『オッペンハイマー』最速レビュー|クリストファー・ノーランは何に挑み、何を達成したのか【ネタバレなし】|透明ランナー
観ました、観ましたよ、『オッペンハイマー』を!!
この興奮と衝撃を一刻も早くお伝えしたいのですが、しかし日本公開日も決まっていない段階では何を書いてもネタバレになってしまいそうです。うーん難しい。でもネタバレなしでも書けることはあるはず!
『オッペンハイマー』は初見ではすべてを理解することが難しい複雑な映画なので(まあノーランですし)、前提としていくつかのことを知っておくとより深く映画を楽しむことができます。
本作は3つの時間軸がパラレルに絡み合いながら進む構成になっており、「いまどの時間軸だっけ?」という確認が必要になってきます。『インセプション』(2010)の「いま第何層だっけ?」みたいな感じです。『ダンケルク』(2017)の3つの時間軸は視覚的に分かりやすいので迷うことはありませんが、『オッペンハイマー』の3つの時間軸はそれよりかなり複雑です。
『オッペンハイマー』には実在の物理学者や政治家が多数登場しますが、ほとんど説明されずに容赦ないスピードで進むので誰が誰やら整理が追いつきません(説明なしで分かるのは誰もが顔を知っているアインシュタインくらいです)。『日本のいちばん長い日』(1967)的なテロップがあると助かるのですが。3時間(正確には3時間00分09秒)が一瞬に感じるほどすべてが高速です。
この記事ではそのようなネタバレにならない前提知識を紹介していくことにします。毎回おそるべき映像体験で私たちを驚かせ続けてきたクリストファー・ノーランは、この映画で何に挑んでいるのでしょうか。
※この記事はすでに報道されている日本語情報と史実の範囲内で書いており、特に後半の展開については一切触れないようにしています。
Screenplay
私が『オッペンハイマー』を観終わって最初に浮かんだ感想は「……脚本すごい……」でした。いつもノーランの脚本はテクニカルなのですが、風呂敷を広げて畳みきれていない作品もあったりなかったりします。しかしこの映画は違います! エクセレント! パーフェクト! 「このシーンとこのシーンはこう響き合うのか」「このシーンはこのシーンの後でなければいけなかった」といった構成の妙を十分に味わうことができます。
さらにすごいのは、技巧的なことをやってやろうというアテンプトだけでなく、なぜその技巧に挑戦しなければならなかったのかという必然性がうっすらと見えてくるところです。これは『TENET テネット』(2020)などこれまでのノーラン作品には感じたことのない新たな感覚です。
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