一穂ミチ「光のとこにいてね」 #002
一日、二日と時間が経つうち、団地に行った時の記憶は、あっという間に遠くなっていった。「きょうのことは誰にも話しちゃだめよ」とママに言われたので黙っていると、団地も怖いおじさんも、果遠ちゃんという変わった女の子も、ただの夢だったのかもしれないと思うようになった。私の頭の中だけにあるものを、パン生地みたいに伸ばしたりこねたりしていると、本当のことだったのかどうかわからなくなってくる。
だから、翌週の水曜日も団地に連れて行かれた時、「また?」と怖くなると同時にちょっとほっとして