今村翔吾「海を破る者」#022
「海を破って行け。全てが終われば、いつか必ず――」
元の再襲来が近づく中、六郎は令那たちと約束を交わした。
「今、申した通りだ。我らの勝ち目は薄い」
「違う」
首を小さく横に振り、令那は震える声で言葉を重ねた。
「何故……そこまで……」
してくれるのか。と、令那は問うた。
「解るだろう?」
六郎はそっと頰を緩める。
始まりは少年の時分の夢であった。海の向こう。遥か遠く。未だ見ぬ国々があり、未だ見ぬ多くの人々が暮らしているのかと思い浮かべた。
それを多くの者は馬鹿に