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藤井太洋「オーグメンテッド・スカイ」

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2024年、鹿児島。寮で高校生活を送る僕たちは、インターネットの向こう側の世界に「ゲリラ戦」を挑むことにした。自由を獲得するために――。SF小説の旗手が挑む、最旬青春小説
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藤井太洋「オーグメンテッド・スカイ」 はじまりのことば

 iPhoneのミュージックライブラリには、絶対に起きなければいけない時に鳴らすために、…

藤井太洋「オーグメンテッド・スカイ」 #014

 スケートボードを手にした少年のアバターは、フェリーの旅客ターミナルから出ると、バス停に…

藤井太洋「オーグメンテッド・スカイ」 #013

「——ビヨンドの観戦は、消灯時刻後の活動になります。近隣の迷惑にならないよう大声で騒がな…

藤井太洋「オーグメンテッド・スカイ」 #012

 少女は旅客ターミナルから北埠頭に降り立つと、トロリーバッグの持ち手を握りしめて、市街と…

藤井太洋「オーグメンテッド・スカイ」 #011

 マモルは空のトートバッグを肩に引っ掛けて201号室を出た。学習時間の真っ最中にもかかわ…

藤井太洋「オーグメンテッド・スカイ」 #010

 少女が小舟から降り立った水晶の街には、塔が立ち並んでいた。  少女は新しい学校生活に想…

藤井太洋「オーグメンテッド・スカイ」 #009

「お客さん?」  雪田は頷いた。 「もう一人校外の人を呼んだんです。ビヨンドのことで相談したくて」 「そうなんだ。呼ぶ方が楽なの?」 「市内に出るには、面会予定表を出さなきゃいけないんですよ。相手が男子だけだとインタビューがついてくるし」  マモルは学校に赴いた方がいいと助言してくれた梓に感謝した。このハウスには、蒼空寮とは一味違う苦労がありそうだ。 「ちょうど重なるようにしたかったんだけど」  窓の向こうにいたのは、見覚えのある男子だった。くるぶしの見えるショート丈のチノパ

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藤井太洋「オーグメンテッド・スカイ」 #008

 開け放した窓から途切れ途切れにトレロカモミロが聞こえてきた。  一年生たちが校庭で体育…

藤井太洋「オーグメンテッド・スカイ」 #007

 天文館通りから鹿児島中央駅まで路面電車で八分。鹿児島中央駅から平川駅まで三十五分。そこ…

藤井太洋「オーグメンテッド・スカイ」 #006

「わあ!」  盆に乗ったかき氷に雪田と梓が目を見張る。黒いエプロンを腰に巻いた年配の女性…

藤井太洋「オーグメンテッド・スカイ」 #005

 学習室の壁を叩く小さなノックにマモルが振り返ると、廊下に一年生が立っていた。  蒼空寮…

藤井太洋「オーグメンテッド・スカイ」 #004

 クマゼミの声に包まれた平川駅のホームに降り立つと、マモルは重いバックパックを地面にそっ…

藤井太洋「オーグメンテッド・スカイ」 #003

 ビヨンドチャレンジに出るなら、手伝う。  そう言って、丸い銀縁メガネのブリッジを眉間に…

藤井太洋「オーグメンテッド・スカイ」 #002

「ランニング始めます! 蒼空うーっ」  寮長の志布井が、部屋ごとに並んだ寮生の前を駆けていくと、寮生たちが足踏みを始めた。蒼空寮の朝は、校庭を二周するランニングから幕を開ける。  桜は散り始めているが、標高150メートルの高台にある南郷高校は天気予報よりも一度か二度ほど気温が低い。午前六時、太陽はまだ錦江湾の向こうに横たわる大隅半島に隠されていて、校庭の隅にはまだ朝靄も漂っている。湾にどっしりと浮かぶ桜島の、樹木の生えていない剝き出しの裾野は青黒い夜の色に沈んでいた。  

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