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透明ランナーのアート&シネマレビュー

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#アート

豊田市美術館のイマジナティヴなキュレーション――「枠と波」「吹けば風」展|透明ランナー

豊田市美術館のイマジナティヴなキュレーション――「枠と波」「吹けば風」展|透明ランナー

 日本には素晴らしい美術館が全国各地に多数ありますが、その中でも企画展のたびに必ず遠征して観に行く、圧倒的信頼を置いている美術館がいくつかあります。そのひとつが愛知県・豊田市にある豊田市美術館です。美術館の建物は建築家・谷口吉生(1937-)の設計によるものです。

 豊田市美術館は国内でも有数の規模の作品を所蔵しています。海外作品ではクリムトやシーレなどのウィーン分離派、シュルレアリスム、アルテ

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「現代アーティストとしての坂本龍一」を振り返る――現代アートへの接近、そして越境|透明ランナー

「現代アーティストとしての坂本龍一」を振り返る――現代アートへの接近、そして越境|透明ランナー

 "教授"と呼ばれたアーティストが亡くなりました。

 坂本龍一(さかもと りゅういち、1952-2023)は2000年代以降、音楽家や社会運動家としての活動の一方で、大型のサウンド・インスタレーションを次々と手掛け、美術展や国際芸術祭へ精力的に参加し、現代アート界に接近していきました。

 2012年に東京都現代美術館で音楽と現代アートに関する展覧会をプロデュースし、2014年には札幌国際芸術祭

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「VOCA展2023」――“平面”を拡張していく40歳以下のアーティストの展覧会|透明ランナー

「VOCA展2023」――“平面”を拡張していく40歳以下のアーティストの展覧会|透明ランナー

 さあVOCA展ですよVOCA展! 3月といえば桜とVOCA展です!

 VOCA展は「平面美術」の領域で国際的に通用する若い作家を支援する目的で1994年に始まり、2023年で30周年を迎える歴史ある展覧会です。全国の学芸員や研究者などの推薦委員約30~40人が、「40歳以下」の若手作家をそれぞれ推薦するという形で開催されます。こういう展覧会はなかなか珍しいです。

 選出条件はふたつだけ、「平

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経営危機に翻弄される私立美術館の現在――ヴァンジ彫刻庭園美術館&クレマチスの丘|透明ランナー

経営危機に翻弄される私立美術館の現在――ヴァンジ彫刻庭園美術館&クレマチスの丘|透明ランナー

 こんにちは。あなたの代わりに観てくる透明ランナーです。

 東京都心から車で約2時間の静岡県長泉町。駿河湾を望む富士山麓の広大な丘陵地に位置するのが、複合文化施設「クレマチスの丘」です。緑豊かな庭園、地場食材を使ったレストラン、花に囲まれたカフェに加え、4つの個性豊かなミュージアムが点在しています(①ヴァンジ彫刻庭園美術館、②IZU PHOTO MUSEUM、③ベルナール・ビュフェ美術館、④井上

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透明ランナー|ヴェネチア・ビエンナーレ――世界最高峰の現代アートが集う2年に1度の祭典

透明ランナー|ヴェネチア・ビエンナーレ――世界最高峰の現代アートが集う2年に1度の祭典

▼ 透明ランナーによるイベントはこちら

◎ 【11/30までアーカイブ動画公開中】 ローカル芸術祭・徹底ガイド|透明ランナー
◎ ドラフト2022 最速レビュー!by透明ランナー

 こんにちは。あなたの代わりに観てくる透明ランナーです。
 2022年6月から約半年にわたって続けている本連載「透明ランナーのアート&シネマレビュー」ですが、今回は初めて海外からお届けします。昔からずっと行きたいと思

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透明ランナー|瀬戸内国際芸術祭2022秋会期――“西の島”に広がる表情豊かな世界【本島・高見島・粟島】

透明ランナー|瀬戸内国際芸術祭2022秋会期――“西の島”に広がる表情豊かな世界【本島・高見島・粟島】

 3年に1度開かれる日本最大級のアートイベント、瀬戸内国際芸術祭。2022年度秋会期が9月29日(木)から11月6日(日)まで39日間にわたって開催されています。

 瀬戸芸は春・夏・秋の3会期に分かれ、春会期のみ会場となる島、秋会期のみ会場となる島がそれぞれあり、何度も訪れたくなる芸術祭です。瀬戸大橋の西側に位置する「西の島」と呼ばれる島々は、現在開催中の秋会期のみの会場となっています。
 西の

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透明ランナー|「見るは触れる 日本の新進作家 vol.19」展――広がり続ける写真芸術の自由な可能性

透明ランナー|「見るは触れる 日本の新進作家 vol.19」展――広がり続ける写真芸術の自由な可能性

 こんにちは。あなたの代わりに観てくる透明ランナーです。

 今回紹介するのは、東京都写真美術館で開かれている「見るは触れる 日本の新進作家 vol.19」展です。「日本の新進作家」展は2002年から東京都写真美術館で定期的に行われている企画展で、新たな写真・映像表現に挑戦している若手作家の作品をピックアップして紹介するものです。私は2008年の「vol.7」以降毎回訪れ、どんな作品と出会えるのか

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透明ランナー|国際芸術祭「あいち2022」――現代アートから土地の歴史・文化・産業を想起する

透明ランナー|国際芸術祭「あいち2022」――現代アートから土地の歴史・文化・産業を想起する

 名古屋市をはじめとした愛知県内各所で、国際芸術祭「あいち2022」が10月10日(月・祝)まで開催されています。2010年から2019年まで3年ごとに開催されていた「あいちトリエンナーレ」を引き継ぐ形で、運営体制を一新して新たな芸術祭として再スタートを切りました。
 現代美術展には32の国と地域から82組のアーティストが参加しています。同時に開催されるパフォーミングアーツ(演劇やダンスなどの舞台

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透明ランナー|瀬戸内国際芸術祭2022夏会期 Vol.2【小豆島・男木島・女木島・大島・高松篇】

透明ランナー|瀬戸内国際芸術祭2022夏会期 Vol.2【小豆島・男木島・女木島・大島・高松篇】

 前回の記事「瀬戸内国際芸術祭2022夏会期 Vol.1」に続き、今回は小豆島、男木島、女木島、大島、高松の作品を紹介します。

小豆島 2万5000人ほどが住む小豆島は、船でしか行けない(橋や空港がない)島として国内最大の人口を有し、フェリーの発着本数は日本一です。広い島内の各地に作品が点在し、事前に計画を立てないとなかなか観たい作品を回りきれないエリアでもあります。

 小豆島で今回最も良かっ

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透明ランナー|瀬戸内国際芸術祭2022夏会期 Vol.1【直島・宇野港・豊島・犬島篇】

透明ランナー|瀬戸内国際芸術祭2022夏会期 Vol.1【直島・宇野港・豊島・犬島篇】

 3年に1度開かれる日本最大級のアートイベント、瀬戸内国際芸術祭2022 夏会期がついに始まりました! 瀬戸内海に広がる美しい島や港を舞台に、今回で5回目となるこの芸術祭。33の国・地域から184組のアーティストが参加し、彫刻、写真、映像、演劇、さまざまなジャンルの作品を楽しむことができます。
 今年7月にはTIME誌の“The World's Greatest Places of 2022”で紹

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