吉田大助│これは「アンファン・テリブル(恐るべき子どもたち)」の系譜を発展的に受け継いだミステリーなのだ
「宿命論的な人生観」を回避するためには
短いプロローグで記されるのは、「僕」が親子間のDNA鑑定の結果を今まさに目にしようとする瞬間だ。切り取られたクライマックス・シーンの一部には、こんなモノローグが書き込まれている。
〈才能とは遺伝子で決まるのか、それとも環境で決まるのか〉。正直なところ、この一文を目にした時に抱いたのは不安だった。どちらか、ではなく、どちらも、では何故いけないのか? もしもどちらかを決めるような物語であったら……という不安を推進力の一つにしながら読み進め