朝倉かすみ「よむよむかたる」#006
「返事なんぞ期待しちゃいません」
会長の言葉に、安田はかつて〈ご返事ご無用〉の手紙を書いたことを思い出した
マンマの「読み」は、抑揚のつけ方がいくぶん大袈裟で、なんでもない場面でも大変なことが起きている印象を与え、ドラマチック読みとか、大輪の深紅の薔薇読みとか、波瀾万丈読みと評価されている。「我が読む会の看板女優」というキャッチコピーが献上されていて、マンマが朗読し終えると、かならず誰かがそう口にするのが一種の型になっていた。
三節で「ぼく」は小人の話をいろいろ調べ、ア