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透明ランナーのアート&シネマレビュー

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2023年2月の記事一覧

「恵比寿映像祭2023」――映像表現の拡張可能性を問い続けるフェスティバル|透明ランナー

「恵比寿映像祭2023」――映像表現の拡張可能性を問い続けるフェスティバル|透明ランナー

 私は毎年個人的に「美術展ベスト10」を作っていますが、普通に挙げると必ずランクインしてしまうので“殿堂入り”にしている展覧会があります。そのくらい大好きなのが「恵比寿映像祭」です。

 「恵比寿映像祭」は2009年の第1回以来、毎年東京都写真美術館を中心に開催されている映像の祭典です。2023年で15回目を迎えます。展示、上映、ライヴ・パフォーマンス、トーク・セッションなど複数のイベントが行われ

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「六本木クロッシング2022展」――日本の現代アートシーンを俯瞰するシリーズ展|透明ランナー

「六本木クロッシング2022展」――日本の現代アートシーンを俯瞰するシリーズ展|透明ランナー

 ついに! 書きます! 六本木クロッシング展を!

 六本木クロッシング展は、東京・六本木の森美術館で2004年から3年に一度開催されている現代アートのグループ展です。7回目となる「六本木クロッシング2022展:往来オーライ!」(~2023年3月26日(日))では、4人のキュレーターがアーティストをそれぞれ推薦し、議論を交わしながら出展アーティストを決定していきました。今回は1940年代生まれから

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『イニシェリン島の精霊』――美しい孤島に訪れる奇妙な仲違い|透明ランナー

『イニシェリン島の精霊』――美しい孤島に訪れる奇妙な仲違い|透明ランナー

 私はあらすじが書けません。

 冒頭であらすじを紹介し、監督や俳優の略歴に触れ、感想に入るというのがよくある映画評のパターンですが、本連載はそのような流れで書いたことはありません。映画は演出、撮影、音楽、編集など多種多様な要素の積み重ねであり、ストーリーを取り出してうまくまとめるのは非常に難しいことです。あらすじを書かないのではなく書けないのです。

 たとえば前回の記事「『ピンク・クラウド』―

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『ピンク・クラウド』――未来を予言してしまった映画が描く限界状況の人間関係|透明ランナー

『ピンク・クラウド』――未来を予言してしまった映画が描く限界状況の人間関係|透明ランナー

 世界中で突如発生した正体不明のピンク色の雲、その空気を吸い込むと10秒で死に至る。人々はある瞬間を境に家から出られなくなり、突然新たな生活様式が始まる――。そんな世界を描いた映画『ピンク・クラウド』が、2023年1月27日(金)から公開となりました。
 
 映画の冒頭で「2017年に脚本が書かれ、2019年に撮影された。現実との一致は偶然である」という文言が流れます。この映画は新型コロナウイルス

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