今村翔吾「海を破る者」#024
見渡す限りの蒙古軍が海を埋め尽くしている。
これが最後の戦――六郎たちは決死の覚悟を新たにした。
江南軍の船が迫って来た。季長は素早く矢を番えて弓を引き絞る。
「大将を射抜いてやるわ」
季長の弓は並のものより弦を強く張っており、射程が長い。矢は見事に頭に命中したものの、兜に弾かれて宙を舞い、海へと落ちていった。季長は大袈裟な舌打ちを見舞い、
「固い兜じゃ」
と、はき捨てた。
蒙古軍の兜は、日ノ本のものとは大きく異なる。人が被る兜は重さに限界があるため、鉄の厚さはさほ