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【直木賞ノミネート!】麻布競馬場『令和元年の人生ゲーム』第1話無料公開 ~意識の高い慶應ビジコンサークル篇~

〈タワマン文学〉の旗手・麻布競馬場待望の第2作『令和元年の人生ゲーム』。発売直後から「他人ごととは思えない!」と悲鳴のような反響が続々と…… 4月、やる気に満ちた新入生の皆さまの応援企画として、第1話〈意識の高い慶應ビジコンサークル篇〉を期間限定で全文無料公開いたします! これを読めば5月病も怖くない……はずです。 『令和元年の人生ゲーム』 第1話 平成28年  2016年の春。徳島の公立高校を卒業し、上京して慶応義塾大学商学部に通い始めた僕は、ビジコン運営サークル「イ

年末年始に行ける! オススメ美術展5選【2023-24年】|透明ランナー

坂本龍一トリビュート展 音楽/アート/メディア(NTT ICC) 本連載でいちばん反響の大きかった記事が、2023年4月に公開した「『現代アーティストとしての坂本龍一』を振り返る――現代アートへの接近、そして越境」でした。教授の業績を回顧する記事は多くありましたが、現代アートの側面から振り返るものはあまりなかったように思います。執筆にあたって彼の芸術活動の幅広さをあらためて認識しました。  NTT ICCで2023年12月16日(土)から開かれている「坂本龍一トリビュート展

『ゴーストワールド』から見る《ティーン映画》の系譜――22年ぶりの再公開に寄せて|透明ランナー

 《ティーン映画》というジャンルがあります。「10代の生きづらさ」というテーマはいつの時代も作品の主題となり、数多くの名作が生み出され、同世代の若者が「私たちの物語」として支持してきました。その一方で、こうしたジャンルの物語は、後から振り返ってみて「あの頃はこうだったなあ」と感じることはあるものの、時代が下るにつれ「私たちの物語」として受容されることは少なくなっていきます。  《カルト映画》という言葉があります。公開時よりも公開後に熱心なファンを獲得し、長期にわたって繰り返

風景論へのノスタルジーではない眼差し――「風景論以後」展|透明ランナー

 それは2023年2月1日(水)のことでした。東京都写真美術館の2023年度のラインナップが発表され、それを眺めていた私は、ある展覧会の情報に目が留まりました。  えっ、風景論?! 風景論の展覧会が、今?!  この展覧会は5月頃「風景以降(仮)」から「風景論以後」へと名前を変え、7月に展示内容の詳細が発表されました。私はあまりに楽しみすぎて、ホームページをこまめにチェックしながら始まるのをずっと待っていました。  待ち望んだ風景論の展覧会は予想を遥かに超えているものでし

名作だらけ!“映画”との距離が近い多幸空間――山形国際ドキュメンタリー映画祭|透明ランナー

 山形国際ドキュメンタリー映画祭(YIDFF)2023に行ってきました!  YIDFFは1989年に始まった、山形市内でドキュメンタリー映画を中心に上映する映画祭です。2年に一度開催され、2023年(10月5日(木)~12日(木))で第18回を迎えます。上映作品のクオリティもさることながら、毎回世界中から集まる豪華なゲスト、制作者と観客との距離が近い独特の雰囲気も含め、世界有数のドキュメンタリー映画祭としてその名を知られています。  私は以前からどうしてもYIDFFに行き

『テート美術館展 光 ―ターナー、印象派から現代へ』――光を描く、光で描く|透明ランナー

 国立新美術館で2023年7月12日(水)から絶賛開催中の「テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ」。英国・テート美術館[1]の所蔵品から、“光”をテーマとした作品約120点が出品されています。  開幕から2ヶ月経った9月15日(金)には入場者数が20万人を突破しました。この大人気を受け、最終週の9月25日(月)から10月1日(日)まで、開館時間が20時(通常18時)まで延長されることとなりました。夜は空いているのでおすすめです。東京・国立新美術館の会期は10月

豊田市美術館のイマジナティヴなキュレーション――「枠と波」「吹けば風」展|透明ランナー

 日本には素晴らしい美術館が全国各地に多数ありますが、その中でも企画展のたびに必ず遠征して観に行く、圧倒的信頼を置いている美術館がいくつかあります。そのひとつが愛知県・豊田市にある豊田市美術館です。美術館の建物は建築家・谷口吉生(1937-)の設計によるものです。  豊田市美術館は国内でも有数の規模の作品を所蔵しています。海外作品ではクリムトやシーレなどのウィーン分離派、シュルレアリスム、アルテ・ポーヴェラ、アーツ・アンド・クラフツ運動などなど。日本美術も日本画から現代アー

『アレックス・ダ・コルテ 新鮮な地獄』展――映像の“厚さ”とポップな地獄|透明ランナー

 来たぞ金沢!  今回のお目当ては金沢21世紀美術館で開催されている『アレックス・ダ・コルテ 新鮮な地獄』展(2023年9月18日(月・祝)まで)。ダ・コルテは1980年生まれ、フィラデルフィアを拠点とするアーティストです。2019年のヴェネツィア・ビエンナーレで脚光を浴び[1]、2021年にはコロナ禍のメトロポリタン美術館の屋上に巨大な作品を出現させて話題になりました。本展がアジアで初めての個展となります。  ダ・コルテは絵画や立体、インスタレーションも手掛けますが、本

『オッペンハイマー』最速レビュー|クリストファー・ノーランは何に挑み、何を達成したのか【ネタバレなし】|透明ランナー

 観ました、観ましたよ、『オッペンハイマー』を!!  この興奮と衝撃を一刻も早くお伝えしたいのですが、しかし日本公開日も決まっていない段階では何を書いてもネタバレになってしまいそうです。うーん難しい。でもネタバレなしでも書けることはあるはず!  『オッペンハイマー』は初見ではすべてを理解することが難しい複雑な映画なので(まあノーランですし)、前提としていくつかのことを知っておくとより深く映画を楽しむことができます。  本作は3つの時間軸がパラレルに絡み合いながら進む構成

『aftersun/アフターサン』――父と娘を映しだし、心揺さぶる特異なショット|透明ランナー

 2023年5月26日(金)に日本公開された1本の映画が、公開から1ヶ月以上経っても口コミで多くの観客を集め、「エモい」「刺さった」と評判になっています。『aftersun/アフターサン』(2022)はスコットランド出身の監督シャーロット・ウェルズ(1987-)の長編第1作で、彼女の半自伝的な物語でもあります。  11歳の夏休み、トルコのリゾート地にやってきたソフィ(フランキー・コリオ)と、離れて暮らす父カラム(ポール・メスカル)。プールやビリヤードで遊んだりする中で、ふた

世界的写真展が京都で開催中!――KYOTOGRAPHIE 注目展示7選│透明ランナー

 京都を訪れた回数を数えたら33回でしたが、そのうち13回がKYOTOGRAPHIEでした。今年もKYOTOGRAPHIEの季節がやってきました。  KYOTOGRAPHIEは例年4月から5月にかけて京都で行われる国際的な写真展です。2013年に始まり、今年で第11回を迎えます。写真を主に取り扱う国際芸術祭は、日本ではもちろん最大規模ですし、世界を見渡しても有数のものです。コロナ禍で存続の危機を迎えたこともありますが、一時的に開催時期を秋にずらしたり、クラウドファンディング

「現代アーティストとしての坂本龍一」を振り返る――現代アートへの接近、そして越境|透明ランナー

 "教授"と呼ばれたアーティストが亡くなりました。  坂本龍一(さかもと りゅういち、1952-2023)は2000年代以降、音楽家や社会運動家としての活動の一方で、大型のサウンド・インスタレーションを次々と手掛け、美術展や国際芸術祭へ精力的に参加し、現代アート界に接近していきました。  2012年に東京都現代美術館で音楽と現代アートに関する展覧会をプロデュースし、2014年には札幌国際芸術祭の初代ゲストディレクター(総合芸術監督)を務めました。2021年、北京の美術館で

下瀬美術館&広島市現代美術館――広島の新たな顔となるふたつのミュージアム|透明ランナー

 まずは写真を見てください!  2023年3月、広島にふたつの美術館がオープン/リニューアルオープンしました。  ひとつは2023年3月1日(水)に開館した下瀬美術館。広島市の建築資材メーカー・丸井産業の経営者のコレクションを展示する私立美術館です。美術館の設計を手掛けたのは、建築家の坂 茂(ばん しげる、1957-)。ひときわ目を引く色鮮やかな8つのキューブが水盤の上に並んでいます。  もうひとつは広島市現代美術館です。改修のため2020年12月から長期休館に入り、2

「VOCA展2023」――“平面”を拡張していく40歳以下のアーティストの展覧会|透明ランナー

 さあVOCA展ですよVOCA展! 3月といえば桜とVOCA展です!  VOCA展は「平面美術」の領域で国際的に通用する若い作家を支援する目的で1994年に始まり、2023年で30周年を迎える歴史ある展覧会です。全国の学芸員や研究者などの推薦委員約30~40人が、「40歳以下」の若手作家をそれぞれ推薦するという形で開催されます。こういう展覧会はなかなか珍しいです。  選出条件はふたつだけ、「平面」であること、「40歳以下」であること。「平面」の範疇であれば絵画でなくてもか