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WEB別冊文藝春秋

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2023年4月の記事一覧

世界的写真展が京都で開催中!――KYOTOGRAPHIE 注目展示7選│透明ランナー

 京都を訪れた回数を数えたら33回でしたが、そのうち13回がKYOTOGRAPHIEでした。今年もKYOTOGRAPHIEの季節がやってきました。  KYOTOGRAPHIEは例年4月から5月にかけて京都で行われる国際的な写真展です。2013年に始まり、今年で第11回を迎えます。写真を主に取り扱う国際芸術祭は、日本ではもちろん最大規模ですし、世界を見渡しても有数のものです。コロナ禍で存続の危機を迎えたこともありますが、一時的に開催時期を秋にずらしたり、クラウドファンディング

ピアニスト・藤田真央エッセイ#23〈憧れの赤絨毯――コンセルトヘボウ・デビュー〉

▼#22 バンクーバーからアムステルダムへ  そして迎えたコンセルトヘボウ・デビューの時。  20時15分、私の部屋がノックされ、エレベーターで1階(日本でいう2階)に向かい、あの階段へと続く扉の前に立った。  シャイーに「素晴らしい音楽作りをしよう」と声をかけられ、それを合図に2人のステージマネージャーが寸分違わぬタイミングで両扉をバッと開いた。  視界に飛び込んできたのは、赤い絨毯の階段と、ぎっしり詰まった満員のお客様、美しいコンセルトヘボウの会場、そして真ん中には

ピアニスト・藤田真央エッセイ#22〈バンクーバーからアムステルダムへ――コンセルトヘボウ・デビューに向けて〉

▼藤田さん連載「指先から旅をする」はこちら  2023年3月5日、私はカナダ・デビュー・リサイタルのため、バンクーバーの地を訪れた。バンクーバーは空港から街中まで車で20分、美しいビーチや壮大な雪山へも30分ほどという、コンパクトで素敵な街だ。  一つ欠点を挙げるのであれば、日本のようにクラシック音楽の為に設計されたホールがないことだろう。かつて秋山和慶先生が音楽監督を務めておられた(現在は桂冠指揮者)オーケストラ「バンクーバー交響楽団」の本拠地❝The Orpheum❞の

登録者数67万人のYouTuber・コウイチが繰り出した、読者の日常を搔き乱す『計画書』とは?

「この本には、仕掛けがある」——ものものしいコピーがおどる、漆黒の帯と表紙。まさに「ブラック」な笑いで人気を博しているユーチューバーのコウイチ氏が、初の小説を上梓した。舞台は平凡極まりない町だが、少しずつ日常が破れ、予想もつかない事件が顔をのぞかせる。 「ぬくぬくとした安全地帯に自分だけいられると思うなよ、と。登場人物はもちろん、読者も揺さぶる本にしたかったんです」  ネタバレ厳禁の話題作を生み出した、作者の”計画”をうかがった。 「生まれは北海道の田舎です。娯楽が本当にな

「創作大賞2023」に『別冊文藝春秋』も参加決定!〈お仕事ミステリー〉をお待ちしてます✨

 日本最大級の投稿コンテスト「創作大賞」第2回、開催決定! 今年は『別冊文藝春秋』も参加します!!  今回は、各出版社から「13編集部」が参加、小説から漫画原作、コミックエッセイまで部門は様々。詳細は下記サイトをご覧ください。 #創作大賞2023 募集開始 * 『別冊文藝春秋』では◆〈お仕事ミステリー小説〉を募集します!  エンタメ系電子小説誌『別冊文藝春秋』及び「WEB別冊文藝春秋」では、生き生きしたキャラクターが活躍する〈お仕事ミステリー〉を求めています。 ◆「別

ブックガイドーー民主主義を巡って〈後篇〉~各国の実態~|白石直人

前回の記事では、民主主義を巡る思想と民主化の歴史を見た。今回は、民主主義を実現させていく際に直面する問題を、日本及び世界各国の実態を見ながら考えていきたい。 ◆選挙制度はいかに機能するか  選挙制度の議論は、技術的な問題か、ともすると党利党略のための論争と見られ、疎んじられがちである。だが、どのような制度を用いるかは、民主主義がどれだけ機能するかを定める重要な要素である。砂原庸介・著『民主主義の条件――大人が学んでおきたい政治のしくみ基礎のキソ』(東洋経済新報社)は、選挙

ブックガイドーー民主主義を巡って〈前篇〉~思想と歴史~|白石直人

 ポピュリズムや権威主義化、民主主義の機能不全など、民主主義を巡る問題が、世界のあちこちで起きている。しかしそもそも、民主主義とはどういうものなのだろうか。民主主義はどうすればうまく機能するのだろうか。民主主義をよりよく理解するため、今回と次回の2回にわたり、民主主義を深く掘り下げるための本を紹介していきたい。 ◆民主主義とはいかなるものか  民主主義を考える最初の一歩としては、佐々木毅・著『民主主義という不思議な仕組み』(筑摩書房)が読みやすい一冊である。中高生向けのレ

「現代アーティストとしての坂本龍一」を振り返る――現代アートへの接近、そして越境|透明ランナー

 "教授"と呼ばれたアーティストが亡くなりました。  坂本龍一(さかもと りゅういち、1952-2023)は2000年代以降、音楽家や社会運動家としての活動の一方で、大型のサウンド・インスタレーションを次々と手掛け、美術展や国際芸術祭へ精力的に参加し、現代アート界に接近していきました。  2012年に東京都現代美術館で音楽と現代アートに関する展覧会をプロデュースし、2014年には札幌国際芸術祭の初代ゲストディレクター(総合芸術監督)を務めました。2021年、北京の美術館で

【動画公開】住野よる『恋とそれとあと全部』をカップルで読む📚【岡田蓮×みとゆな】

ベストセラー『君の膵臓をたべたい』や、 「20歳が一番読んだ小説」に選ばれた『青くて痛くて脆い』など、 若い世代から圧倒的な支持を集める作家・住野よるさん。 デビュー10作目となる最新刊『恋とそれとあと全部』は、 高校生男女の恋の行方を描いた、直球ど真ん中の恋愛小説です。 れん×ゆなカップルもキュン… 人気恋愛リアリティー番組「今日、好きになりました。」に出演された 岡田蓮さんは、本作を読んで「僕のことかと思った」とびっくり。 なんと言っても蓮さんは「今日好き」で、 『

有料
300

朝倉かすみ「よむよむかたる」#005

戦時下の暮らし、息子の事故死――読書会で語られる 老人たちの思い出が、安田のある記憶を呼び起こすのだった  五月の例会は第二金曜にひらかれた。ゴールデンウィークを考慮しての繰延で、そのことは前回終了後に郵送された「読む会通信」にでかでかと書いてあった。二重なみ線を下に引き、「注意!」「注意!」のギザギザ吹き出しで囲まれていた。 「注意!」は「読み」の区切りと各自の割り当てページ発表欄でも多用された。今回から各章を二回に分けて読んでいくのだそうである。「読み」を豊かにするため

EXILEと‟情念”――それを書くのが仕事だよ 北方謙三×橘ケンチ対談 #2

◆自分が自分でなくなることを恐れるな北方 小説って、どんな陳腐なストーリーであったとしても、人間にリアリティさえあればそれが「本当のこと」になる。要は小説って、人が立ち上がればいいんです。だから暗いものを表現したければ、一生懸命噓をついて、暗い情念にとらわれた人間を書けばいいんです。だいたい実際の人生なんて、陳腐なことばっかりなんだから。 橘 「自分が思っている自分」ではない人生を想像で書けばいいということでしょうか。 北方 人間って、自分がこうだと思っている以外の自分っ

嘘に怯んだら負け! 小説家の使命は… 北方謙三×橘ケンチ対談 #1

◆これほど過酷だとは思わなかった北方 やっと会えたな! コロナで2年ぐらい会えずにいるうちに小説を書きあげたって聞いて、「こちらのテリトリーを侵しやがったな。二度と書きたくなくなるくらい酷評しよう」と思っていたんですよ。俺が橘さんの領域を侵そうと思ったって踊れないのに、ずるいもの(笑)。 橘 そんな!(笑) そもそも僕が小説を書こうと思ったのって、北方さんと最初にお目にかかった時に「あなたは小説書いたほうがいいよ」って言ってくださったからですよ。北方さんは覚えてらっしゃらな

下瀬美術館&広島市現代美術館――広島の新たな顔となるふたつのミュージアム|透明ランナー

 まずは写真を見てください!  2023年3月、広島にふたつの美術館がオープン/リニューアルオープンしました。  ひとつは2023年3月1日(水)に開館した下瀬美術館。広島市の建築資材メーカー・丸井産業の経営者のコレクションを展示する私立美術館です。美術館の設計を手掛けたのは、建築家の坂 茂(ばん しげる、1957-)。ひときわ目を引く色鮮やかな8つのキューブが水盤の上に並んでいます。  もうひとつは広島市現代美術館です。改修のため2020年12月から長期休館に入り、2

オンラインゲームで出会った“ヒーロー”に憧れ、日々成長する息子。その頼もしい背中が、僕にこの物語を書かせた――冲方丁ロングインタビュー

▼プロゲーミングチームDeTonator代表・江尻勝さんとの対談はこちら ◆小学生の息子がゲームで出会った“ヒーロー”——新作『マイ・リトル・ヒーロー』は、交通事故で意識不明状態の中学二年生の息子から、オンラインゲーム内でメッセージを受け取った父親、朝倉暢光の物語です。執筆のきっかけはどこにあったのですか。 冲方 数年前、当時小学六年生だった息子にオンラインゲーム「フォートナイト」で、ボコボコに負かされたんです。僕は昔オンラインゲームをやりこんでいた時期がありましたし、ゲ