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「六本木クロッシング2022展」――日本の現代アートシーンを俯瞰するシリーズ展|透明ランナー

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 ついに! 書きます! 六本木クロッシング展を!

 六本木クロッシング展は、東京・六本木の森美術館で2004年から3年に一度開催されている現代アートのグループ展です。7回目となる「六本木クロッシング2022展:往来オーライ!」(~2023年3月26日(日))では、4人のキュレーターがアーティストをそれぞれ推薦し、議論を交わしながら出展アーティストを決定していきました。今回は1940年代生まれから1990年代生まれまで、幅広い世代の作家22組の作品約120点が展示されています。

 私は第1回の2004年から欠かさず訪れており、いつもわくわくしながら鑑賞しています。普段そんなことはしないのですが六本木クロッシング展だけは毎回全アーティストのメモを取っており、たまに10年以上前のメモを読み返していますし、10年後もまた読み返していることでしょう。

 今回の出展アーティストはこちら!!(公式サイトより)
 大ベテランから若手まで、まさに日本の現代アートを“総覧”できる面々が並んでいます。

 文中の写真は透明ランナーによる撮影です。


AKI INOMATA

 いや~やっぱりこの人の作品はどれを観てもすごいな~とただただ感嘆するばかりです。早く次世代の奈良美智(なら よしとも、1959-)のような日本を代表するアイコンになってほしいですし、絶対にそうなると確信しています。

 まるで抽象彫刻のようなシュッとした木が館内に何本も立ち並んでいます。これらはすべてビーバーの歯が形作ったモデルです。人間以外の生物との「協働」をテーマとするAKI INOMATA(1983-)は、国内5つの動物園にいるビーバーに木材をかじってもらい、その形状を作品にすると共に、3Dデータ解析した結果をパネル展示しています。ビーバーに制作を委ねるという発想がまず好きですし、立体そのものとその分析結果を展示するという構成もクオリティが高いです。

AKI INOMATA 彫刻のつくりかた 2018-
AKI INOMATA 彫刻のつくりかた 2018-

 私が2022年に観て驚愕した作品が「ギャロップする南部馬」です。1000年以上にわたって東北地方の人々と共に暮らし、近代化の過程で絶滅した日本固有種・南部馬。その標本を手がかりに骨格を3Dプリンターで再現し、かつて走っていたであろう青森の氷原を背景に、コマ撮り映像で蘇らせた作品です。私は「作品を観て驚き、解説を読んで二度驚く」アートが好きなのですが、この作品はまさにドンピシャでした。

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