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#読書

【㊗発売即重版!】ピアニスト・藤田真央さん初著作『指先から旅をする』

 ピアニスト・藤田真央さんによるエッセイ&語り下ろし連載「指先から旅をする」がこのたび本になりました。 弱冠24歳にして「世界のMAO」に 2019年、20歳で世界3大ピアノコンクールのひとつ、チャイコフスキー国際コンクールで第2位入賞。以降、世界のマエストロからラブコールを受け、数々の名門オーケストラとの共演を実現させてきた藤田さん。 現在はベルリンに拠点を移し、ヴェルビエ音楽祭、ルツェルン音楽祭といった欧州最高峰の舞台で観客を熱狂させています。 エッセイ&語り下ろし

苛烈な人生に翻弄される一人の男… 矢月秀作、新連載スタート!「桜虎の道」#001

プロローグ「今日もこの時間か……」  桜田は、街灯の明かりの下で腕時計に目を落とし、ため息をついた。  桜田哲が勤務する尾見司法書士事務所を出たのは、午前一時を回った頃だった。  任されていた不動産登記がなかなか仕上がらず、仕方なく残業していた。  ようやく一案件は書き終えたものの、まだ抱えている作成途中の書類は山積みだ。  まだまだ残業が続くのかと思い、再び、大きなため息がこぼれた。  鼻をずり落ちてきたメガネを指先で押し上げ、猫背でとぼとぼと夜道を歩く。  司法書士事務所

祝直木賞! 小川哲さんの新作読み切り「Butter-Fly」――初の自伝的青春小説。上京して2年がたって… 

#002 Butter-Fly  世の中には、野暮な人間がいる。  野暮な人間は「お前、野暮だな」と言われると、「野暮ってどういう意味だよ。具体的に何が悪いのか説明してくれないとわかんないよ。『野暮だ』とか『無粋だ』とか『しひて言ふもいとこちなし』だとか、曖昧な表現でなんとなくお茶を濁しやがって、源氏物語じゃあるまいし。そうやって日本人の侘び寂びみたいな伝統を利用して、説明責任を逃れようとしているだけだろ」などと反論を始める。  すると、「そういうところが野暮なんだよ」と笑

五十嵐律人、最新作! 『魔女の原罪』カバー&冒頭初公開☆

 デビュー作『法廷遊戯』の映画化も決定し(永瀬廉さん主演で2023年11月に公開予定!)、ますます話題の五十嵐律人さんの最新長篇『魔女の原罪』を4月24日に発売します!!  現役弁護士作家としてリーガルミステリーに定評のある五十嵐さんが贈る ‟特殊設定リーガルミステリー” にして、完全書き下ろしの新作『魔女の原罪』(文藝春秋刊)。  法律が絶対視される学校生活、魔女の影に怯える大人、血を抜き取られた少女の変死体…     一連の事件の真相と共に、街に隠された秘密が浮かび

初登場! 高丘哲次「殷世界転生」、読みきりでお届けします⚡

現代日本に突然現れた古代中国都市――。 零細私大のしがない研究者・栗山は、急遽政府機関に呼び出されて…… *** 一「感じる。感じるぞ、山の怒りを!」  空き家をリノベーションして作られた根岸谷町内会館に、堀江正吉八十九歳の怒声が響いた。  パイプ椅子にぽつりと座っていた柴原トミ子が、びくりと身体を震わせる。 「ああびっくりした。驚かせないでくださいよ」  半年前に心筋梗塞で緊急搬送されており、まったく洒落にならない。玄関先で肩を震わせている正吉をじろりと睨んだ。彼が着た

新人賞W受賞の大型新人が放つ救済の物語はいかに生まれたのか? ――『わたしはあなたの涙になりたい』四季大雅インタビュー

 いま一冊のライトノベルがジャンルの枠を超えて話題を呼んでいる。二〇二二年七月の刊行以来、規格外のデビュー作として絶賛の声を集め、ライトノベルでは珍しい単巻完結の作品でありながら、『このライトノベルがすごい! 2023』で並みいる人気シリーズを押しのけて〈文庫部門3位〉〈総合新作部門1位〉を獲得。本作は、巨大な欠落を抱えた少年が歩む〝再生への旅路〟を情感豊かな筆致で描いた感動作であると同時に、「物語」という形式自体を小説の内側から真摯に問い直す問題作でもある。  体が徐々に

直木賞ノミネート! 『光のとこにいてね』はこうして生まれた―― 一穂ミチロングインタビュー

◆運命に抗う少女たち——『別冊文藝春秋』で連載されていた『光のとこにいてね』がついに単行本となりました。ある団地で偶然出会った二人の七歳の少女が交流を深めたものの、突如会えなくなり、やがて意外な再会を果たし……。連載開始の際のエッセイ「はじまりのことば」で、依頼がきた時はノープランだったけど、お友達と温泉に行って……というお話を書かれていましたね。 一穂 そうなんです。たまたま友達と温泉施設に行って。そこでのんびり過ごしているうちに、こういうところに同性の恋人同士で来たら楽

発売目前! 一穂ミチ最新作『光のとこにいてね』第一章 先行無料公開

 2021年からお届けしてきた一穂ミチさんの連載『光のとこにいてね』がついに書籍化! 2022年11月7日(月)に発売になります。  連載からさらに推敲を重ね、単行本に向けて磨かれた『光のとこにいてね』の第一章をまるまるお届けします!  小瀧結珠と校倉果遠、7歳の時に運命の出会いを果たしたふたりの出会いをお楽しみください。 第一章 羽のところ○  月曜はピアノ、火曜はスイミング、木曜日は書道と英会話、金曜日はバレエ。習いごとのない水曜日は家で宿題をしてから通信教育のテキス

11月の更新予定をお知らせ! 11/3(祝)、浅倉秋成さんエッセイ講座も

■イベント情報・浅倉秋成さん、エッセイ講座生配信! 「書くをはじめてみよう」 佐賀県・嬉野温泉にある「和多屋別荘」さんが始められた面白い試み〈ライターインレジデンス〉の第1号として今週から現地に滞在しておられる浅倉秋成さん。 旅館内にある「BOOKS&TEA 三服」で11/3(木・祝)13:00から浅倉秋成さんのエッセイ講座「書くをはじめてみよう」が開催されます! せっかくなのでこちらを YouTubeライブで生配信致します。 《配信はこちらで》 URL:https:

【ある日の物語】一穂ミチ、最新長編『光のとこにいてね』の世界を知るスペシャル・ショートストーリー

 小瀧結珠と校倉果遠。 『光のとこにいてね』は、7歳の時に運命の出会いを果たした2人の、四半世紀にわたる物語を描いた物語です。  刊行に先立ち、その世界観をいち早く知ってもらうべく、一穂さんが特別な掌編を書き下ろして下さいました。  初めての出会いから8年後――。高校生になったある日、結珠と果遠に訪れた、ささやかだけれど、煌めくような一瞬をお楽しみください。 未満少女✿ 「結珠、見て見て」  四月の初め、体力測定の授業でのことだった。グラウンドの隅っこにしゃがんで他の人た

「図書館の魔女」高田大介、新連載スタート! 『エディシオン・クリティーク』#001

失われたテクストの復元に勤しむ文献学者・嵯峨野修理。 紙切れ一枚も彼の手にかかれば謎の宝箱に早変わり。 『図書館の魔女』著者が奏でる知的探索ミステリー、開幕! 第一話 ディレッタント、近世を解く 一、例により嵯峨野家訪問のこと  負け惜しみじゃあないけれど、だって仕方がないじゃない。都々逸みたいに繰り返しては、それでも別れた旦那のことを日に一度は思いだし、なんとはなしに胸が疼く。忙しくしていれば日々の営みに紛れてしまうこんな虚しい懊悩も、ひとり車を走らせる道のりがちょっと

10月の更新予定

■新連載  ・高田大介「エディシオン・クリティーク」 お待たせ致しました! 『図書館の魔女』の高田大介さんによる小説連載「エディシオン・クリティーク」が始まります。 ひとかけらの手掛かりから失われた物語を復元する、文献学者を主人公にした知的探索ミステリー。ご本人も言語学の徒である高田さんが紡ぐ、とびきり浮世離れしたディレッタントの活躍をご堪能ください。 ⇒10/13(木) 第1回公開 ■イベント情報 ・透明ランナー生配信 アート&シネマレビュー「そっと伝える」を連載

知念実希人がついに〈コロナ〉に挑む――小説「機械仕掛けの太陽」#001 無料公開スタート!

これはもはや戦争だ… 未知の脅威と闘い続ける医療現場の慟哭と苦悩を追い、 その陰で育まれたひと筋の希望をも描き出す。 現役医師・知念実希人による感動の<コロナ>小説を 3日間連続でお届けします。 ★サイン入りプルーフ本プレゼント★ 読書メーターにて、プレゼント企画も実施中! 【応募期間:8/22(月)~ 8/29(月)正午】 *** プロローグ 2019年秋〝それ〟はただ、そこにあった。  名前はなかった。意思を、意識を持たぬ〝それ〟らには必要なかった。  呼吸をせず、

愚かに生きる覚悟さえあれば――凪良ゆう、サイアクで最高の《恋》の物語

◆17歳のふたりは瀬戸内の島で出会い、恋に落ちた——新作『汝、星のごとく』、ものすごく読み応えがありました。ともに母親に振り回されながら生きている少年少女が恋に落ち、成長していく物語―という説明だけでは零れ落ちてしまうものがたくさんあるのですが、本作の出発点で、どういう思いがあったのでしょうか。 凪良 私はずっと男性同士の恋愛がメインになるジャンルで書いてきましたが、これまで男女の恋愛は書いたことがなかったんです。2017年に講談社タイガから刊行した『神さまのビオトープ』に