麦の赤いの 夕方から立て込んで、店を閉めたのは夜八時すぎだ…

朝倉かすみ「よむよむかたる」#008

喫茶シトロンの窓から店内を覗き込む若い女性。 安田が見咎めると、彼女は開き直ったように口…

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朝倉かすみ「よむよむかたる」#007

 安田は、今、市立小樽文学館に向かって歩いている。ちょうど図書館の前を通り過ぎたところだ…

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朝倉かすみ「よむよむかたる」#006

「返事なんぞ期待しちゃいません」 会長の言葉に、安田はかつて〈ご返事ご無用〉の手紙を書いたことを思い出した  マンマの「読み」は、抑揚のつけ方がいくぶん大袈裟で、なんでもない場面でも大変なことが起きている印象を与え、ドラマチック読みとか、大輪の深紅の薔薇読みとか、波瀾万丈読みと評価されている。「我が読む会の看板女優」というキャッチコピーが献上されていて、マンマが朗読し終えると、かならず誰かがそう口にするのが一種の型になっていた。  三節で「ぼく」は小人の話をいろいろ調べ、ア

朝倉かすみ「よむよむかたる」#005

戦時下の暮らし、息子の事故死――読書会で語られる 老人たちの思い出が、安田のある記憶を呼…

朝倉かすみ「よむよむかたる」#004

老人たちの読書会で「読み」担当となった安田。 彼の音読に感極まったまちゃえさんは、亡き息…

朝倉かすみ「よむよむかたる」#003

一年ぶりに再開された〈坂の途中で本を読む会〉。 老人たちの熱心な姿を前にして、安田は…… …

朝倉かすみ「よむよむかたる」#002

2 いつかの手紙 スッ。会長が腕時計へと視線を下げた。それで場が静まった。なぜなら、スッ…

【無料公開中!】朝倉かすみ「よむよむかたる」#001

小樽の古民家カフェで開かれる〈坂の途中で本を読む会〉。本を読み、人生を語る、みんなの大切…