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世界最大級の現代写真の祭典「Paris Photo」&「Photo Days」 花の都パリから撮り下ろしレポート!|透明ランナー

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 前回の記事「ヴェネチア・ビエンナーレ――世界最高峰の現代アートが集う2年に1度の祭典」に続き、今回も海外からお届けします。

 本連載「透明ランナーのアート&シネマレビュー」でよく写真や映像を取り上げている私にとって、いつか絶対に行ってみたいと思っていた場所があります。それが「Paris Photo」です。パリで毎年11月に開かれ、世界各国から写真・映像作品を扱うギャラリーや出版社が一堂に会します。例年5万人以上が訪れる現代写真界隈で世界最大級のイベントです。第25回となる今年は11月10日(木)~13日(日)の4日間開催されました。

 コロナ禍で2020年の開催は見送られましたが、2021年から復活。今年はエッフェル塔のお膝元シャン・ド・マルス公園に設けられた見本市会場「グラン・パレ・エフェメール」で開かれます。2024年パリ夏季五輪の会場としても使用される予定の、約10,000m2もある広大な空間です。

 また、「Paris Photo」を含む10月15日(土)~12月11日(日)は「Photo  Days」という期間が設定されています。パリ市内各所の50以上の会場で写真や映像に関するさまざまな催しが一斉に開かれ、この期間のパリはまさに写真一色となります。今回はそんな花の都を彩る現代写真の催し、「Paris Photo」と「Photo  Days」をレポートしたいと思います。


Paris Photo

 11月11日(金)午後1時、最寄りのメトロÉcole Militaire駅のホームがすごい数の人で溢れています。「え、まさかこれ全部Paris Photoに行く人じゃないよね?」と思いながら会場に向かうと、そのまさかでした。入場まで数十分かかる長蛇の列ができています。これが世界最大級の現代写真のお祭りなんですね。びっくり!

 会場内には、世界中から集まった約200のギャラリー、30の出版社、20の特別プログラムがブースを構えています。とにかく広い!

 噂には聞いていましたがこんなに大きなイベントだとは! わくわくしてきました。

 会場のグラン・パレ・エフェメールからはエッフェル塔をすぐ近くに見ることができます。

①サイン会

 「Paris Photo」では世界中の著名写真家によるサイン会が毎日行われており、このように予定表に名前がびっしり並んでいます。

 わー! なんとソフィ・カル(1953-)のサインをもらってしまいました! 嬉しい!
 (※表記が定まっているアーティストはカタカナで、定まっていないアーティストはアルファベットで表記します)

 オーストリア在住の写真家、古屋誠一(ふるや せいいち、1950-)のサイン会も開かれていました。熱心なフランスのファンが彼の過去の写真集をすべて持ち込み「全部サインしてください!」と言うほど熱気がありました。

 私が訪れた翌日には川内倫子(かわうち りんこ、1972-)のサイン会も行われていたようです。現在東京オペラシティ アートギャラリーで個展「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」が開催中です。こちらの展覧会のレビューも近日中に本連載で書くつもりです。

 (「川内倫子に直接会うのが夢だった」と嬉しそうにサインをもらうスペイン生まれの写真家Bárbara Traverのツイート)

②ギャラリーブース

 「Paris Photo」最大の見どころは世界各国から集まったアートギャラリーのブースです。その数約200。歩きながら展示作品を眺めているだけで、写真芸術の多様さ、その表現の奥深さを感じることができます。

 日本からは恵比寿にあるギャラリー「MEM」が出展しています。今回は「地方色とアヴァンギャルド」と題し、中国地方を拠点に活動した4人の写真家を紹介していました。
 最も有名なのは鳥取の植田正治(うえだ しょうじ、1913-2000)です。「Ueda-cho」(植田調)と言えば世界で通じるほど独自のスタイルを築き上げています。

 他の3人は緑川洋一(みどりかわ よういち、1915-2001)、迫幸一(さこ こういち、1918-2010)、大藤薫(おおとう かおる、1927-2020)。戦後さまざまな表現に挑戦して独自の発展を遂げた日本写真史は海外で高く評価されており、評判は上々だったようです。

緑川洋一

 日本の写真家を紹介する海外のギャラリーもあります。スイス・チューリヒのChristophe Guye Galerieは、鈴木理策(すずき りさく、1963-)の作品を出品しています。旅をしながらその場所にあるものを撮影していくロードムービーのような手法で知られています。長年撮り続けていた桜の写真をテーマに2016年にこのギャラリーで個展が行われ、出品作は『SAKURA』(2017)という写真集に結実しました。

 ベルギー・アントワープの「IBASHO」(居場所)は、日本の写真家を主に取り扱う欧州では珍しいギャラリーです。ディレクターのマルテイン・ヴァン・ピーターソンは2012年頃森山大道(もりやま だいどう、1938-)の作品と出会ってその魅力に惹かれ、妻と共に日本の写真家を主に取り上げるギャラリーを開くことを決意しました。
 堀江美佳(ほりえ みか、1984-)は和紙を印画紙として用いるアーティストです。原料となる雁皮を採集し、樹皮を剥ぎ、漉いて紙にする工程を自身で行い、そうして作った和紙に青一色で写真をプリントするという制作方法を取っています。

 アムステルダムのFlatland Galleryが展示するのは、オランダで最も有名な写真家のひとり、アーウィン・オラフ(1959-)です。オラフは人種差別やセクシャルマイノリティを取り巻く困難など社会の課題を鋭く捉えます。2021年のKYOTOGRAPHIEではコロナ禍を巡る人々の狂騒を客観視する作品を発表していました。

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