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#映画

【㊗発売即重版!】ピアニスト・藤田真央さん初著作『指先から旅をする』

 ピアニスト・藤田真央さんによるエッセイ&語り下ろし連載「指先から旅をする」がこのたび本になりました。 弱冠24歳にして「世界のMAO」に 2019年、20歳で世界3大ピアノコンクールのひとつ、チャイコフスキー国際コンクールで第2位入賞。以降、世界のマエストロからラブコールを受け、数々の名門オーケストラとの共演を実現させてきた藤田さん。 現在はベルリンに拠点を移し、ヴェルビエ音楽祭、ルツェルン音楽祭といった欧州最高峰の舞台で観客を熱狂させています。 エッセイ&語り下ろし

前川ほまれ|一緒に映画を観たい人

 私は元々、趣味が少ない。強いて挙げるとするなら、映画鑑賞だろうか。特に好きな映画のジャンルはないので、いつも直感で観る作品を選んでいる。  小説の執筆においても、映画鑑賞後に新作のイメージが閃くことが多々あった。たとえば私の既刊『セゾン・サンカンシオン』は、ジェームズ・マンゴールド監督の『17歳のカルテ』に強く影響を受けている。それに、作家として活動するようになってから、映画は心理的な避難場所としても機能していた。執筆がどうしても行き詰まった時は、一旦全てを投げ出して映画の

『ゴーストワールド』から見る《ティーン映画》の系譜――22年ぶりの再公開に寄せて|透明ランナー

 《ティーン映画》というジャンルがあります。「10代の生きづらさ」というテーマはいつの時代も作品の主題となり、数多くの名作が生み出され、同世代の若者が「私たちの物語」として支持してきました。その一方で、こうしたジャンルの物語は、後から振り返ってみて「あの頃はこうだったなあ」と感じることはあるものの、時代が下るにつれ「私たちの物語」として受容されることは少なくなっていきます。  《カルト映画》という言葉があります。公開時よりも公開後に熱心なファンを獲得し、長期にわたって繰り返

『オッペンハイマー』最速レビュー|クリストファー・ノーランは何に挑み、何を達成したのか【ネタバレなし】|透明ランナー

 観ました、観ましたよ、『オッペンハイマー』を!!  この興奮と衝撃を一刻も早くお伝えしたいのですが、しかし日本公開日も決まっていない段階では何を書いてもネタバレになってしまいそうです。うーん難しい。でもネタバレなしでも書けることはあるはず!  『オッペンハイマー』は初見ではすべてを理解することが難しい複雑な映画なので(まあノーランですし)、前提としていくつかのことを知っておくとより深く映画を楽しむことができます。  本作は3つの時間軸がパラレルに絡み合いながら進む構成

『aftersun/アフターサン』――父と娘を映しだし、心揺さぶる特異なショット|透明ランナー

 2023年5月26日(金)に日本公開された1本の映画が、公開から1ヶ月以上経っても口コミで多くの観客を集め、「エモい」「刺さった」と評判になっています。『aftersun/アフターサン』(2022)はスコットランド出身の監督シャーロット・ウェルズ(1987-)の長編第1作で、彼女の半自伝的な物語でもあります。  11歳の夏休み、トルコのリゾート地にやってきたソフィ(フランキー・コリオ)と、離れて暮らす父カラム(ポール・メスカル)。プールやビリヤードで遊んだりする中で、ふた

日本未公開映画を観る11の方法――アカデミー賞授賞式を100倍楽しむために|透明ランナー

 いよいよ日本時間2023年3月13日(月)、第95回アカデミー賞授賞式が開催されます。全世界の映画ファンが楽しみにしている年に一度の祭典、いやが上にもボルテージが高まってきているところです。  最初はアカデミー賞の受賞予想記事でも書こうかな……と思っていたのですが、私の予想を見ても仕方ないですし、当たったところで何かあるわけでもありません。というわけでもっと読者の皆様に役立つ記事を書こうと思います。  日本の映画ファンが毎年この時期に必ず思うこと、それは……「授賞式まで

『別れる決心』――パク・チャヌクに流れる“猥雑さ”の源流をたどる|透明ランナー

 パク・チャヌク(1963-)の6年ぶりの新作長編映画、『別れる決心』がついに公開されました。  私はパク・チャヌクの「猥雑さ」が大好きです。脚本も撮影も到底想像の及ばない超絶技巧を駆使し、綱渡りのようにギリギリのタイミングでつなぎ合わせながら、奇跡的に1本の映画として結実しています。『別れる決心』も、一見クライムサスペンス映画のようでありながら、ラブロマンス映画でもあり、アクション映画でもあり、コメディの要素も忘れず、いやそのどれでもなく……。ジャンルにくくることが不可能

『イニシェリン島の精霊』――美しい孤島に訪れる奇妙な仲違い|透明ランナー

 私はあらすじが書けません。  冒頭であらすじを紹介し、監督や俳優の略歴に触れ、感想に入るというのがよくある映画評のパターンですが、本連載はそのような流れで書いたことはありません。映画は演出、撮影、音楽、編集など多種多様な要素の積み重ねであり、ストーリーを取り出してうまくまとめるのは非常に難しいことです。あらすじを書かないのではなく書けないのです。  たとえば前回の記事「『ピンク・クラウド』――未来を予言してしまった映画が描く限界状況の人間関係」ではあらすじっぽい部分は7

『ピンク・クラウド』――未来を予言してしまった映画が描く限界状況の人間関係|透明ランナー

 世界中で突如発生した正体不明のピンク色の雲、その空気を吸い込むと10秒で死に至る。人々はある瞬間を境に家から出られなくなり、突然新たな生活様式が始まる――。そんな世界を描いた映画『ピンク・クラウド』が、2023年1月27日(金)から公開となりました。    映画の冒頭で「2017年に脚本が書かれ、2019年に撮影された。現実との一致は偶然である」という文言が流れます。この映画は新型コロナウイルスのパンデミックの前に構想された物語なのです。2021年1月のサンダンス映画祭でワ

マルチバースカンフー映画からパルム・ドール受賞作まで…今年映画館で見たい作品10選!|透明ランナー

 こんにちは。あなたの代わりに観てくる透明ランナーです。  2022年6月に始まった本連載「透明ランナーのアート&シネマレビュー」では、映画と美術展のレビューをこれまで34本お届けしてきました。読んでくださった皆様のおかげでここまで続けることができました。2023年もよろしくお願いします。  2022年の映画の振り返りとして、「2022年日本公開映画ベスト10」&「2022年日本未公開映画ベスト10」という記事を書きました。2023年も楽しみな映画が目白押しです。  この記

【2022年日本劇場未公開映画ベスト10】 ――日本公開が待ち遠しい10の作品|透明ランナー

 2022年もさまざまな映画がスクリーンを賑わせましたが、劇場公開されなかった映画にも数多くの傑作がありました。昨日公開した「2022年日本公開映画ベスト10」に続き、この記事では私が2022年に映画祭や英語版配信で観た「日本未公開映画」(2023年以降の公開が決まっていない作品)から10作品を挙げたいと思います。今後日本公開が決まることを願って……。 2022年日本未公開映画ベスト10①『Saint Omer』アリス・ディオップ  『ドライブ・マイ・カー』(濱口竜介、2

【 #2022年日本公開映画ベスト10! 】――「今まで語られなかった物語」が語られた一年|透明ランナー

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『あのこと』――映画史に刻まれる衝撃的な映像体験|透明ランナー

 2021年9月のヴェネツィア国際映画祭。パブロ・ラライン『スペンサー ダイアナの決意』やジェーン・カンピオン『パワー・オブ・ザ・ドッグ』といった有力作が争う中、さほど有名でない監督の作品が審査員の満場一致で金獅子賞に選ばれたという結果は驚きをもって伝えられました。オードレイ・ディヴァン(1980-)の長編2作目『あのこと』です。  舞台は1960年代のフランス。大学の寮に暮らす文学部生のアンヌは教師になる夢を持つ成績優秀な学生でしたが、ある日予期せぬ妊娠が発覚します。出産

「映画の日」に観たい! 『スタッフロール』の深緑野分がおすすめする、SFX・VFX映画オールタイム・ベスト5

 12月1日は「映画の日」です。この「映画の日」は、100年以上前、明治時代に日本で初めて映画(キネトスコープ)が一般公開されたことを記念して制定されました。  長い歴史の中で日進月歩の進化を遂げている映画産業ですが、その中で特に、視覚効果・特殊効果に焦点を当て、小説『スタッフロール』を紡いだのが、深緑野分さんです。映画を愛し、視覚効果・特殊効果という映画の〝魔法〟に人生を賭した女性クリエイター2人の奮闘を描いた本作は、直木賞候補作になるなど話題になりました。  そんな深緑さ