朝倉かすみ「よむよむかたる」#007
安田は、今、市立小樽文学館に向かって歩いている。ちょうど図書館の前を通り過ぎたところだった。図書館でもどこかの部屋を借りられるかもしれないな、と思いつつスマホの地図アプリを見て、富岡一丁目の交差点を右折、と確認する。あとは真っ直ぐ行けばいいはずだ。
午後三時を過ぎていたので、隣家のサッちゃんにLINEした。店番をお願いしていたのだ。
隣家のサッちゃんは喫茶シトロンのスーパーサブだ。こうして安田が外出するときに喫茶業務をこなしてくれる。六十いくつの細身の女性で、誰彼かまわ