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今村翔吾「海を破る者」

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日本を揺るがした文明の衝突がかつてあった――その時人々は何を目撃したのか? 人間に絶望した二人の男たちの魂の彷徨を、新直木賞作家が壮大なスケールで描く歴史巨篇
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2023年6月の記事一覧

今村翔吾「海を破る者」#022

「海を破って行け。全てが終われば、いつか必ず――」 元の再襲来が近づく中、六郎は令那たちと約束を交わした。 「今、申した通りだ。我らの勝ち目は薄い」 「違う」  首を小さく横に振り、令那は震える声で言葉を重ねた。 「何故……そこまで……」  してくれるのか。と、令那は問うた。 「解るだろう?」  六郎はそっと頰を緩める。  始まりは少年の時分の夢であった。海の向こう。遥か遠く。未だ見ぬ国々があり、未だ見ぬ多くの人々が暮らしているのかと思い浮かべた。  それを多くの者は馬鹿に