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【直木賞ノミネート!】麻布競馬場『令和元年の人生ゲーム』第1話無料公開 ~意識の高い慶應ビジコンサークル篇~

〈タワマン文学〉の旗手・麻布競馬場待望の第2作『令和元年の人生ゲーム』。発売直後から「他人ごととは思えない!」と悲鳴のような反響が続々と…… 4月、やる気に満ちた新入生の皆さまの応援企画として、第1話〈意識の高い慶應ビジコンサークル篇〉を期間限定で全文無料公開いたします! これを読めば5月病も怖くない……はずです。 『令和元年の人生ゲーム』 第1話 平成28年  2016年の春。徳島の公立高校を卒業し、上京して慶応義塾大学商学部に通い始めた僕は、ビジコン運営サークル「イ

発売即重版! 彼を見殺しにした男達を許さない――どんでん返しミステリ|くわがきあゆ『復讐の泥沼』インタビュー

 怒濤の展開、次から次に予想が裏切られる……そんな一冊が誕生した。くわがきあゆさんの最新刊『復讐の泥沼』(宝島社文庫)だ。くわがきさんは2022年に『レモンと殺人鬼』で第21回『このミステリーがすごい!』大賞・文庫グランプリを受賞、同作は現在30万部超のベストセラーとなり、大きな話題となった。 「いつか復讐を動機とするミステリを書いてみたいなと思っていました。私は本格ミステリよりも、どちらかというと社会派ミステリが好きなんです。笹本稜平さん、薬丸岳さん、相場英雄さん、下村敦史

ルームシェアで〝一生最強〞を目指す!自由な未来の選択肢を示した傑作――小林早代子『たぶん私たち一生最強』インタビュー

 そんな叫びから始まる『たぶん私たち一生最強』。花乃子、百合子、澪、亜希——高校時代からの女友達である4人が、ルームシェアを通じて大マジメに〝一生最強〟の人生を目指す物語だ。  著者の小林早代子さんは2015年に「くたばれ地下アイドル」で第14回「女による女のためのR―18文学賞」読者賞を受賞し同作でデビュー、本作は2作目となる。出発点は、『小説新潮』の官能小説特集に掲載された短篇「よくある話をやめよう」だった。 「海外ドラマの『フレンズ』が大好きで、友達同士で近くに住ん

朝倉かすみ×中島京子『よむよむかたる』刊行記念対談~幸福な時間が溢れだす、人生を語る読書会~

お年寄りを見てると、驚きと好奇心が止まらない中島 朝倉さんはいつ北海道に転居されたんですか? 朝倉 コロナ禍も終盤になった2022年の夏頃です。コロナ禍の最中にうちの父親が亡くなって死に目にも会えませんでした。それで、うちの母がちょっと弱っちゃったんですね。当時はまだコロナに勢いがあったので、東京にいると行き来すること自体もままならなくて。母が元気なうちにたくさん会っておきたいなと思って、東京から引っ越すことにしました。 中島 今回の『よむよむかたる』は、小樽が舞台ですよ

平均年齢85歳!老人たちの読書会で感じた〝ワンダー感〟――朝倉かすみロングインタビュー

作家の書き出し Vol.33 〈取材・構成:瀧井朝世〉 ◆個人的な思いを語る読書会があってもいい――新作『よむよむかたる』は、北海道は小樽の古民家カフェで開かれる高齢者の読書サークルのお話ですね。ものすごく楽しく読みましたが、どういう出発点だったのですか。 朝倉 編集者の方たちとお話ししている時に、うちの母親の話になったんです。母親がもう二十年くらい読書会に参加しているという話をだらだらしていたら、「それを書けばいいじゃないですか」と。 ――朝倉さんのお母さんといえば、

地底から忍び寄る怪異を〝超心理学〟で解決できるか⁉〈オモコロ〉出身作家・上條一輝さんの極上エンタメホラー『深淵のテレパス』インタビュー

 大学のオカルトサークルで行われた怪談会。そこで不気味な怪談を聞いた夜から、ある参加者の日常に怪異が忍び寄る——。 「一回きりの開催」「東雅夫・澤村伊智という豪華な二名が選考」と告知された創元ホラー長編賞。その受賞作となったのが、上條一輝さんの『深淵のテレパス』だ。著者の上條さんはなんとWebメディア〈オモコロ〉のライター(名義は加味條)。まずはどうして長編ホラー小説を書くに至ったのか、来歴を聞いてみた。 「小学校中学年ぐらいから誰に言われるともなく、ノートに小説を書いて

陽の当たる世界から弾き出された青年のひたむきな姿が胸を打つ——逢崎遊『正しき地図の裏側より』インタビュー

 定時制高校に通いながら無職の父の代わりに働く耕一郎。ある晩、彼のもとに一本の電話が入る。相手は警察で、泥酔した父が交番で保護されたという。雪の降る夜道を最悪な気持ちで交番に向かう。この日、耕一郎がバイトで貯めた8万円がなくなっていたのだ。交番からの帰り道に問い質すと、父はあっさりと自分が使ったことを認めた。そのうえ、絶対に許すことのできない衝撃的なことまで口にした。怒りが爆発した耕一郎は力任せに父を蹴り倒し、拳を振るい続け——。  第36回小説すばる新人賞受賞作『正しき地

「試されるのは、家族です」熾烈で過酷な〝小学校受験〟の世界――外山薫『君の背中に見た夢は』インタビュー

 デビュー作『息が詰まるようなこの場所で』で、東京のタワーマンションに住む人々の焦燥や葛藤を描いた外山薫さん。第二作となる最新刊『君の背中に見た夢は』で挑んだのは、いわゆる〝お受験〟——小学校受験だ。 「かつて小学校受験というと、専業主婦の世界の話という印象が強かったように思います。共働き家庭は、中学校受験が主流でした。私の家庭も共働きで子どもがいますが、小学校受験という言葉こそ知っているものの、別世界というか、自分には関係のない話だと思ってきました。しかし、数年前から、周

男子高校生のくだらなくも愛おしい会話が輝く、新感覚青春小説の誕生——金子玲介『死んだ山田と教室』インタビュー

 山田が死んだ。啓栄大学附属穂木高等学校二年E組の人気者。面白くて、誰にでも優しくて、勉強もできる。そんな山田が、飲酒運転の車に轢かれて死んでしまった。夏休みが終わり、二学期初日を迎えた教室は暗く沈んでいた。見かねた担任がロングホームルームで席替えを提案するも、とてもじゃないがそんな気分にはなれない——そこに、声が聞こえてきた。教室に設置された校内放送用のスピーカーから聞こえてきたのは、死んだ山田の声だった。  第65回メフィスト賞受賞作『死んだ山田と教室』は、男子高に通う

命を賭けて、この大乱を終わらせる――胸熱の歴史エンターテインメントが誕生|千葉ともこロングインタビュー

作家の書き出し vol.30 〈取材・構成:瀧井朝世〉 ◆唐を舞台にするから描けること——千葉さんはこれまで発表した三作品(『震雷の人』『戴天』『火輪の翼』)とも中国史を扱われていますが、中国史に関しては独学なんだそうですね。 千葉 はい。大学で中国史を専攻していたわけではなく、漢文も専門的に勉強していたわけではありません。でも好きが嵩じて、無謀でもなんでも勉強しながら書いてみようと思いきりました。 ——中国や中国史、中華物に興味を持ったきっかけは何ですか。 千葉 最

高瀬隼子×大前粟生「怖くてあたたかい小説の世界」|『め生える』『チワワ・シンドローム』を語りつくす初対談!

 大前粟生さんの『チワワ・シンドローム』を読んだ高瀬隼子さんの第一声は「待って、こわいこわいこわい」。対等なはずの友人関係に潜む「支配」を鋭く描き出した作品です。  私たちを取り巻くそのような「怖さ」を絶妙に掬い取って小説にするお二人の創作の秘密に迫ります。(司会進行=U-NEXT・寺谷栄人/撮影=松本輝一) ——お二人はちゃんとお話しされるのははじめてなんですよね。高瀬さんは愛媛から大学進学で京都に出られて、大前さんは兵庫から京都に出られて、大学時代を京都で過ごされたとい

佐野徹夜さんが辿り着いた、自分にとっての『人間失格』——『透明になれなかった僕たちのために』インタビュー

 中学時代に双子の弟・ユリオを自殺で失った大学生の樋渡アリオは、「人を殺したい欲望」を隠しながら、日々を空虚に生きていた。しかし、かつての初恋相手である深雪と再会を果たし、また容姿端麗な蒼、アリオと瓜二つの市堰とも出会うことでアリオの生活は変わり始める。  それと並行して、SNSでは現実に起きた殺人事件の〝真犯人〟だと自称するアカウント「ジョーカー」が話題になりはじめていた。そしてジョーカーが殺害の証拠としてアップロードしていた写真、そこに写っていたのは、見覚えのあるマーク

自分がどんどんワトソンと一体化して――スランプに抗い、最後に解き明かした謎とは? 森見登美彦ロングインタビュー

作家の書き出し Vol.29 〈取材・構成:瀧井朝世〉 ◆あのシャーロック・ホームズがスランプに――『シャーロック・ホームズの凱旋』、書籍化をお待ちしておりました。これはあの名探偵ホームズが、「ヴィクトリア朝京都」にいるというお話です。文芸誌『小説BOC』に連載していたものですよね。 森見 2016年に連載がスタートしたので、刊行まで7年かかったことになりますね。最初に「ヴィクトリア朝京都」という言葉を思いつき、面白くできそうだと。そこから、ヴィクトリア朝ならシャーロック

古代エジプトの密室トリックにミイラが挑む!|『このミス』大賞受賞作・白川尚史『ファラオの密室』インタビュー

「経営者としての日々を送るなかで、心のどこかにいつも〝作家への憧れ〟がありました」  スーツに身を包んだ白川尚史さんは、そう穏やかに語り始めた。東京・赤坂の高層ビル25階に位置した、近未来を思わせるガラス張りの会議室。「GALAXY」と名付けられたこの空間は、証券ビジネスを展開するマネックスグループの本社オフィスだ。白川さんは東京大学工学部を卒業後、AIベンチャー「AppReSearch(現在は「PKSHA Technology」)」を東大の先輩と共に創業し、代表取締役に就任