小田雅久仁 「夢魔と少女」〈中篇〉
九 その後も母屋の探索を続け、わずかではあるが新たな情報を得た。居間のサイドボードの上に並べられていた写真からわかったことだが、男はどうやら一人息子だったようだ。四枚の家族写真のうち、いちばん古いものは、男がまだ一歳か二歳のころで、自分の顔ほどもある大きなハンバーガーを手に満ち足りた頰笑みを浮かべている。どんな悪党でも無垢の煌めきを放つ瞬間はあったのだ、という事実を示す貴重な一枚なのかもしれない。
男は両親がかなり歳がいってからできた子供のようで、一人息子が生まれたとき、母