ピアニスト・藤田真央エッセイ #58〈魔法のような室内楽――タメスティとの共演〉
『指先から旅をする』が書籍化しました!
世界中で撮影された公演&オフショット満載でお届けします。
”宝箱”との誉れ高いブラームス・ザールは、精巧で眩い装飾と豊かな響きを併せ持つ素晴らしいホールだ。客席の中央ではブラームスの像が静かに耳を澄ましている。音響の質は別格で、私の代名詞であるまろやかな音が会場の隅々まで減衰することなく響き渡る。ひとたびタッチのニュアンスを変えれば、客席に飛んでいく音色も万華鏡のように変化した。私が最重要視している一音一音の響きへのこだわりを、このホ