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今村翔吾「海を破る者」

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日本を揺るがした文明の衝突がかつてあった――その時人々は何を目撃したのか? 人間に絶望した二人の男たちの魂の彷徨を、新直木賞作家が壮大なスケールで描く歴史巨篇
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2024年2月の記事一覧

今村翔吾「海を破る者」#025

六郎たち日ノ本軍は、圧倒的な兵力を誇る蒙古軍と睨み合いに。 ――その時、船をも呑み込む暴風雨が吹き荒れた。  日ノ本軍の奇襲は成功に終わった。どの船からも火矢を徹底的に浴びせ、多くの蒙古船を焼き払った。正確な数こそ不明であるが、その数は三十を優に超すであろう。半焼のものも含めれば百にも迫るほどである。  日ノ本軍は当初から敵船団の前で舵を切り、一撃を与えるのが目的であった。当然だが船というものは舳先より、側面を敵に向けたほうが、より多くが一斉に攻撃することが出来る。そうして