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一穂ミチ「光のとこにいてね」(*小説)

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あの日、うらぶれた団地で出会った結珠と果遠。全く違う境遇にありながら、同じ孤独を抱える二人の少女は強く惹かれ合う。いま最注目の作家が問いかける家族、そして愛
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発売目前! 一穂ミチ最新作『光のとこにいてね』第一章 先行無料公開

 2021年からお届けしてきた一穂ミチさんの連載『光のとこにいてね』がついに書籍化! 2022年…

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【ある日の物語】一穂ミチ、最新長編『光のとこにいてね』の世界を知るスペシャル・シ…

 小瀧結珠と校倉果遠。 『光のとこにいてね』は、7歳の時に運命の出会いを果たした2人の、四…

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一穂ミチ「光のとこにいてね」 はじまりのことば

「夜寝る前にちょっとずつ読んで、読み終えたら大事に手元に残しておいてもらえるような本を作…

一穂ミチ「光のとこにいてね」 #001

あの日、うらぶれた団地で出会った結珠と果遠。全く違う境遇にありながら、同じ孤独を抱える二…

一穂ミチ「光のとこにいてね」 #002

 一日、二日と時間が経つうち、団地に行った時の記憶は、あっという間に遠くなっていった。「…

一穂ミチ「光のとこにいてね」 #003

 結珠ちゃんのお母さんがやっている「ボランティア」というのが何なのか、何度団地に来ても結…

一穂ミチ「光のとこにいてね」 #004

第二章 前篇 S女の制服は、高等部になると途端にレベルが落ちる。  姿見の前で身だしなみのチェックをしながら、そんな「世間の声」を嚙みしめていた。小等部はえんじ色のブレザーと同色のプリーツスカート、中等部は白地にグレーの襟のセーラー服とグレーのプリーツスカート、どちらも制服に憧れて受験する子がいるくらいには評判がよく、私も気に入っていた。  なのに、高等部は白い丸襟のブラウスに紺色のジャンパースカートで絶妙にださい。スカート部分は膝が隠れる丈でふくらはぎが太く短く見え、丈を詰

一穂ミチ「光のとこにいてね」 #005

「結珠、何か顔白くない?」  朝の電車で亜沙子にそう言われ、私は「そう?」と頑張って笑顔…

一穂ミチ「光のとこにいてね」 #006

 四月の下旬になると、みんなが新しい環境になじみ、クラスのムードができあがってくる。行動…

一穂ミチ「光のとこにいてね」 #007

第二章 後篇 更衣室の、明かり採りの窓から射し込む光の中で、細かい粒子が躍っているのが見…

一穂ミチ「光のとこにいてね」 #008

 藤野さんの授業はわかりやすかった。予備校が問題を解くテクニックに特化して、正答にたどり…

一穂ミチ「光のとこにいてね」 #009

 わたしはきょう、生まれて初めて美人を使いこなそうとしている。バイト先には夏風邪を引いた…

一穂ミチ「光のとこにいてね」 #010

第三章 前篇 もしも人生をやり直すことができたとしたら、どのあたりにリスタート地点を設定…

一穂ミチ「光のとこにいてね」 #011

 団地の夢を見た。果遠ちゃんの住む、あの6号棟。私は十五歳で、果遠ちゃんが遠くへ行ってしまうのを知っていて、最後にもう一度会おうと訪れる。階段をじぐざぐと駆け上がり、とっくに五階についているはずなのに、上っても上っても扉がなく、煤けたような灰色の壁がのっぺりと私を拒絶する。私は息を切らせながら、とにかく急いで上にたどり着かなきゃ、と思う。早くしないと、果遠ちゃんが行っちゃう。  夢の中で、何百段上ったのかわからない。夢なのに苦しく、夢だから私の足取りは衰えなかった。外は煮詰め