河野裕「愛されてんだと自覚しな」#005
神戸・六甲山麓に位置するホテル・金星台山荘。
幻の古書、徒名草文通録を我が物にするべく、
人々が思惑と策略を交差させていた。
そこに突然、白いタキシードを着た男が現れ……
小束武彦の恋と彼の本日の出来事
クリスマスまで、あと半月。
白いタキシードを着た男——小束武彦は今宵、恋の成就を目指して駆け回った。
それは生半可な道ではなかった。様々な人にぶつかり、それからドアにもぶつかった。自転車を漕ぎ、自らの足で走り、階段を繰り返し上っては下った。けれど、その苦労は結実した