透明ランナー|「写真新世紀30年の軌跡展」――若手作家の登竜門、30年の歴史を振り返る
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2021年2月、ひとつの公募展の終了が発表されました。
「写真新世紀」。1991年に始まった、新人写真家の発掘・育成・支援を目的とした公募展です。経験(プロ、アマチュア)、国籍、年齢、性別は一切不問。それまでの実績は関係なく、すべての応募者がフラットに審査されます。
30年の歴史の中で後に有名になるアーティストを多く輩出し、若手写真家の登竜門としてよく知られていました。これまでに実施した44回の公募の応募者総数は35,550 名(組)に上り、1,126名(組)の受賞者が誕生しました。
私は2007年以来受賞作品展に必ず足を運んできました。写真新世紀のファンと言っていいかもしれません。展示会場にはアーティスト自身がどのような思いで制作したのかを言語化したステートメントが掲げられています。写真・映像作品はそれ単体では成立せず、必ずステートメントが求められます。同時代の作家がどのような視点を持って世界を切り取っているかダイレクトに知ることができ、私にとって大きな刺激となってきました。
審査員の顔ぶれが豪華なのも写真新世紀の特徴です。荒木経惟(あらき のぶよし)、森山大道(もりやま だいどう)、蜷川実花(にながわ みか)など、日本を代表する写真家が起用されてきました。写真家としても活動する作家の椎名誠(しいな まこと)も審査員を務めたことがあります。
海外のアーティストでは、ライアン・マッギンレー(2021年)、ウィリアム・エグルストン(2005年)、そして1994年にはあのロバート・フランクも審査員をしていました。アレック・ソスが2017年に審査員を務めた際、応募者に写真の心得を語りかけるコメントが話題になったことは、「『アレック・ソス Gathered Leaves』展――“アメリカが誇る最も完璧な写真家”の魅力に迫る」の記事でも紹介しました。
各審査員が優秀賞1名(組)・佳作数名(組)をそれぞれ独立に選出するのも興味深いシステムです。99人に批判されてもひとりの心に深く刺されば受賞する可能性があるということです。各審査員が優秀賞を出し合ったあと、その中からグランプリ1名(組)が審査員の合議により選出されます。
そんな写真新世紀の歴史をたどる展覧会「写真新世紀30年の軌跡展-写真ができること、写真でできたこと」が、都内2ヶ所の会場で開催されています。写真新世紀の30年の歴史を振り返るとともに、歴代の受賞者のその後の活躍を見てみましょう。
①東京都写真美術館会場
写真新世紀の受賞作品展は例年、東京都写真美術館の地下1階展示室で行われていました。入場料は無料で、多くの来場者に新人作家の魅力を伝えることを目的としていました。最後となる今回も同じ会場で行われ、無料で鑑賞することができます。
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