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《読んで楽しむ、つながる》小説好きのためのコミュニティ! 月額800円で、人気作家の作品&インタビューや対談、エッセイが読み放題。作家の素顔や創作秘話に触れられるオンラインイベン… もっと読む
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【㊗発売即重版!】ピアニスト・藤田真央さん初著作『指先から旅をする』

 ピアニスト・藤田真央さんによるエッセイ&語り下ろし連載「指先から旅をする」がこのたび本になりました。 弱冠24歳にして「世界のMAO」に 2019年、20歳で世界3大ピアノコンクールのひとつ、チャイコフスキー国際コンクールで第2位入賞。以降、世界のマエストロからラブコールを受け、数々の名門オーケストラとの共演を実現させてきた藤田さん。 現在はベルリンに拠点を移し、ヴェルビエ音楽祭、ルツェルン音楽祭といった欧州最高峰の舞台で観客を熱狂させています。 エッセイ&語り下ろし

今井真実|韓国の朝ごはんで心も身体もぽかぽかに

 娘が起きない。窓の外は花曇りの春の朝。あいにくの曇り空だけれども、時折日が差し込み、寒さは和らいでいるように見える。  かれこれ、7時30分頃から娘に声をかけて、もう9時をまわってしまった。かくいう私もうっかり二度寝をしてしまったのだけれど。    娘と初めての二人旅でやってきたのはソウル。娘は無論、私も人生初の韓国旅行だった。昨日のお昼に到着して、今朝は初めての朝ごはん。旅行中は一食たりとも無駄にしたくないから、早く朝食を食べに行きたいというのに、いっこうに娘は起きない。

命を賭けて、この大乱を終わらせる――胸熱の歴史エンターテインメントが誕生|千葉ともこロングインタビュー

作家の書き出し vol.30 〈取材・構成:瀧井朝世〉 ◆唐を舞台にするから描けること——千葉さんはこれまで発表した三作品(『震雷の人』『戴天』『火輪の翼』)とも中国史を扱われていますが、中国史に関しては独学なんだそうですね。 千葉 はい。大学で中国史を専攻していたわけではなく、漢文も専門的に勉強していたわけではありません。でも好きが嵩じて、無謀でもなんでも勉強しながら書いてみようと思いきりました。 ——中国や中国史、中華物に興味を持ったきっかけは何ですか。 千葉 最

寺地はるな・新連載スタート!「リボンちゃん」#001

第1話 商店街のスピーカーから流れてくる調子っぱずれなクリスマスソングにかぶせるように「焼き立てパンはいかがですか」という若い女の店員の甲高い声がひびきわたった。青果店の店主もパン屋に負けじと大声で「しいたけつめ放題だよ!」と客を呼びこむ。  あちらこちらにクリスマスツリーが乱立しており、アーケードの天井からは季節はずれの桜の造花がたれさがっている。色とりどりの看板やのぼり、壁にはポスター。かわいい女の子がにっこり微笑んでいるそのポスターには覚せい剤は絶対にダメである旨が書か

寺地はるな〈はじまりのことば〉

 じつを言うと、2016年ごろからずっと小説のアイデアが尽きている。2016年というと、はじめての単行本が出た翌年だ。いくらなんでも尽きるのがはやすぎる。  書きたいことなんかもうなんにもないよ! と思いながらもどうにか絞り出してきたのだが、去年あたりからめっきり体力が落ち、集中力も十五秒ぐらいしか続かなくなり……といったあんばいで、いよいよもうむりなんじゃないかと思いはじめた。  別冊文藝春秋の連載前の打ち合わせで「女性用下着の話を書きませんか(大意)」と言われた時も、反射

自意識を素直に認めよう――日テレディレクター・安島隆の愛読書

 何の気なしにグッズのスタジャンを羽織って外出するほどには、余韻がぷんぷん残っている。約2ヶ月前の2024年2月18日に開催された「オードリーのオールナイトニッポンin東京ドーム」。ドームの5万3千人に、ライブビューイング、配信で見てくれたお客さんまで合わせると計16万人。ラジオモンスターならではのモンスター級エンタメは、ニッポン放送の人気ラジオ番組がもとになったイベント。僕は現在テレビ局の局員ですが、縁あって総合演出を務めました。こんな感じのテレビと関係のない仕事が多いので

大木亜希子「マイ・ディア・キッチン」第3話 料理監修:今井真実

第三話 この街に来て、あっという間に二ヶ月半が過ぎた。  その間に季節は冬を迎え、夜の商店街ではクリスマスのイルミネーションが光輝いている。花屋や雑貨屋の軒先にはクリスマスのオーナメントが飾られ、居酒屋ひしめく一帯からはおでんの香りが漂う。そのアンバランスさを、真っ直ぐに伸びるアーケードが包み込んでいた。  もう二十時だというのに人通りは多い。どこからともなく流れる『ジングルベル』のBGMを聴きながら私は今、人々からの好奇の目に晒されていた。  天堂さんに那津さん、そして私。

三宅香帆の「フェチ小説が読みたい!」| 第1回 綿矢りさの〝アパレル小説〟

第1回 綿矢りさの〝アパレル小説〟 恋愛小説、ミステリ小説、SF小説、ホラー小説、ファンタジー小説、青春小説。この世の小説はさまざまなジャンルに分類されている。  しかし小説を読んでいると、思うのだ。もっと作者のフェチを感じるジャンル分けがあってもいいのではないか!?  小説を読んでいるとき、作者のフェティシズムが漏れ出る文章が現れると、読者としてこのうえない快楽を覚える。映像と違って文章のみで構成される小説は、同じ風景を描くにしても、どのように描写するか、どれくらい書き

衝撃のラストが待ち受ける、恋愛リアリティーショー×孤島ミステリ!|中村あき『好きです、死んでください』インタビュー

 無人島での恋愛リアリティーショーの撮影中、人気女優が殺された。しかも密室で——。 『好きです、死んでください』というインパクトのあるタイトルと、儚げな女性の装画が目を引く本書は、孤島で起きた連続殺人の謎を追うミステリ小説だ。  著者の中村あきさんは、2013年に星海社FICTIONS新人賞を受賞しデビュー。21年に『チェス喫茶フィアンケットの迷局集』で第3回双葉文庫ルーキー大賞を受賞し、本作が初の単行本となる。 「デビュー当時は、自分と同じような本格ミステリファンに刺さる

秋谷りんこ「ナースの卯月に視えるもの」 #001 #002

1 深い眠りについたとしても  夜の長期療養型病棟は、静かだ。四十床あるこの病棟は、ほとんどいつも満床だというのに。深夜二時、私は見回りをするためにナースステーションを出て、白衣の上に羽織ったカーディガンの前を合わせる。東京の桜が満開になったとニュースで見たけれど、廊下はまだひんやりしている。一緒に夜勤に入っている先輩の透子さんは休憩に行った。  足音に気を付けながら個室の冷たいドアハンドルに触れる。ゆっくり引き戸を開けると、シュコーシュコーと人工呼吸器の音だけが響いていた

今井真実|沖縄で「台湾素食」のやさしさを噛みしめる

第7回 沖縄で「台湾素食」のやさしさを噛みしめる  空港に降り立ったとたん、暑くてセーターにじっとりと汗がにじむ。12月でもやっぱりこんなに暑いんだ……東京は凍えるほど寒かったのに。トイレに駆け込み、急いでヒートテックの下着とデニムの下に穿いていたレギンスを脱いだ。ふう、さっぱり。よーしこれで良し。  脱いだ服をスーツケースに突っ込んで、がらがらと引きながら空港の外に出る。空が青い、広い。私、本当にひとりで沖縄に来ちゃったんだ。出張とはいえ、こんなことが私の人生に起こるなん

『解散ノート』に綴った本当の気持ち|モモコグミカンパニーインタビュー

――BiSH解散から約7カ月が経ちました。現在はモモコグミカンパニーさん個人として、テレビ出演をはじめ幅広くご活躍されています。 モモコグミカンパニー(以下、モモコ) 『解散ノート』を読み返してみて、「BiSHでなくなった後、私は人々にどう思われるんだろう」という恐れが滲んでいるなと思いました。実際、解散後は世間からの見られ方が厳しくなったと感じることが多いですね。これまでもBiSHというグループ、BiSHのメンバーとしての私に対して、嫌いだとか、ネガティブなことを言われる

【アーカイブ動画公開】新川帆立×秋谷りんこ〈デビュー作はこう磨け!〉公開打ち合わせ

 ※記事の下部「購読者限定エリア」にて アーカイブ動画がご覧頂けます。 ***   2023年4月25日〜7月17日に開催された日本最大級の投稿コンテスト「創作大賞2023」。 「別冊文藝春秋賞」については、特別審査員の新川帆立さんと編集部で選考し、白熱した議論ののち、「ナースの卯月に視えるもの」(秋谷りんこ)を選出致しました! ★デビュー作を世に送り出す上での極意★  受賞作「ナースの卯月に視えるもの」は、ブラッシュアップの後、電子小説誌『別冊文藝春秋』および「WE

「創作大賞2023」決定! 「別冊文藝春秋賞」は秋谷りんこさんに贈呈します

 2023年4月25日〜7月17日に開催された日本最大級の投稿コンテスト「創作大賞2023」。  エンタメ系電子小説誌『別冊文藝春秋』及び「WEB別冊文藝春秋」は、〈お仕事ミステリー小説〉に参加いたしました。  どれも読み応えのある作品ばかりで、編集部一同たいへん楽しく拝読しました!  たくさんのご応募、誠にありがとうございました。 『別冊文藝春秋』は、〈お仕事小説部門〉〈ミステリー小説部門〉の作品を拝読し、最終候補四作をセレクトしました。 ・「殺人小説の書き方」古池ね