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【3月30日・初アルバム『DIVA YOU』リリース!】自らを"DIVA"と名乗るゆっきゅんって何者?

ファーストアルバム『DIVA YOU』の3月30日リリースを記念して、 「WEB別冊文藝春秋」でも、ゆっきゅんのインタビューを全文無料公開!

多様な女の子のロールモデルを発掘するというオーディション「ミスiD2017」で、男性初のファイナリストとして注目を浴びたゆっきゅんが、2021年5月に待望のソロ音楽プロジェクトを開始。その名も「DIVA Project」。あるがままの姿を貫き、自分の感情を卑下しない彼の姿は、ファンを惹きつけ、奮い立たせてやまない。新世代「DIVA」の、強烈なきらめきを全身に浴びるインタビュー。

「もっと面白い人に会いたい」がきっかけだった

――2014年、上京と同時にアイドル活動を始められたとお聞きしました。

 私は地方出身なので、もっと好きな映画やミュージシャン、「DIVA」に直接触れたいという気持ちで上京したんですね。そもそも東京に来たら、アーティストに限らず、すごく面白い人がいて打ちのめされる、自分じゃ駄目だと思い知らされるだろう、と思っていたんです。でも少なくとも、大学はそういう場所じゃなかった。もっと面白い人に会いたい、そのためには大学の外に出なくてはと思って、アイドル活動を始めました。

――そこでなぜ、アイドルになろうと思われたのでしょうか?

 アイドルは中学生のころから好きだったんです。アイドルという存在を好きになった最初はモーニング娘。ですね。中学2年生の時に、「泣いちゃうかも」という曲の、サビの亀井かめい絵里えりさんが可愛すぎてハマりました。それがAKB48が流行はやり始めた頃です。そのあと、いわゆるアイドル戦国時代と言われるような時期がやってきた。

 14年はそんな風にアイドルが大流行した後で、「誰でもアイドルになれる」空気があったんです。「自分はアイドルだ」と言うことでアイドルになれるような。もちろん、"誰でも"ではなくて、向き不向きはあるんですけどね。私のアイドル活動も、そんな空気の中で「私はアイドルです、ゆっきゅんです」ってTwitterで言ったことから始まった気がします。女の子たちのグループに入ることはできなかったし、だからといって、かっこいい男の子のグループに入りたいわけでもなかった。だから自分の道を行こうと決めました。

 特に最初の頃は人から貰うお仕事はほとんどありませんでした。誘ってもらってライブもしたけれど、友人に写真を撮ってもらって個展をしたり、ZINEを作ったりと、自分から発信して「現場」を作るようにしていました。やりたいことと出来ることをひとつずつ試してきたのだろうと思います。似たような人があまりいない分、「絶対にゆっきゅんに出てほしい」という依頼だけが来るのは、活動を始めた頃からの強みだと思います。

――その後、ルックスに限らず、多様な女の子のロールモデルを発掘するという講談社のオーディション「ミスiD2017」に出場して、注目を集めます。

 2年間、自分なりに活動はやってきたし、尊敬している人達にも少しずつ存在は知られてきていた。でも、これからどうしたらいいんだろう、ってその頃ちょっと悩んでいて。そんな中で「ミスiD」を受けたのは、選考委員が自分の好きな人達で、その方々の選評が読みたかったからです。歌手の大森おおもり靖子せいこさん、デザイナーのひがし佳苗かなえさん、映画監督の山戸やまと結希ゆうきさん、劇作家の根本ねもと宗子しゅうこさんがいました。

好きなことで人が元気になってくれるって最高

――そして今年5月、「DIVA ME」「片想いフラペチーノ」の2曲をリリースして、ソロ活動を開始されます。

 16年に「電影と少年CQ」という音楽ユニットの活動を始めてからも、ソロでの活動は自由に少しずつやってはいましたし、いつかソロでの音楽活動を大々的にやりたいとは思っていました。ただ、大学を卒業して大学院に進学したこともあって、ユニットと学業とソロプロジェクトはまだ同時には抱えきれないと感じていました。でも20年になって、来年はもう大学院を修了するんだって考えた時に、じゃあ、やりたかったことは恥ずかしがらずに全部やっちゃおうと。

 それまでは、自分の中で何かが熟してなかったんだと思います。何かやりたい気持ちはあっても、イメージが定まってなかった。去年の秋になって、心の準備も整った、周りにはお願いしたい人もいる、自分のやりたいことがはっきりとわかった、という状態になりました。

「DIVA ME」では、今まで折々に言ってきたことを、そのまま詰め込んで歌っています。自分のままで生きるということを、肯定して、鼓舞して、何もできない時もあるけど頑張りたいよね、と。歌詞で書いていることは本当に今までのツイートと一緒なんですが、こうやって音楽にすることで、さらに多くの人に届くんだと思って、うれしいです。

 私は、人間、それぞれやりたいように自由にやればいいと思っています。だから「DIVA ME」という曲も、「私はこういう感じで勝手にやらせてもらいます」という態度になっている気がします。誰にも頼まれていなくても、それでも大きな使命感を持って、全力で自分を奮い立たせに行く姿勢です。でも私が好きなことを表現したり理想の自分を体現したりすることで、結果的に聴いている人が元気を出してくれたり、「これでいいんだ」って思ってくれたりするのは、奇跡みたいにありがたいことだなといつも思います。

「DIVA ME」は「みんなDIVAになろう!」という曲ではないんです。全人類「DIVA」化計画ではない。この曲で歌われるような「DIVA」の精神性を少なからず持っている、あるいは、そのようにありたいと思っている人に「私ってDIVAだったんだ」と気づいてほしかったんです。「DIVA」であることを自覚して、せめてこの曲を聴いている間は心の中だけでも強く自分を信じられるような、そんな曲にしたかった。

今度は私が「DIVA」になる番

――自分自身を奮い立たせる姿が、結果として聴く人を元気にしてくれるんですね。

 そうですね。でもだからといって、「DIVA ME」を聴いているファンの方を、「悩める子羊」だと限定したい気持ちは本当にないんです。のびのびと生きている私でも、「DIVA ME DIVA ME」って自分に言い聞かせて頑張る時がある。だからきっと、誰にだって届くはずだと思っています。私もずっと音楽に助けられてきたし、今でもそうなんです。

――どんな「DIVA」の音楽を聴いてきたんでしょう。

好きな「DIVA」の名前を挙げたらきりがないですね。大森靖子さん、浜崎はまさきあゆみさん、椎名しいな林檎りんごさん、宇多田うただヒカルさん、aikoさんも、安藤あんどう裕子ゆうこさん、YUKIさん、Charaさん、Tommy february6さんも大好きです。彼女たちの音楽にずっと救われてきたので、今度は私が「DIVA」になる番かなって思っています。

 私の中で、「DIVA」や、女性歌手、歌姫が好きっていうのは、「好きな食べ物は何?」って訊かれて「白いご飯」って答えるみたいなものなんですよ。そもそも数年前まで、みんな自分と同じくらい「DIVA」が好きだと、当然のように思ってたんです。でも私の「DIVA」好きは当然ってレベルじゃなかったみたいです(笑)。

自分を飾らないアイドル

――ゆっきゅんさん自身が「DIVA Project」を心から楽しんでいることが伝わってきます。

 今までの活動で、私がずっと貫いているのが、「本当にやりたいことをやること」なんです。初めの頃は不安もありましたが、そうすることで、「私も自由に生きようと思いました」「救われました」と言ってもらえて、私が自分のままで生き続けることが、人の心を自由にすることがあるのだと、少しずつ自信が持てました。

「DIVA Project」でも、自由に選択することに対して抑圧を感じているような人を、少しでも楽にしたい、これでいいんだよなって思ってもらいたい。人の目が気になったり、着たい服を着ることにすごく抵抗があったりする方は多いですよね。今の社会では当然だと思います。でも、自分のままで生きられる道を探すのか、自分らしさを削られてでもその道でいくのか迷った時に、前者を選べたら、人生もっと楽しいんじゃないかなと思うんです。

――ゆっきゅんさんのその生き方に影響を与えた人や物はあったのでしょうか?

 家族の存在でしょうか。家を出てから、両親は私のことを否定したことがない、と気づきましたね。私は少女漫画しか読まなかったし、女の子の友達しかいなくて、ずっと歌姫のものまねをしていました。両親にとって予想外であったかもしれない私の趣味嗜好や感性について、思い返してみると、否定されたことはなかったんです。本当にありがたいことだったと感じています。

「こっちの方がDIVAだね」

――「DIVA Project」はプロジェクト名がとても印象的ですよね。

 20年10月に初めて打ち合わせをした時の資料に、すでに「DIVA Project」って書いてあるんですよ。「DIVA」という基準ができたのは自分の中でも大きな変化でした。この数カ月間、「こっちの方がDIVAだね」という基準で、色々なものを選んできました。

――ゆっきゅんさんにとっての「DIVA」とは何なのでしょうね。

 私にとっての「DIVA」は、歌や服装で規定されるものというよりは、精神性だと思っています。あくまで私にとっての「DIVA」ですが、すごく不遜で、自由で、自分自身に誇りをもっていて、わがままで自意識過剰。そして何より、頑張っているんです。「DIVA」は「自分の体よりも大きな態度で挑める勇気をくれる者」なんですよね。「DIVA」そのものになりたいっていうより、ビヨンセのつもりで出勤するとか、「心にDIVA」なんです。

「DIVA」は心の中にいる

――「心にDIVA」、ぐっとくる言葉ですね。

 だから、「DIVA」は歌手だけをさす言葉ではないんです。曲を聴いて、これは自分のことだと感じてくださった方はたくさんいると思います。どんな職業、どんな場所にも「DIVA」がいるんですよ。さらに、「DIVA」は動詞にもなるし、形容詞にもなる。「今日の格好、DIVAだな」とか、「その発言かなりDIVAだね」とか。「DIVA」はいろんな使い方ができる言葉だと思っています。

――ゆっきゅんさん以外にも、男性の「DIVA」がいる可能性もあるんですね。

 藤井ふじいたかしさんは「DIVA」だなって思いますね。無自覚なこと、自意識がないことが魅力になることもあるとは思うんですが、体のすべての部位を自覚して、セクシーな理想像を追求している人がいますよね。私はそういう人こそ「DIVA」だと感じます。例えば、西川にしかわ貴教たかのりさんとか、岡村おかむら靖幸やすゆきさん、及川おいかわ光博みつひろさんとか。これからの男性たちは、社会構造にも、そして、自分自身にも向き合わざるを得ない。そのとき、「DIVA」的な存在も増えていくのではないでしょうか。

 みんなキラキラしたらいいのに、と思っているわけではないんです。でも、キラキラしたいのに出来ないのは、社会がおかしい。そうありたい自分でいられる場所や時間が、少しずつ増やせたらいいのになと思います。「かわいい服買ったけど似合うか不安」って言われたら、私はいつも、「じゃあゆっきゅんのライブに来る時だけでいいから着てみて」って返しています。

「ゆっきゅんらしさ」はどこにある?

――ご自身を「王子様」と表現されていた時期もありましたね。

 上品で貴族っぽい、王子様みたいな存在を意識していたんです。自分の中にあるものを、わかりやすく、ポップに見せるとしたら王子様かな、と。人前に出る時には絶対にハーフパンツに白いタイツを穿いて、ふりふりのブラウスを着ていました。今の私服もそんな感じだし、王子が「DIVA」に変わった、ということではないんです。それに、今までやってきたことや当時の選択に、納得がいっていなかったわけでは全くなくて、全部並行している感覚もあるくらいです。ずっと「DIVA」だったし、王子様でもいい、みたいな。

 ただやっぱり、「DIVA」の方が「今の自分」という感じがしますね。あえて言うなら、「王子様」は見られ方を意識していたのかもしれません。自分が着たい服を着て、ありたい姿でいる時、人から見たら王子に見える、ということですね。「DIVA」はやはり精神性というか、「私がDIVAです」って言い張っている内面的な部分です。

「DIVA ME」を聴いた今までのファンの方には、驚きと納得が一緒に来ている、と言われました。「ゆっきゅんはこれがやりたかったんだ」とハッとする一方で、歌詞の内容は今まで発信してきたことと同じだと思う、と。まさにその通りだと思います。だからあの曲から私を知っていただいても、今までの私のイメージとあまり齟齬そごがないだろうと思っています。「DIVA ME」は自己紹介ソングですね。

あらゆるものに似ている表現を目指したい

――「DIVA ME」の感想で、うれしかったものや意外なものは他にありましたか?

「DIVA ME」って、聴いてくださる人によって想起してくださるアーティストさんの名前が本当にバラバラなんです。藤井隆さん、ハロー!プロジェクトやつんく♂さん、浜崎あゆみさんなどのエイベックス系の方や、海外の「DIVA」もありました。それがすごくうれしかったですね。というのも、それは私が表現としてずっと目指しているものなので。

 4、5年前、映画監督の山戸結希さんにラジオで相談したことがあるんです。「自分は好きなものがたくさんあるけれど、結局それらの影響下にある表現しかできていない気がする。そんな表現に意味があるのかと考えると、何をしたらいいのかわからなくなるんです」と。そうしたら、山戸さんはすごく丁寧に答えてくださったんです。

 山戸さんがはじめて映画を発表した時、洋邦問わず多くの映画監督の名前を挙げて「似ている」と評されて、「でも○○と××の作風が合わさったものは初めて見た」と言われたらしいんですね。そこで、「似ている」って本当は一番すごいことなんじゃないかと考えるようになったらしくて。全てに似ている芸術は、全ての人の郷愁に触れられる。だからそのジャンルの全ての先人たちに似ている芸術を目指したらいいんじゃないでしょうか、とおっしゃったんです。

 その当時の自分には、到底すぐに実現できることではなかったのですが、この言葉はずっと覚えていました。だから今回、いろんな人の名前を挙げてもらえたことで、山戸さんに言われたことの第一歩を踏み出せたような気がして、すごくうれしかったです。しかも自分が意識している方以外のお名前の方が多いくらいなんです。新しさを志向しながら、既存のいろんなものと良さが共通しているのは、芸術にとってすごく価値があることだと思います。そして、好きな人やものがたくさんあることって本当に最高だなって思います。

――ゆっきゅんさんが意識して「DIVA ME」に取り入れたものもたくさんあるのでしょうか。

 初めての曲だから、自分が好きなものを全部ぎゅっと詰め込みました。取り入れた、というのではなくて、私の心の血肉になっているあらゆるものからの影響がにじみ出ていると思います。私、最大公約数って言葉は嫌いなんです。ずっと、足せよ、かけろよって思っているんですね。これは、まさに「足してかけた」曲です。

大げさは「重大」だってこと

 歌詞についても、1行1行を見てみると、友人や、ファンの方、本で読んだ人など、いろんな人を思い浮かべて書いたなと思います。書いている時はもちろん、見たことがないものを書こうと思っていたんですけれどね。「DIVA ME」の歌詞は、加藤かとうシヅエという日本のフェミニストの本を知った時に、方向性がバチッと定まりました。作家の柚木ゆずき麻子あさこさんが教えてくれたんですけれど、加藤シヅエの本の中にこういう言葉があるんです。「あなたは大げさです。私も大げさ。だからあなたの気持ちがよくわかる。日本では、つつましいことやおとなしいことのほうを人はほめますが、大げさな人のことは、誤解されやすく非難されやすい。つまり、つつましいことよりも値打ちが下がるのが日本です。だから日本は進歩しない(加藤シヅエ・加藤タキ『加藤シヅエ 凛として生きる』大和書房)」。この言葉を読んで、「本当にその通りだな」と思いました。ずっと昔に、もうそんなことを言ってた人がいたんですよ。

 大げさっていうのは、誇張しているということじゃないんです。ある人にとって重大なことが、他の人にはそう見えないってだけのことなんですよ。でも自分にとって重大なことは、誰に何と言われようと重大なことなんです。地球や世界で起きていることと比べてちっぽけだからと、自分の苦しみを矮小わいしょうするのはやめたいですよね。もっと喜んでいいし、悲しんでいい。そういう謙遜はもういらないだろうって思います。

 私自身、忙しいと思うハードルがすごく高いんです。でも自分の感情や反応を小さく片づけたり、卑下ひげしたりって、本当に時間の無駄のような気がします。感情のハードルを下げたいし、自分に素直になるタイミングを早めたいですね。Twitterで忙しいアピールをしてもいいし、そんなことないよって誰かに言ってもらうつもりで何かを言ってもいいじゃないですか。そんなの自分の自由だよねって思います。

 以前私は、エッセイを集めて『友達の遅刻は最高』というZINEを作ったんですね。その中で『この世界の片隅に』に触れたんです。すずさんが不発弾で自分の右手を失ってしまうシーンについて、「私も彼女に『でも生きていてよかったね』と言ってしまうかも」と。ある人が辛かった経験を話してくれた時、相手を元気づけたいという気持ち故に、いいところもあったよねって、励ましてしまうことはよくあると思います。でも本当は、当人が感じていることが答えだし、悲しいこと自体がない方がずっとよかった。不幸中の幸いを、当事者以外の人が積極的に探すのは危険なことだなと感じるようになりました。まずはいったん相手の辛さを受け止めるところから始めないと間違ってしまう。

引き算のできない表現者

――ゆっきゅんさんにとって「重大」な価値観を教えてください。

 私の中で「面白いこと」は、すごく大事な基準ですね。
 私は面白いことが好きだし、面白いことしかしたくないし、面白いって言われたいんです。一番不安なのはつまらないことです。コラムなども書けたらすぐに友達に送ります。「これ本当に面白いかな?」って。

――ゆっきゅんさんが今後目指す「面白さ」とはどんなものでしょうか。

 私は過剰でキャンプなものを面白いと思うんです。だからさりげなくできない、慎ましくなんてならない、「引き算のできない表現者」として徹底的に盛って、面白いことがしたいですね。

 それから、聞いたことがない、見たことがないものってやっぱり面白い。既存の価値観だけでやっているものはつまらないですね。マーケティングだけでできているもの、方程式通りのものには、すごく牙をむいています。

 でも奇をてらいたいわけではなくて、事実が面白い。「DIVA ME」の歌詞にも書きましたが、「真実が最高」なんです。真剣に取り組んでいないものはつまらないですね。冷笑へのアンチテーゼだと思います。

「DIVA ME」は、本当に自分に起きていることを書いています。天井を見ているとか、代引きが払えないというのはただの実話(笑)。自分の気持ちをわかってほしくて書いたわけではないので、逆にこの曲がこんなに普遍性をもって届いていることが本当にうれしいです。私みたいな人はやっぱりいるんだ! と思えました。もっとたくさんの人に聴いてほしいので、今後は「わかりやすく伝える」という壁にもぶつかっていくと思うんですが、噓はつきたくないですね。

 それから、その人固有の切迫が昇華されているものって面白いですよね。切実な気持ちは泣けるバラードにだけあるものではない。「DIVA ME」も私にとっては切実な曲です。

「構想26年」は噓のない実感

――改めて、この7年間を振り返ってみていかがでしょう?

 どの部分も、かなり「DIVA Project」につながっている実感があります。やはり「電影と少年CQ」の活動で得られたものはすごく大きいですし、東京でたくさん行ったライブ、見た映画にも影響を受けています。大学や大学院で学んだこともつながっていますね。歴史に敬意を払い、きちんと研究する姿勢が身につきました。何かを発表する時には、絶対に先人がいるから、その人の仕事を見ておくべきだなって。「DIVA ME」を初披露したとき「全てがこれにつながっていたんだ」と全身で感じて、構想26年かかったプロジェクトなんだって本当に思いました。
 全部つながっているとも思うし、やっと始まった気もします。

――最後に、今後の展望をお聞かせください。

「DIVA Project」は私がなけなしにもほどがあるような貯金で、なんとかやっているだけのプロジェクトなんですね。だから活動を継続させていくために、お金をちゃんと稼いでいきたいです。「DIVA ME」のMVはどうにか安っぽくならないように工夫して撮ったんですが、もっと予算がある状態で撮ってみたいですし(笑)。それから、ミニアルバムを制作中です。  
 この活動でやりたいことは思いつくだけでも100個はあるので、ひとつひとつ満を持してやっていきたいです。でも何より、「自分のままで個人として生きることを楽しく面白く肯定して鼓舞していく」というコアを忘れず、私のやり方で届けることが出来るいちばん遠くの人のところまで、必ず届けたいですね。ずっとゆっきゅんに出会いたかったと思ってくれている人が、まだまだいるはずなんです。だから、頑張ります。

撮影:平松市聖
取材・構成:編集部

ゆっきゅん
1995年、岡山県生まれ。青山学院大学大学院文学研究科比較芸術学専攻修了。2014年、上京と共にアイドル活動を開始。16年、オーディション・プロジェクト「ミスiD2017」で男性として初のファイナリストとなった。同16年より、映画の架空のサウンドトラックを歌うというコンセプトの男女デュオ「電影と少年CQ」としての活動を開始。
21年、誕生日の5月26日にセルフプロデュースのソロ活動「DIVA Project」を開始。5月30日に「DIVA ME」「片想いフラペチーノ」の2曲を自主レーベルGUILTY KYUN RECORDSからリリース。22年3月30日には、ファーストアルバム『DIVA YOU』がリリースされた。
水野しずと共にカルチャー雑誌『imaginary』編集長を務めるほか、個人でも映画やJ-POPの歌姫にまつわる執筆、演技、トークなど活動の幅を広げている。


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