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「映画の日」に観たい! 『スタッフロール』の深緑野分がおすすめする、SFX・VFX映画オールタイム・ベスト5

 12月1日は「映画の日」です。この「映画の日」は、100年以上前、明治時代に日本で初めて映画(キネトスコープ)が一般公開されたことを記念して制定されました。
 長い歴史の中で日進月歩の進化を遂げている映画産業ですが、その中で特に、視覚効果・特殊効果に焦点を当て、小説『スタッフロール』を紡いだのが、深緑野分さんです。映画を愛し、視覚効果・特殊効果という映画の〝魔法〟に人生を賭した女性クリエイター2人の奮闘を描いた本作は、直木賞候補作になるなど話題になりました。
 そんな深緑さんに、映画の歴史を感じる1日にこそぜひ観ていただきたい、視覚効果・特殊効果が印象的な映画5作品をオールタイム・ベスト形式で選んでいただきました。


■1 『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ

 特殊メイク、特殊効果、3DCG、視覚効果――これらについて知りたかったら『ロード・オブ・ザ・リング』三部作を観て、しかるのちスペシャル・エクステンデッド・エディションについている特典ソフトのメイキングを視聴すべし。それだけでめちゃくちゃ勉強になる。ちなみに音響や衣装などについても学べる。
『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズは映画史における古今東西の魔法と技術が詰まっていて、しかも新しい技術も開発している。当時の「Weta」(※Weta Digital:VFXの制作会社)はマジですごかった。今シリーズで生まれたプログラムのひとつが「Massive」で、群衆シーンで数千から数万のCGキャラクターを動かすとき、各個体に「思考」を持たせることにより、そのシチュエーションに合った動きをそれぞれが勝手に取れるようにした。このおかげで大量のエキストラを使うことなく無数の群衆を描け、ブロックバスター映画はますます進化したと思う。
 今でこそCGキャラクターは生身の人間と区別がつかない滑らかな動きを手に入れたが、それもWetaがゴラムを生み出すために、モーション・キャプチャを発展させたおかげだ。
 CGだけではない。大道具とミニチュアの中間である〝ビガチュア〟がどれほど舞台を豊かに見せてくれたか、特殊メイクがどれほど俳優たちを本物のエルフやホビットや魔法使い、ドワーフに見せてくれたか。昔ながらの遠近法(それほど身長差がない俳優を、背の低いキャラクターを遠くに、背の高いキャラクターを近くに配置し、セットを歪めることで、錯視により身長差があるように見える)を使い、デジタルだけでは伝わってこない、生身ゆえのリアルな手触りを味わわせてくれる。
 まあ、とにかく「LOTR」はすごいんである。目的のためにすべての技術を使い、融合させ、魔法を生み出した金字塔だ。映画を次のフェーズに渡した巨人の一歩。

■2 『ラビリンス 魔王の迷宮』

この世にいない生物に命が吹き込まれる尊さ。

■3 『ジュラシック・パーク』

CGがついに現実を凌駕してしまった瞬間。

■4 『オズの魔法使』

これが公開されたの1939年ですよ。すごすぎる。

■5 『スパイダーマン:スパイダーバース』

CGの「今」はここにある!!



 ちなみに、『スタッフロール』には70を超える映画タイトルが出てきていて、深緑さんの映画への愛が強く感じられます。「映画の日」に、こちらの映画愛あふれる物語も是非、お手に取ってみてはいかがでしょうか。


『スタッフロール』に登場した映画・ドラマ作品リスト

  • 『ふしぎの国のアリス』(監督:ハミルトン・S・ラスク、クライド・ジェロニミ、ウィルフレッド・ジャクソン/公開年:1951)

  • 『シンデレラ』(監督:ハミルトン・S・ラスク、クライド・ジェロニミ、ウィルフレッド・ジャクソン/公開年:1950)

  • 『ハーヴェイ』(監督:ヘンリー・コスター/公開年:1950)

  • 『雨に唄えば』(監督:ジーン・ケリー、スタンリー・ドーネン/公開年:1952)

  • 『月世界征服』(監督:アーヴィング・ピシェル/公開年:1950)

  • 『アイ・ラブ・ルーシー』(公開年:1951~)

  • 『Tales of Tomorrow』(監督:Charles S. Dubin, Don Medford, Leslie Gorall, Franklin J. Schaffner, Leonard Valenta/公開年:1951~)

  • 『オズの魔法使』(監督:ヴィクター・フレミング/公開年:1939)

  • 『原子怪獣現わる』(監督:ユージン・ルーリー/公開年:1953)

  • 『Sam and Friends』(監督:ジム・ヘンソン/公開年:1955~)

  • 『ウエスト・サイド物語』(監督:ロバート・ワイズ、ジェローム・ロビンス/公開年:1961)

  • 『アルゴ探検隊の大冒険』(監督:ドン・チャフィー/公開年:1963)

  • 『金星人地球を征服』(監督:ロジャー・コーマン/公開年:1956)

  • 『ドクトル・ジバゴ』(監督:デヴィッド・リーン/公開年:1965)

  • 『サウンド・オブ・ミュージック』(監督:ロバート・ワイズ/公開年:1965)

  • 『メリー・ポピンズ』(監督:ロバート・スティーブンソン、ハミルトン・S・ラスク/公開年:1964)

  • 『Universe』(監督:Roman Kroitor, Colin Low/公開年:1960)

  • 『スパイ大作戦』(監督:ドラマのため複数/公開年:1966〜)

  • 『2001年宇宙の旅』(監督:スタンリー・キューブリック/公開年:1968)

  • 『猿の惑星』(監督:フランクリン・J・シャフナー/公開年:1968)

  • 『ダーティハリー』(監督:ドン・シーゲル/公開年:1971)

  • 『ゴッドファーザー』(監督:フランシス・フォード・コッポラ/公開年:1972)

  • 『フレンチ・コネクション』(監督:ウィリアム・フリードキン/公開年:1971)

  • 『時計じかけのオレンジ』(監督:スタンリー・キューブリック/公開年:1971)

  • 『タワーリング・インフェルノ』(監督:ジョン・ギラーミン/公開年:1974)

  • 『悪魔のいけにえ』(監督:トビー・フーパー/公開年:1974)

  • 『ジョーズ』(監督:スティーブン・スピルバーグ/公開年:1975)

  • 『アメリカン・グラフィティ』(監督:ジョージ・ルーカス/公開年:1973)

  • 『THX-1138』(監督:ジョージ・ルーカス/公開年:1971)

  • 『エクソシスト』(監督:ウィリアム・フリードキン/公開年:1973

  • 『独裁者』(監督:チャールズ・チャップリン/公開年:1940)

  • 『スター・ウォーズ』(監督:ジョージ・ルーカス/公開年:1977)

  • 『未知との遭遇』(監督:スティーブン・スピルバーグ/公開年:1977)

  • 『エイリアン』(監督:リドリー・スコット/公開年:1979)

  • 『エイリアン2』(監督:ジェームズ・キャメロン/公開年:1986)

  • 『狼男アメリカン』(監督:ジョン・ランディス/公開年:1981)

  • 『インディ・ジョーンズ レイダース 失われたアーク《聖櫃》』(監督:スティーブン・スピルバーグ/公開年:1981)※

  • 『ブレードランナー』(監督:リドリー・スコット/公開年:1982)※

  • 『E.T.』(監督:スティーブン・スピルバーグ/公開年:1982)

  • 『ターミネーター』(監督:ジェームズ・キャメロン/公開年:1984)

  • 『ハウリング』(監督:ジョー・ダンテ/公開年:1981)

  • 『グーニーズ』(監督:リチャード・ドナー/公開年:1985)

  • 『遊星からの物体X』(監督:ジョン・カーペンター/公開年:1982)

  • 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(監督:ロバート・ゼメキス/公開年:1985)

  • 『トロン』(監督:スティーブン・リズバーガー/公開年:1982)

  • 『ラビリンス 魔王の迷宮』(監督:ジム・ヘンソン/公開年:1986)

  • 『ルクソーJr.』(監督:ジョン・ラセター/公開年:1986)

  • 『ピーター・パン』(監督:ウィルフレッド・ジャクソン、ハミルトン・S・ラスク、クライド・ジェロニミ/P・J・ホーガン/公開年:1953/2003)

  • 『トイ・ストーリー』(監督:ジョン・ラセター/公開年:1995)

  • 『ゲーム・オブ・スローンズ』(監督:デイヴィッド・ベニオフ、D・B・ワイス/公開年:2011)

  • 『ゴーストバスターズ(リブート)』(監督:ポール・フェイグ/公開年:2016)

  • 『死霊の盆踊り』(監督:A・C・スティーヴン/公開年:1965)

  • 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(監督:ジョージ・ミラー/公開年:2015)

  • 『ナッティ・プロフェッサー クランプ教授の場合』(監督:トム・シャドヤック/公開年:1996)

  • 『メン・イン・ブラック』(監督:バリー・ソネンフェルド/公開年:1997)

  • 『モンスターズ・インク』(監督:ピート・ドクター/公開年:2001)

  • 『16ブロック』(監督:リチャード・ドナー/公開年:2006)

  • 『デリカテッセン』(監督:ジャン=ピエール・ジュネ、マルク・キャロ/公開年:1991)

  • 『ドニー・ダーコ』(監督:リチャード・ケリー/公開年:2001)

  • 『シリー・シンフォニー』(監督:短編アニメシリーズのため複数/公開年:1929〜)

  • 『ジム・ヘンソンのストーリーテラー』(製作総指揮:ジム・ヘンソン/監督:話ごとにさまざま/公開年:1987~)

  • 『ジュラシック・パーク』(監督:スティーブン・スピルバーグ/公開年:1993)

  • 『マトリックス』(監督:ウォシャウスキー姉妹/公開年:1999)

  • 『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(監督:ギャレス・エドワーズ/公開年:2016)

  • 『ロード・オブ・ザ・リング』(監督:ピーター・ジャクソン/公開年:2001)

  • 『アベンジャーズ』(監督:ジョス・ウェドン/公開年:2012)

  • 『スパイダーマン:スパイダーバース』(監督:ピーター・ラムジー、 ボブ・ペルシケッティ、ロドニー・ロスマン/公開年:2018)

  • 『シン・ゴジラ』(総監督:庵野秀明、監督:樋口真嗣/公開年:2016)

  • 『レジェンド/光と闇の伝説』(監督:リドリー・スコット/公開年:1985)

  • 『ウィロー』(監督:ロン・ハワード/公開年:1988)

  • 『ドラゴンボール』(原作:鳥山明/監督:岡崎稔、西尾大介/公開年:1986~)

  • 『新世紀エヴァンゲリオン』(監督:庵野秀明/公開年:1995~)

  • 『がんばれ!ベアーズ』(監督:マイケル・リッチー/公開年:1976)

注記
① ※がついているものは、直接作中に名前が出てきていない作品です。
②『スタッフロール』に出てくる以下の二つは、深緑さんによるオリジナル作品です。
『夢を見果てて』、『説教師』

『スタッフロール』に登場したアーティストリスト

  • レイ・ハリーハウゼン

  • ジム・ヘンソン

  • ポール・ブレイズデル

  • ウォーリー・ジェントルマン

  • ダグラス・トランブル

  • ドン・トランブル(備考:ダグラス・トランブルの父親)

  • ジョン・チェンバース

  • スティーブン・スピルバーグ

  • ジョージ・ルーカス

  • スタンリー・キューブリック

  • マーティン・スコセッシ

  • ブライアン・デ・パルマ

  • スチュアート・フリーボーン

  • エドウィン・キャットマル

  • ディック・スミス(備考:特殊メイクの巨匠)

  • エリア・カザン

  • リズ・ムーア

  • ロブ・ボーティーン

  • リック・ベイカー

  • H・R・ギーガー

  • スタン・ウィンストン

  • ジョン・ラセター

  • クリストファー・ノーラン


《深緑野分さんのゆるゆる映画語り》

2022年5月2日に行った深緑さんのオンライントークショーの
アーカイブはこちらでご覧になれます。
※詳細はこちら 


《視覚効果・特殊効果のこと》

こちらでも、SFX・VFX映画についてのお話をたっぷりされています。


深緑野分(ふかみどり・のわき)
1983年神奈川県生まれ。2010年「オーブランの少女」でミステリーズ!新人賞佳作に入選。13年に入選作を表題作とした短編集でデビュー。15年刊行の『戦場のコックたち』で直木賞候補、本屋大賞ノミネート。18年刊行の『ベルリンは晴れているか』はTwitter文学賞国内編第1位、19年本屋大賞ノミネート、直木賞候補となるなど大きな話題に。20年刊行の『この本を盗む者は』でも21年本屋大賞にノミネートされた。映画を愛する2人の女性クリエイターを描いた、22年刊行の『スタッフロール』でも直木賞候補に選ばれた。

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