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2022年8月の記事一覧

ピアニスト・藤田真央#09「わたしの人生の節目には、モーツァルトが現れる」

毎月語り下ろしでお届け! 連載「指先から旅をする」 ★今後の更新予定★ #10  9月5日(月)正午 #11 9月25日(日)正午  世界デビューアルバム『モーツァルト:ピアノ・ソナタ全集』(CD5枚組)のリリース日が、今年の10月7日に決定しました。  現在は配信限定先行シングルとして《ピアノ・ソナタ第16番 ハ長調 K.545》の「第2楽章 アンダンテ」と《ピアノ・ソナタ第2番 ヘ長調 K.280》の「第2楽章 アダージオ」が公開されています。  思い起こせばモーツ

透明ランナー|ウォン・カーウァイの映画をふたりの小説家から読み解く――村上春樹、そしてマヌエル・プイグ

 香港の映画監督ウォン・カーウァイ(1958-)の作品を4Kレストアバージョンで上映する特集「WKW4K ウォン・カーウァイ 4K」が、8月19日(金)から始まりました。上映されるのは『恋する惑星』『天使の涙』『ブエノスアイレス』『花様年華』『2046』の5本。彼のキャリアを代表する作品が自らの手によりレストアされ、映画館のスクリーンで鮮やかに蘇ります。札幌から那覇まで全国約40の映画館で順次公開されます。  シネマート新宿では333席の大スクリーンがコロナ禍以降初めて満席と

知念実希人がついに〈コロナ〉に挑む――小説「機械仕掛けの太陽」#001 無料公開スタート!

これはもはや戦争だ… 未知の脅威と闘い続ける医療現場の慟哭と苦悩を追い、 その陰で育まれたひと筋の希望をも描き出す。 現役医師・知念実希人による感動の<コロナ>小説を 3日間連続でお届けします。 ★サイン入りプルーフ本プレゼント★ 読書メーターにて、プレゼント企画も実施中! 【応募期間:8/22(月)~ 8/29(月)正午】 *** プロローグ 2019年秋〝それ〟はただ、そこにあった。  名前はなかった。意思を、意識を持たぬ〝それ〟らには必要なかった。  呼吸をせず、

9月刊「文春文庫」見本到着~! プレゼントをご希望の方は…

 2022年9月1日(木)、文春文庫の最新ラインナップが刊行されます。  そのラインナップ全12作の「見本」が、ひと足お先に編集部にずらり!  印刷所から届いたばかりのこちらを抽選で各1冊、いち早くお届けします!! 9月のラインナップ『大名倒産』上下巻(浅田次郎・著) 『名乗らじ 空也十番勝負(八)』(佐伯泰英・著) 『Iの悲劇』(米澤穂信・著) 『雲を紡ぐ』(伊吹有喜・著) 『獣たちのコロシアム 池袋ウエストゲートパークⅩⅥ』(石田衣良・著) 『耳袋秘帖 南町奉行と火

透明ランナー|瀬戸内国際芸術祭2022夏会期 Vol.2【小豆島・男木島・女木島・大島・高松篇】

 前回の記事「瀬戸内国際芸術祭2022夏会期 Vol.1」に続き、今回は小豆島、男木島、女木島、大島、高松の作品を紹介します。 小豆島 2万5000人ほどが住む小豆島は、船でしか行けない(橋や空港がない)島として国内最大の人口を有し、フェリーの発着本数は日本一です。広い島内の各地に作品が点在し、事前に計画を立てないとなかなか観たい作品を回りきれないエリアでもあります。  小豆島で今回最も良かったのが、北東部の福田エリアで行われている「アジア・アート・プラットフォーム AA

愚かに生きる覚悟さえあれば――凪良ゆう、サイアクで最高の《恋》の物語

◆17歳のふたりは瀬戸内の島で出会い、恋に落ちた——新作『汝、星のごとく』、ものすごく読み応えがありました。ともに母親に振り回されながら生きている少年少女が恋に落ち、成長していく物語―という説明だけでは零れ落ちてしまうものがたくさんあるのですが、本作の出発点で、どういう思いがあったのでしょうか。 凪良 私はずっと男性同士の恋愛がメインになるジャンルで書いてきましたが、これまで男女の恋愛は書いたことがなかったんです。2017年に講談社タイガから刊行した『神さまのビオトープ』に

透明ランナー|瀬戸内国際芸術祭2022夏会期 Vol.1【直島・宇野港・豊島・犬島篇】

 3年に1度開かれる日本最大級のアートイベント、瀬戸内国際芸術祭2022 夏会期がついに始まりました! 瀬戸内海に広がる美しい島や港を舞台に、今回で5回目となるこの芸術祭。33の国・地域から184組のアーティストが参加し、彫刻、写真、映像、演劇、さまざまなジャンルの作品を楽しむことができます。  今年7月にはTIME誌の“The World's Greatest Places of 2022”で紹介されるなど、世界でも有数の規模と知名度を誇る国際芸術祭です。今回はコロナ禍で自

千葉ともこ×新川帆立│私たちはこうして作家になった――【後篇】デビューしていま思うこと

< 前篇へ ◆選考会の日は、受賞をイメージしながら待っていた新川 受賞の知らせが来た時は、本当に驚きました。選考会の日は、これはもう徳を積むしかないと思って、山に籠って写経してたんです(笑)。神奈川県の大山の、阿夫利神社で。そうしたら電波の状態が悪くて、担当編集者からの電話が取れないという事態になっちゃった。受賞祈願して写経してます、なんて話してたら切れちゃって。とにかくガチガチに緊張して、何分すべてが初めてだったので、右も左もわからないでいました。 千葉 私のほうは、

白石直人|ロシアとウクライナの歴史を紐解く

 ロシアによるウクライナ侵攻が始まった。ロシア政府の内部からは、ウクライナの主権を否定するような主張も漏れ聞こえてくる(※1)。こうした主張は現代の国際社会においては全く受け入れられるものではないが、しかしそうした発想が生じる背景を見ておくことは、ロシア政府やロシア国民の行動を理解するうえで有意義なものであろう。実際、ウクライナとロシア、その周辺を巡る歴史はなかなか複雑なものである。 ◆ロシア通史  ロシアの通史を知るための本として、ジョン・チャノン、ロバート・ハドソン・

初小説『誕生日の雨傘』刊行! 柊子(女優)×若松節朗(監督)対談――書くことが演じることに、演じることが書くことに繋がる

■「小説家」柊子の佇まいがする ――お二人は、2008年に若松監督が演出されたテレビドラマ『太陽と海の教室』の頃からのお付き合いだそうですね? 柊子 『太陽と海の教室』のオーディションでお会いした時だから、私が16歳の頃からお世話になっています。 若松 柊ちゃん――いつもそう呼んでいるんだけど、柊ちゃんとはそれからずっと付き合いが続いているよね。 柊子 監督は覚えていらっしゃるか分かりませんが、『太陽と海の教室』で私の役名「荒井奈美」をつけてくれたのは、実は監督なんで

Bar California ダイキリ/西山健太郎

第四夜 ダイキリ 「マスター、明日はよろしくな」  山口青果店の店主・ノブさんがお釣りと領収書を手渡しながら、はにかんだような笑みを浮かべた。 「ええ、楽しみにしています」と私は応じ、旬の果物とライム、レモンが入った竹編みの買い物かごを手に取った。 ◇  翌日、九州ひいては西日本随一の劇場とも称される「博多座」の前に私は立っていた。  歌舞伎、宝塚歌劇、有名歌手の座長公演……。壁面の大型サイネージに映し出される予告を眺めながら、この劇場の懐の深さにあらためて感じ入っている

透明ランナー|『異端の鳥』&『マルケータ・ラザロヴァー』――無限の想像力に酔いしれる3時間

 こんにちは。あなたの代わりに観てくる透明ランナーです。  先日このツイートが目に入った瞬間、私は嬉しくて叫び声を上げてしまいました。ヴァーツラフ・マルホウル監督の映画『異端の鳥』(2019、チェコ、スロヴァキア、ウクライナ合作)が、2022年8月5日(金)からAmazonプライムビデオ見放題となりました。私が近年観た映画の中で最も忘れがたく、強烈に心に残った作品のひとつです。  映画化不可能と言われていたポーランド出身の小説家イェジー・コシンスキ(1933-1991)の「

波木銅のシネマレビュー│映画は多数派を殺すためにある――『TITANE/チタン』について(※ネタバレあり)

 映画についての文章を、作家としての名義を使って公開することにはなんというか、いろんな意味でちょっと恐怖やためらいがある。でも、それ以上に、語りたいことがある。  今年鑑賞した映画のうち、暫定で断トツに印象深かったのが『TITANE/チタン』だ。2021年のパルム・ドールを勝ち取った本作は、過去作に『RAW~少女のめざめ~』があるジュリア・デュクルノーによるホラー映画だ。  他に例のないあらすじ、そしてゾンビーズの『シーズ・ノット・ゼア』がガンガンに鳴り響く激烈な雰囲気の予

千葉ともこ×新川帆立│私たちはこうして作家になった――【前篇】デビューへの道

後篇へ > ◆小説を書き始めたのは千葉 私が小説を書き始めたのは、大学を卒業して小説教室に入ってからです。学生時代はお芝居の脚本を書いていましたが、あくまで学生のサークル活動レベルでした。そして社会人になって、小説を書いてみたいな、と思って入ったのが山村正夫記念小説講座(以下、教室)です。そこを選んだのは、ガイドを見て。教室の出身者として宮部みゆきさんのお名前があって、大ファンでしたから、宮部さんみたいになれるかもと思ったんです(笑)。 新川 私は二十六歳の時、千葉さんと