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2022年3月の記事一覧

米澤穂信×有栖川有栖ライブトーク「わたしのミステリー地図」

※アーカイブ動画の公開は終了しました。 ご視聴くださったみなさま、ありがとうございました。 ***  ミステリーを1冊読めば、それが道となり、山となる。次第に「わたしだけのミステリー地図」が誕生する――  有栖川有栖さんがそうおっしゃるのを聞いて、ぜひともそれを開陳してください! とお願いしました。  そして有栖川さんがいま一番その「地図」を見たいのが、米澤穂信さんだといいます。米澤さんは『氷菓』から始まる古典部シリーズから、最新作『黒牢城』まで、実に広範囲にわたってミス

【3月30日・初アルバム『DIVA YOU』リリース!】自らを"DIVA"と名乗るゆっきゅんって何者?

「もっと面白い人に会いたい」がきっかけだった――2014年、上京と同時にアイドル活動を始められたとお聞きしました。  私は地方出身なので、もっと好きな映画やミュージシャン、「DIVA」に直接触れたいという気持ちで上京したんですね。そもそも東京に来たら、アーティストに限らず、すごく面白い人がいて打ちのめされる、自分じゃ駄目だと思い知らされるだろう、と思っていたんです。でも少なくとも、大学はそういう場所じゃなかった。もっと面白い人に会いたい、そのためには大学の外に出なくてはと思

Bar California 雨とマルガリータ/  西山健太郎

第二夜 マルガリータ    中洲川端駅で地下鉄を降り地上に出ると、菜種梅雨特有の、暖かさを感じる雨が路面を静かに叩いていた。  住まいのある西新から中洲の店まで、普段は運動を兼ねて自転車で30分ほどかけて通っているが、雨の日は地下鉄やタクシーを利用している。  中洲は雨が似合う町、というのが私の持論だ。  雨で濡れた路面にきらびやかなネオンサインが映り込み、中洲大通りやそこから枝分かれする細い路地に様々な色彩があふれ、この町の情緒をより煽る。  衣服や靴が濡れるのは気持ち

ピアニスト・藤田真央 #02「わたしに”合っている”モーツァルト」

毎月語り下ろしでお届け! 新連載「指先から旅をする」 ★毎月2回(5日・25日)配信します★  わたしが共演したイスラエル・フィルハーモニーは、昨年85周年を迎えた伝統ある楽団です。初代音楽顧問のウィリアム・スタインバーグから始まり、レナード・バーンスタインやズービン・メータといった、偉大なるマエストロたちとともに歴史を刻んできたオーケストラですので、ご一緒できたのはたいへん光栄でした。  欧米の一流オーケストラの音楽監督を歴任した大ベテラン、クリストフ・エッシェンバッ

高田大介〈異邦人の虫眼鏡〉 Vol.3「川縁の風景」

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イナダシュンスケ│僕は「その国の料理」が大好きなんです

第2回 食いしん坊のルーペは世界を覗く     食べることが好きです。  人間誰しも食べることは好きかもしれませんが、その中でも自分はいささか常軌を逸しているという自覚もあります。  なぜこんなことになってしまったのか。  いやそこには別段反省も悔恨も無く、何ならむしろ誇らしさのようなものすら感じているのですが、同時に「なぜ自分はそうなるに至ったのか」という単純な自問も常にあるというわけです。  それはおそらく「グルメ」というものとも違います。グルメというのは食べ物に対する

ピアニスト・藤田真央の想い #01「この音にすべてを捧げたい――エルサレムの奇跡のコンサート」

毎月語り下ろしでお届け! 新連載「指先から旅をする」  各国のマエストロから愛され、世界の聴衆を熱狂させる若き天才ピアニスト・藤田真央さん。  2019年、弱冠20歳にして、3大コンクールのひとつ、チャイコフスキー国際コンクールで第2位に入賞。以降、そのイノセントで自由な音色と、独自の楽曲解釈で、クラシック音楽シーンを更新しつづけています。  今年も、国内外で数多くのコンサートが予定されており、世界中を飛び回る日々を送る藤田さん。  新連載「指先から旅をする」は、そんな藤田

第二信「デフォーの暗号」(文・池内さん)

ご無沙汰しております。池内です。  少し遅くなりましたが、バレンタインの贈り物です。  チョコレートの代わりに、今回は『ロビンソン・クルーソー』が孕む謎についてお話ししたいと思います。甘くはありませんが、嚙んでも減らないタイプの嗜好品です。  ご賞味頂ければ幸いです。 ○  物語の冒頭、ロビンソンは自身の生い立ちについて語ります。  イングランド北東部の裕福な中産階級の家庭に育ったこと、父はドイツ生まれの商人であったこと。そして、母の出自と「ロビンソン・クルーソ

二宮敦人 #002「サマーレスキュー ポリゴンを駆け抜けろ!」

小学生のころは大好きだったゲーム「ランドクラフト」。 中学生になったのだから、もうゲームなんて子供っぽいものはしたくない。 そう思っていたはずなのに……。  ランドクラフトの面白さの一つは、その世界を好きなように作り替えられるところにあった。  たとえば、穴を掘れる。地面をぐりぐりと押し込むと、ポンと土が消える。押しっぱなしにすれば、ポンポンとリズムよく掘っていける。隕石が衝突したような大穴だって作れるし、細く深く、マグマが噴き出るような地下まで貫くこともできる。根気よく削

波木銅、初のルポルタージュ!「人生は夜間飛行」第1回

○ 第1回 精神のゲーム、ボウリング 波木銅  アプローチに立つ。助走をつけ、手からボールを放す。それは上手い具合に真っ直ぐレーンを転がり、ピンにぶつかったように見える。しかし、回転かスピードか、なにかが足りなかった。三角形を構築する十本のピンのうち、最奥の左右二本が残る。スコア表にはマルのついた「⑧」と記録される。  スプリットだ。このピンの残り方は、ボウリング用語で「セブン・テン」や「スネークアイ」、日本語では横にふたつ並んだ見た目から「門松」とも呼ばれる。ここからス