風景論へのノスタルジーではない眼差し――「風景論以後」展|透明ランナー
それは2023年2月1日(水)のことでした。東京都写真美術館の2023年度のラインナップが発表され、それを眺めていた私は、ある展覧会の情報に目が留まりました。
えっ、風景論?! 風景論の展覧会が、今?!
この展覧会は5月頃「風景以降(仮)」から「風景論以後」へと名前を変え、7月に展示内容の詳細が発表されました。私はあまりに楽しみすぎて、ホームページをこまめにチェックしながら始まるのをずっと待っていました。
待ち望んだ風景論の展覧会は予想を遥かに超えているものでした。1970年代の日本に存在していた「風景論」は、2020年代の日本に鮮やかに蘇っていました。この記事では「風景論」とは何か、「風景論以後」展とは何だったのかについて、私の興味のおもむくままに書いていきます。
『略称・連続射殺魔』
「風景論以後」展で最も大きなトピックは、映画『略称・連続射殺魔』(1969年、86分)が会場内で上映され、全編鑑賞できることです。どのように上映されるのかホームページでは明記されていませんが、まさかの展示室の中で全編上映されるスタイルです。ぜひあらかじめ時間を取って観ていただきたいです。まずはこの歴史的作品を紹介します。
この言葉で始まる本作は、1968年10月から11月にかけて起きた永山則夫連続射殺事件を基にしています。当時19歳の少年だった永山則夫(1949-1997)が、1か月足らずで4人を相次いで射殺した、戦後史に残る事件です。
『略称・連続射殺魔』は、永山の生い立ちから逮捕されるまでの過程を、彼が目にしたであろう風景のみによって描いたドキュメンタリー作品です。正式なタイトルは上記の言葉、「去年の秋 四つの都市で同じ拳銃を使った四つの殺人事件があった 今年の春 十九歳の少年が逮捕された 彼は連続射殺魔とよばれた」です。
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