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WEB別冊文藝春秋

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2022年10月の記事一覧

波木銅のゲームレビュー|ジュブナイルとしての選択と結果 インディゲーム『OMORI』

人生は夜間飛行 第2回[シネマレビュー]へ ***  もっとも好きな短篇小説は、SF作家テッド・チャンの「不安は自由のめまい」(『息吹』所収)だ。  自分が人生でしてきたあらゆる選択における、「あの時こっちを選んでいたら?」という空想、それを実際に見ることができる『プリズム』というマシンをめぐる話だ。プリズムで実際の現実を変えることはできない。あくまで「もしも」のパラレルワールドを少し覗けるだけで、ゲームのようにコンティニューしてやりなおす、といったことは叶わない。それで

11月の更新予定をお知らせ! 11/3(祝)、浅倉秋成さんエッセイ講座も

■イベント情報・浅倉秋成さん、エッセイ講座生配信! 「書くをはじめてみよう」 佐賀県・嬉野温泉にある「和多屋別荘」さんが始められた面白い試み〈ライターインレジデンス〉の第1号として今週から現地に滞在しておられる浅倉秋成さん。 旅館内にある「BOOKS&TEA 三服」で11/3(木・祝)13:00から浅倉秋成さんのエッセイ講座「書くをはじめてみよう」が開催されます! せっかくなのでこちらを YouTubeライブで生配信致します。 《配信はこちらで》 URL:https:

お題企画 #2000字のホラー、「WEB別冊文藝春秋賞」発表!

 2022年8月23日から9月30日にかけて実施しました、note×「WEB別冊文藝春秋」のコラボレーションお題企画「#2000字のホラー」。  実に1,847件もの投稿をいただきました。ご投稿下さったみなさま、ありがとうございました!!  どれもさまざまな「怖さ」の詰まった作品でしたが、その中でも編集部一同がこれは! と思ったものに「WEB別冊文藝春秋賞」をお贈りいたします。 ◆WEB別冊文藝春秋賞◆1.和來花果さん「雨の日の怪談」 ・編集部コメント 誰もが思わずドキッ

透明ランナー|『スペンサー ダイアナの決意』――天才たちが映画に仕掛けた美しい魔法

▼ 透明ランナーによるイベントはこちら ◎ 【11/30までアーカイブ動画公開中】 ローカル芸術祭・徹底ガイド|透明ランナー ◎ ドラフト2022 最速レビュー!by透明ランナー  36歳の若さでの事故死から四半世紀経ってもなお色褪せない人気を誇るダイアナ妃。彼女を描いた映画『スペンサー ダイアナの決意』が全国で公開されています。  舞台は1991年のクリスマス・イヴ。英国ロイヤルファミリーの人々はエリザベス女王の私邸に集まるのがならわしで、ダイアナもひとり車を走らせて

11月刊「文春文庫」見本到着!! プレゼントご希望の方、ご応募お待ちしております

 2022年11月8日(火)、文春文庫の最新ラインナップが刊行されます。  そのラインナップ全15作の「見本」が、ひと足お先に編集部にずらり!  印刷所から届いたばかりのこちらを抽選で各1名様に、いち早くお届けします! 11月のラインナップ『猫を棄てる 父親について語るとき』(村上春樹・著/高妍・絵) 『十字架のカルテ』(知念実希人・著) 『満月珈琲店の星詠み~メタモルフォーゼの調べ~』(望月麻衣・著/桜田千尋・画) 『罪人の選択』(貴志祐介・著) 『神と王 謀りの玉座』(

【ある日の物語】一穂ミチ、最新長編『光のとこにいてね』の世界を知るスペシャル・ショートストーリー

 小瀧結珠と校倉果遠。 『光のとこにいてね』は、7歳の時に運命の出会いを果たした2人の、四半世紀にわたる物語を描いた物語です。  刊行に先立ち、その世界観をいち早く知ってもらうべく、一穂さんが特別な掌編を書き下ろして下さいました。  初めての出会いから8年後――。高校生になったある日、結珠と果遠に訪れた、ささやかだけれど、煌めくような一瞬をお楽しみください。 未満少女✿ 「結珠、見て見て」  四月の初め、体力測定の授業でのことだった。グラウンドの隅っこにしゃがんで他の人た

ピアニスト・藤田真央#13「ルツェルン音楽祭――シャイーと奏でた”歌うフォルテッシモ"」

毎月語り下ろしでお届け! 連載「指先から旅をする」 ★今後の更新予定★ #14   11月5日(土)18時 #15   11月25日(金) →11月末公開予定  ヴェルビエ音楽祭を終えたわたしを待っていたのは、毎年8〜9月にスイスで行われるルツェルン音楽祭です。  1938年から続くルツェルン音楽祭は、ザルツブルク音楽祭と双璧を成すヨーロッパ随一の格式と伝統を誇ります。出演者が錚々たるメンバーなのはもちろんのこと、批評家や有識者が世界中から集まるので、オーディエンスの厳

辻村深月|父と娘という新たな光を得て、彼女たち「娘」の作品や言葉が再び広く知られていくことを願う――梯久美子『この父ありて 娘たちの歳月』に寄せて

***  本書に登場する「娘」の一人である詩人・石垣りんのこんな文章が、彼女の章の冒頭で紹介される。  独身で、父、義母、二人の弟と同居する家で唯一の働き手となり、椎間板ヘルニアの大きな病気をきっかけにようやく休養が取れたという彼女が、手術前夜を書いた〈その夜〉の一節だ。  本書の著者、梯久美子はこの詩に出会ったときのことを、「しびれるように身にしみた」と書いている。そして、本書によってこの詩に出会った私もまた、時を経て深い感動を覚えた。その石垣りんは、自分の家について、

今村昌弘さん×織守きょうやさん「秋のミステリー祭」10/26(水)無料イベント開催!

『屍人荘の殺人』シリーズで大人気の今村昌弘さんと、『花束は毒』で第5回未来屋小説大賞を受賞するなど話題の織守きょうやさんによるリモート対談が決定!!  お二人はともに、「オール讀物」11月号のミステリー特集に新作が掲載されていて、当日はそんな新作にちなんだお話も! 開催概要 日時:10月26日(水) 20:00~21:00 参加費:無料(Zoomウェビナーにて開催) 参加方法:以下のリンクより事前登録の上、当日ご視聴ください。 ▼ 参加登録はこちらから  日頃から親交

透明ランナー|「岡山芸術交流2022」――歩いて回れる現代アートの都市型芸術祭

▼ 透明ランナーによるイベントはこちら ◎ 【11/30までアーカイブ動画公開中】 ローカル芸術祭・徹底ガイド|透明ランナー ◎ ドラフト2022 最速レビュー!by透明ランナー  国際的な現代アートの芸術祭「岡山芸術交流2022」が、岡山市内各所で11月27日(日)まで開催されています。2016年に第1回、2019年に第2回が行われ、今年で3回目となります。13か国から28組のアーティストが参加しています。  岡山芸術交流は歩いて回りやすい都市型の芸術祭であるのが特徴

【10/20(木)19:00~】ドラフト2022 最速レビュー!by透明ランナー

 2022年10月20日(木)。今年もいよいよ運命の日――プロ野球ドラフト会議を迎えます。事前に1位指名を公言する球団も多く、例年以上の情報戦になることが予想される今回のドラフト。  その興奮をみなさんと分かち合い、いち早くレビューをお届けするオンラインイベントを開催いたします。  解説を務めるのは、西武ライオンズと六大学野球をこよなく愛し、かつて圧倒的なデータ分析力で名をあげた伝説のツイッタラー「透明ランナー」。  WEB別冊文藝春秋ではアート&シネマレビューを連載中の彼

ドラフト間近! 六大学野球・注目指名候補完全ガイド|透明ランナー

10/20(木)19時~ 透明ランナー氏によるオンラインイベント 「ドラフト会議2022 最速レビュー」を行います!  こんにちは。あなたの代わりに観てくる透明ランナーです。  WEB別冊文藝春秋で「透明ランナーのアート&シネマレビュー」という連載を始めて半年ほどになりますが、私の趣味は美術・映画鑑賞だけではありません。地図、雑誌、旅行、将棋、アイス……など、まだ他にもいろいろありますが、最も長く続けているのは野球観戦です。日本プロ野球、メジャーリーグ、独立リーグ、高校野

高田大介『エディシオン・クリティーク』#003 第1話完結!

文献学者・嵯峨野修理のもとを訪れた元妻の真理。 彼女が修理に見せたのは、襖の下張りに使われていた近世の書きつけ。 ディレッタントはここに、長年秘匿されてきたある謎を発見しーー 五、説話猿橋伝承の解題のこと  後日、私は再び嵯峨野邸を訪っていた。  先日は、激昂する私を妙さんがなんとかホット・ワインで宥めて落ち着かせ、杯をすでに過ごしていた私はなんだか疲れ切って居心地のよい客間に寝かされることになった。客間というか元私の部屋である。事実上は現私の部屋でもある。入り浸っている

「ソ連」という国があった|白石直人

 冷戦時代のソ連は、アメリカと並び立つ超大国とみなされていた。ソ連崩壊後のロシアでも、ロシアの人々の意識の中においては「大国ソ連」のイメージは未だに無視しがたい影響力がある。ソ連が崩壊して30年以上経ち、ソ連はもはや過去となってしまった面もあるが、未だに長い影を落としている。 前回の記事でも予告した通り、今回はかつて存在した大国ソ連の歴史を、本を通じて眺めていこう。 ◆ソ連が存在した時代  ソ連の通史を書いた本は色々あるが、松戸清裕・著『ソ連史』(筑摩書房)はその中でもコ