【2022年日本劇場未公開映画ベスト10】 ――日本公開が待ち遠しい10の作品|透明ランナー
2022年もさまざまな映画がスクリーンを賑わせましたが、劇場公開されなかった映画にも数多くの傑作がありました。昨日公開した「2022年日本公開映画ベスト10」に続き、この記事では私が2022年に映画祭や英語版配信で観た「日本未公開映画」(2023年以降の公開が決まっていない作品)から10作品を挙げたいと思います。今後日本公開が決まることを願って……。
2022年日本未公開映画ベスト10
①『Saint Omer』アリス・ディオップ
『ドライブ・マイ・カー』(濱口竜介、2021)のように現在世界各国の映画祭で快進撃を繰り広げているのが、アリス・ディオップ(1979-)の初長編劇映画「Saint Omer」です。映画批評サイトRotten Tomatoesでは高評価100%(40/40、2022年12月27日(火)現在)を記録しています。
映画はセネガル人の母親の裁判を中心に、それを傍聴する作家の視点から展開されます。彼女は生後15ヶ月の幼い娘に対する殺人罪で起訴されていますが、法廷でこう言います。「殺した理由は分からない。私も裁判を通してそれを知りたい」と。彼女は何者で、真実はどこにあるのでしょうか。フランスの小さな街サントメールで起こった実際の事件に基づく物語です。
事前にシノプシスを読んで「だいたいこういう映画かな」と予想していたことすべてが打ち砕かれました。あらゆる要素が複雑に絡み合い、単純で安易な演出はひとつもなされません。とにかく驚きました。ドキュメンタリー出身のディオップがこの作品を劇映画として作った理由も観ていくうちに分かってきます。
劇中でマルグリット・デュラス(1914-1996)が明示的に引用されますが、デュラスはこのような言葉を残しています。「最も身近な殺人、それが出産だ」と。
②『Joyland』 サイム・サディク
光が美しい! どうやったらこんな輝きを描けるのでしょう。ラホールの市場、きらびやかなナイトクラブ、ボロボロのアパートの蛍光灯、すべての光が魅力的です。
カンヌ国際映画祭でLGBTQをテーマにした優れた映画に贈られる独立賞「クィア・パルム」。2015年『キャロル』(トッド・ヘインズ)、2019年『燃ゆる女の肖像』(セリーヌ・シアマ)などが受賞してきたこの賞は、2022年「Joyland」に贈られました。
家父長制の抑圧と解放を中流家庭の末っ子・ハイダーの視点から描きます。彼が抑圧と感じている対象もけして悪ではなく、自由の象徴だと考えている対象もまた抑圧のひとつの形……という、一筋縄ではいかない物語です。カンヌの公式部門に初めて選出されたパキスタン映画です。パキスタンでは当初国内上映禁止とされていましたが、国内外からの抗議により公開が実現しました。
③『The Eternal Daughter』 ジョアンナ・ホッグ
ジョアンナ・ホッグ(1960-)!! もう本当に大好きです。英国の映画監督で一番好きです。どうやったら家族の小さなコミュニケーションをここまで美しい物語に仕立てることができるのでしょう。
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