ピアニスト・藤田真央エッセイ #29〈フランスの修道院の響き――ショパン・ポロネーズ全曲プログラム〉
6月に入るとようやくベルリンの気温も上昇し、練習をしていると汗ばむ気候になった。マレク・ヤノフスキとの素晴らしいコンサートを終えて、私は次の公演に向けて練習に励んでいた。6月9日にフランスのトゥールで行われる、久しぶりのリサイタルだ。
ここ最近協奏曲の公演が続いていたため、1人で2時間のプログラムに向き合う厳しさを忘れかけていた。協奏曲の場合は、曲の最初の一音から集中し、オーケストラと自分の音のバランスを常に考え、その都度最適な音を見抜かなくてはならないところに難しさがあ