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透明ランナー│映画『ドンバス』――ロシア侵攻前のウクライナで実際に起きた13の物語を見て

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 こんにちは。あなたの代わりにそっと観てくる「透明ランナー」です。
5月21日(土)に公開されたウクライナ映画『ドンバス』をご紹介します。

 ドンバスとはウクライナ東部に位置する地方で、2014年にロシアとの間で領土紛争が発生し、その後も武力衝突が繰り返されています(ドンバス戦争)。本作は2018年、今から4年前の作品ですが、2月24日(木)にロシアによるウクライナ侵攻が始まったことを受け、「緊急公開」という形で上映が決まりました。

 監督はセルゲイ・ロズニツァ。ウクライナ侵攻開始前にドンバスで何が起こっていたのか、市民の様子が生々しく描き出されています。

『ドンバス』ポスター(公式HPより)

13のエピソード

 この映画は通常の劇映画とは異なる特殊な構成をとっています。2014年から2015年にかけ、親ロシア派の占領下に置かれたドンバス地方で起きた実話が13のエピソードとして再構成され、展開されていきます。マスメディアで報道された話、SNSで拡散された話、YouTubeに投稿された動画など、大小さまざまなエピソードが盛り込まれていますが、すべて実際に起こった出来事です。

①フェイクニュース制作現場
②市議会で襲撃される市長
③不正蓄財が発覚した病院長
④検問所を通過するバス
⑤ドイツ人ジャーナリストと分離派(親ロシア派)兵士
⑥地下シェルターで暮らす人々
⑦市長に陳情する宗教団体
⑧規律違反を行い処分される兵士
⑨占領区地域警察によるSUVの接収
⑩見せしめとして晒されるウクライナ兵捕虜
⑪ノヴォロシアの結婚登録所
⑫激しい砲弾の応酬
⑬ふたたびフェイクニュース制作現場

 各エピソードはそれぞれ独立しながら互いに緩やかな関連を持ち、前エピソードの登場人物の一部が次エピソードへの橋渡しの役目を務めます。

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