藤田真央インタビュー#02 「人間の営みへの興味が、わたしの音楽の根底にある」
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藤田真央インタビュー#02 「人間の営みへの興味が、わたしの音楽の根底にある」

WEB別冊文藝春秋

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3月より本サイトにて、藤田真央さんの連載がスタート!


――演奏技量もさることながら、曲の本質の読み取りと解釈にこそ、藤田さんの音楽の真髄があるのですね。では、藤田流の楽曲理解の方法とはどんなものなのでしょうか。

 音楽をやる人間は、自分の音楽を奏でる方法において、大きくふたつのタイプに分かれるのだと思います。
 ひとつはイメージ先行型。あるイメージ、たとえばロシアの広い大地のような情景を思い浮かべて、それにぴったりの音を探り当てるように音楽をつくっていくタイプ。
 もうひとつは、楽譜・理論先行型とでも言いましょうか。楽譜からできるかぎり情報を拾って、この音はこんな音色、こうハーモニーが響くからこう弾くのがベスト、と積み上げていくタイプ。 
 わたしはどちらかといえば後者です。なので、楽譜の解釈こそが最重要事項となります。
 もちろん前提として、作曲家の人生や曲を書いたバックグラウンドは、綿密に調べます。曲に込めた作者の想いや経緯がちゃんと腑に落ちないと、解釈を進めていくことはできませんから。
 作曲家や曲のことをよく知ったうえで、そこからどうやって解釈を進めていくのか。わたしはまず、視野を最大限に広くして作品と向き合うようにしています。この曲はどういうことを表現したいのかを楽譜から読み取り、全体像が見えてきたら、じゃあこんな流れで演奏を組み立てるのがいいんじゃないかという大方針を立てる。
 それができたら、次に全体を大まかにパートに切り分け、それぞれを個別に検討していきます。たとえばソナタ形式の曲には提示部、展開部、再現部という部分があり、提示部で現れたフレーズが展開され、のちに再現されるかたちをとります。それらの各パートをどう表現して、パート同士のつながりをどのように持たせていくか考える。
 分解と分析はさらに進みます。もっと範囲を狭くして同じ作業を繰り返すのです。ソナタ形式の提示部や再現部には、第一テーマと第二テーマが含まれています。各々のテーマの響きやつながりがどうあるべきか、丁寧に読み解いていきます。
 さらには八小節単位に分けて検討し、最後には一小節ずつ見ていくところまで進む。そうして一音たりとも無駄のないように、完成させていくのです。


――曲に対する理解の深め方は、ピアニストによって違うものなのですか?

 人それぞれだと思いますよ。先に言ったふたつのタイプにもよりますし、曲への理解の深め方はピアニストの数だけやり方があって、どんなアプローチが正解ということはありません。あくまでもわたしは、楽譜をもとに細部まで解釈していく方法をとるというだけです。
 最近、たいへん音のきれいな演奏を聴きました。ただその演奏は、いかんせん起伏が足りないようにわたしには感じられた。なぜそうなるのか。
 おそらくそのピアニストは情景を思い浮かべ、そこに音を近づけていくタイプ。自分の想像した環境に身を置いて、そこに鳴る音を本人も聴いている雰囲気が感じられたから。
 そういう演奏もいいものですよ、音楽から匂いや風味まで感じられそうなところがあって。ただ、それを二十分も聴いていれば、受け取る側は美しいが代わり映えしない光景を延々と見せられているようで、すこし単調さを感じてしまうかもしれません。
 わたしとしては、もっとこう一小節・一音の単位で、この音はこういう位置づけの音だからこう響かせる、ここで前に出たから次の音はちょっと抜いてみようとか、細やかに創意を凝らしたい。そうすることによってようやく、聴く側は飽きずにずっと集中して聴くことができると思うので。そのための作業は、新しい曲に取り組むたび欠かさずしていきます。

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