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一穂ミチ・長篇最新刊『光のとこにいてね』カバー初公開

 2021年からお届けしてきた一穂ミチさんの連載『光のとこにいてね』がついに書籍化! 2022年11月7日(月)に発売になります。

 人がひとを想う――。その美しさを最高純度に静謐、清冽な筆致で描き切った本作。その魅力を書籍という形で最大限に引き出してくれたのが、装丁家・大久保明子さんと、アーティスト・マツバラリエさんです。
 大久保明子さんは、村上春樹さんの『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』や又吉直樹さんの『火花』、瀬尾まいこさんの『そして、バトンは渡された』など、印象的な装丁のベストセラーを数々手掛けてきました。
 そんな大久保さんが、『光のとこにいてね』のカバーに、と白羽の矢を立てたのが、コルクを使ったオブジェ製作で活躍するアーティスト、マツバラリエさんの作品でした。

 単行本の担当編集者は、オブジェの写真を見た瞬間、羽の生えたこの女性像が、ふたりの主人公の静謐かつ透明感のあるイメージにピッタリで、「これをカバーに使わせてもらいたい」と即断しました。
 結珠と果遠のふたりが見せる、互いを思いやる行動、交わす言葉の一つ一つ。そのピュアで透き通った美しさ。ずっと一緒にはいられないと分かっていながら、共に過ごす一瞬の幸せが、永遠となることを祈る、その煌めき。こうした『光のとこにいてね』の世界観が、マツバラさんの作品と見事に一致しました。

マツバラさんとデザイナーの大久保さん、カメラマンの深野未季さん、担当編集者による撮影は、背景の色を変えたり、光の加減を細かく調整したりしているうちに、3時間を超えた
膨大なカットから選ばれたカバー用の写真。
写真の影は、ユーカリの枝葉によるもの。原稿を読んで撮影に臨んだカメラマン・深野さんが、「光」のイメージを表現するためにどうしても陰影をつけたいと、撮影前に花屋に立ち寄って準備していた
出来上がった書影。カメラマンがこだわった光と影に加え、箔押しと金色の帯の煌めき。
すべて、『光のとこにいてね』という美しいタイトルと物語からイメージされたもの。
ちなみに、タイトルに押された箔は、あえて部分的に箔を載せないデザイン。
こうすることで、より細やかに光を反射し、タイトルの「光」のイメージを強いものとしている

 完成した書影をご覧になった一穂さんとマツバラさんからは、こんなコメントをいただきました。

一穂ミチ
 木漏れ日や水面のまだらな光は、この世でもっとも好きな光景のひとつです。不定形に揺らぎ、溜まり、ふと目を離せばもう翳っている。その静けさと儚さを、息を詰めるほどの集中で成形してくださったのだと思いました。そしてマツバラリエさんの作品を見た瞬間に込み上げた、胸苦しいようないとおしさは忘れられません。手元に留めておけないはずの光がかたちになって物語をくるんでくれる、わたしの宝物です。
 ほんまに、ええべべ着せてもろて、感謝ですわ。

マツバラリエ
 切ないほど美しい一穂さんの小説の、装丁の作成に関わらせていただけた事、光栄でした。撮影に立ち会った時、編集者、デザイナー、カメラマン、それぞれの方がアイディアと技術とセンスを結集させ、『光のとこにいてね』という小説の予告編を制作されているようだと感じていました。
 自作の像がセットに置かれた時、私はまるでモデル事務所のマネージャーの気分で、新鮮な体験をさせて頂きました。


 小瀧結珠こたきゆず校倉果遠あぜくらかのん
 7歳の時に運命の出会いを果たしたふたりの、四半世紀にわたる物語を描いた感動作です。
 連載からさらに磨きあげられた本作を、どうぞお楽しみに。

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