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一穂ミチ「光のとこにいてね」

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あの日、うらぶれた団地で出会った結珠と果遠。全く違う境遇にありながら、同じ孤独を抱える二人の少女は強く惹かれ合う。いま最注目の作家が問いかける家族、そして愛
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記事一覧

一穂ミチ「光のとこにいてね」 #019

雨の夜、ふいにインターホンが鳴った。 立っていたのは、果遠だった。  とても晴れた日だっ…

一穂ミチ「光のとこにいてね」 #018

直はなぜ、仲良くもない姉のところに押しかけてきたんだろう? 悩む結珠に、果遠は言った。一…

一穂ミチ「光のとこにいてね」 #017

月に一度の面談日、水人と結珠は、初めて二人で話をした。 家での果遠のこと、そして、かつて…

一穂ミチ「光のとこにいてね」 #016

スクールで子どもたちと触れ合った結珠は、心が華やぐのを感じていた。 指導員として乞われた…

一穂ミチ「光のとこにいてね」 #015

午前10時きっかりにブーケに迎えに行くと、果遠ちゃんが待っていた。 二人は沖合の、小さな島…

一穂ミチ「光のとこにいてね」 #014

パッヘルベルのカノン。 瀬々にせがまれピアノの蓋を開いた結珠は、鍵盤にそっと指を載せた。 …

一穂ミチ「光のとこにいてね」 #013

海辺の町にやってきた結珠は、瀬々という少女と出逢う。  まるで、忘れられないあの子のような女の子。 その向こうにいたのは…… 第三章 中篇 夫が帰ってきたのは、朝の五時半過ぎだった。ドアの開く音がしたけれど、二階には上がってこない。私は起き出して一階に下りた。 「おはよう、おかえりなさい」 「おはよう、ただいま。まだ寝てていいよ」 「ううん。早朝ドライブ、どうだった?」 「空いてて快適だったよ」  夜明け前から出かければそれはがらがらだろう。 「あんまり空いてても練習にな

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一穂ミチ「光のとこにいてね」 #012

 その日、最初のお客さんは岡林さんだった。声が大きくてよくしゃべる、けれど「二階で娘が寝…

一穂ミチ「光のとこにいてね」 #011

 団地の夢を見た。果遠ちゃんの住む、あの6号棟。私は十五歳で、果遠ちゃんが遠くへ行ってし…

一穂ミチ「光のとこにいてね」 #010

第三章 前篇 もしも人生をやり直すことができたとしたら、どのあたりにリスタート地点を設定…

一穂ミチ「光のとこにいてね」 #009

 わたしはきょう、生まれて初めて美人を使いこなそうとしている。バイト先には夏風邪を引いた…

一穂ミチ「光のとこにいてね」 #008

 藤野さんの授業はわかりやすかった。予備校が問題を解くテクニックに特化して、正答にたどり…

一穂ミチ「光のとこにいてね」 #007

第二章 後篇 更衣室の、明かり採りの窓から射し込む光の中で、細かい粒子が躍っているのが見…

一穂ミチ「光のとこにいてね」 #006

 四月の下旬になると、みんなが新しい環境になじみ、クラスのムードができあがってくる。行動を共にするグループもほぼ固まった中で、校倉果遠だけは孤立しているわけでもないのにいつもひとりだった。果遠ちゃんのほうから「私をこう扱ってください」みたいなマニュアルを示してくれないので、周りは様子見を続けていた。身体測定の結果、私と果遠ちゃんの身長は百五十六センチジャストでぴったり同じ、身長順に並ぶ時は出席番号が適用されて私が真後ろに並んだ。  ほかの子たちが気づいているのかどうかわからな

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