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2022年2月の記事一覧

二宮敦人 #001「サマーレスキュー ポリゴンを駆け抜けろ!」

幼馴染が、オンラインゲームにログインしたまま行方不明に。 よりによってそこは、犯罪の温床たるアナーキーワールド。 友人を助けるため、少女たちのひと夏の冒険が始まる! 第一章 「千香ーっ。巧己君、来たよーっ」  玄関からお母さんの声。千香は雑誌の山を抱え上げながら、声を張り上げる。 「ちょっと、あと五分でいいから、時間稼いで!」 「何言ってんだか、あの子は中学二年生にもなって。ごめんなさいね、朝から部屋の掃除してるらしくって……」  ああもう、余計なことは言わなくていいのに。

二宮敦人・新連載「はじまりのことば」

 コンピューターゲームが僕の趣味の一つになったのは、小学校六年生の終わり頃だったと思います。中学受験が一段落したご褒美に、ゲームボーイポケットという携帯ゲーム機と、「ポケットモンスター 緑」というソフトを買って貰ったのです。  その前からうちにはゲーム機がありましたが、もっぱら父の玩具であり、子供が自由に使えるものではありませんでした。たまに遊ばせて貰っても、「マリオカート」や「ボンバーマン」でバトルするくらい。目に悪いから三十分以上はダメだ、と言われていました。のめり込ん

《初対談》島本理生×村田沙耶香「自分の傷が癒されていく…」なぜこうも惹かれるのか?

◆20年の月日が変えたもの ——本日は「創作と変化」というテーマでお話を進めます。その前におうかがいしますが、お二人はこれまでにも交流があるそうですね。 島本 年度は違いますが、もともと村田さんと私は同じ群像新人文学賞の受賞者で、しかも二人とも優秀作だったので、出身がまったく一緒なんです。私、村田さんが受賞された時に会場に行っているんです。 村田 自分が23歳で受賞した時、選考委員の方々以外の方で初めてお会いしたプロの作家さんが島本理生さんでした。その前から作品を読んでい

文・宇山圭佑「羞恥心の向こうに」

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今村翔吾「海を破る者」 #020

新直木賞作家の最新作、いよいよクライマックスへ 激戦の志賀島戦を経て、 元軍を壱岐にまで撤退させることに成功した河野家。 しかし河野家への幕府の処遇は冷酷なものだった――  弘安五年(一二八二年)、春。  相模国片瀬に、地鳴りの如き念仏の大合唱が響いている。念仏の調子を導く鉦鼓も鳴っている。その甲高い音は、人の声にはなかなか紛れないのだが、今日ばかりは霞んで聞こえた。唱える念仏に狂いなどない。どの者の口も、ぴたりと同じ動きをしていた。  人々は往来に見渡す限り溢れ、絶え間

文・児玉雨子「キャッチー・コンプレックス」

 アイドルをはじめJ-POPの作詞発注やコンペ募集メールには、必ずといっても過言ではないほど「キャッチー」という文字が並んでいる。「キャッチー」とは何か。種々あるが、まず複雑ではないもの、そしてリスナーがすぐに把捉できるものが、その前提とされているだろう。  音楽だけではなく、「キャッチー」はわたしたちのアイデンティティをも侵略してしまった。「〇〇系アイドル」といったような粗悪なコピーは言うに及ばないが、性的マイノリティをあらわす「LGBTQIAPK」や、人種的ルーツを表現

Bar California 今夜のレシピ《アンゴスチュラビターズ》 /西山健太郎

第一夜 ピンクジン    カナディアン、バーボン、アイリッシュ、スコッチ、ジャパニーズ、コニャック、スピリッツ、リキュール……。  バックバーに並ぶボトルを左から順に一本ずつ拭き上げ、それが終わると、プレイヤーのCDをイーグルスからオスカー・ピーターソンへと差し替える。  午後8時ちょうどに入口脇の看板を照らすライトを灯し、シンクの脇に置いた木製の折りたたみ椅子に腰を掛け、本を開いて客の訪れを待つ。  ここで手に取る本のジャンルにこだわりはない。とかく活字を目で追うことで、

最強の恋愛小説…!『きみだからさびしい』(大前粟生)第一部を全文公開

 最強で最高の恋愛小説ができました!  大前粟生さんの最新刊『きみだからさびしい』が、2月21日(月)にいよいよ発売になります。  『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』や『おもろい以外いらんねん』など、まさにいま最も旬な著者のひとりである大前さん。初長篇の本作は、コロナ禍の京都を舞台にした、純度100%の恋愛小説です。  物語の主人公は、京都市内の観光ホテルで働く町枝圭吾、24歳。 「男性である自分は相手を傷つけてしまうのではないか」と、恋愛をすることに怯えていた圭吾は

武田綾乃・最新作!『世界が青くなったら』プロローグをご紹介

 3月7日(月)に発売される、武田綾乃さんの待望の最新作、『世界が青くなったら』。  先日は六七質さんが手掛けられた、美しいカバーイラストをご紹介いたしました。 『別冊文藝春秋』で本作の連載がはじまる際、武田さんはこんな意気込みを綴ってくださいました。  武田さんがいう大きな「脱線」とは……? そう、『世界が青くなったら』は、規格外の恋愛小説なのです。まずは本作の「プロローグ」で、その意味をご確認ください。 プロローグ  昨日の夜、上手に塗れたマニキュアを可愛いねって褒

最強の食いしん坊、イナダシュンスケさんが惚れ込む〈背徳の味〉とは…

第1回 背徳のアレンテージョ 「背徳のアレンテージョ」  思わず声に出して読んでしまいました。  何でしょう、このゾワゾワする語感。およそ食エッセイのタイトルらしからぬ妖しさがあります。  むしろかっこいいアニメ、もしくはそのテーマソングのタイトル。前のめりなリズムのシンコペーションと大袈裟なストリングスアレンジが今にも聴こえてきそうです。あるいは剣と魔法のファンタジー物に登場する、魅力的でニヒルな悪役の二つ名。あるいは赤と黒の妖艶なドレスに身を包んだ夜の踊り子。手にはカス

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大阪「咲くやこの花賞」受賞…! 呉勝浩さん『おれたちの歌をうたえ』序章&1章公開します

 呉勝浩さんがこのたび、令和3年度「咲くやこの花賞」を受賞されました! 昨年は『おれたちの歌をうたえ』で第165回直木賞にノミネート、年末には「週刊文春ミステリーベスト10」にもランクイン!!  この機会にもう一度『おれたちの歌をうたえ』を味わっていただけたら… ということで、序章と第1章を公開いたします。 これまでの反響   年末には、書評家・若林踏氏が「リアルサウンド認定2021年度国内ミステリーべスト10」で「今年の1番!」と推してくださったり  書店員のみなさまか

大迫傑に感じたロマンから生まれた、ノンストップ・サスペンス『アキレウスの背中』――長浦京インタビュー

たった1度の五輪のために  今作の主人公の一人である日本人マラソンランナーが走るのは、東京ワールド・チャンピオンズ・クラシック・レース(東京WCCR)。日本政府が初めて公認した、世界規模の公営ギャンブル対象のマラソンレースだ。   世界ランキング上位の招待選手らが、賞金総額300万ドル(3億4000万円)をかけて戦う。競馬や競輪と同じように、どの選手が1位、2位、3位に入るかを予想し、的中すると賞金が支払われる、というものだ。   「コロナ禍の東京オリンピックを見ていて、ア

【初公開】武田綾乃『世界が青くなったら』―― 六七質さんが描く「青の世界」

 大人気シリーズ「響け!ユーフォニアム」や、吉川英治文学新人賞を受賞した『愛されなくても別に』など、次々と話題作を発表している武田綾乃さん。  そんな武田綾乃さんが、初めて挑んだ ハラハラドキドキのファンタジー青春恋愛小説『世界が青くなったら』が、2022年3月7日(月)に発売になります。    もし朝起きたとき、大事な人が消えていたら?  そんな if に直面するのは、大学生の仲内佳奈。  ある朝、佳奈が目を覚ますと、彼氏の坂橋亮が世界から消えていた……。LINEに履歴